往診専門動物病院わんにゃん保健室の江本です。
本日は、腎臓腫瘍を抱えた小型犬のお話です。
少しだけ、腎臓腫瘍の症例と出会うときの入り口の話をさせてください。
そもそも腎臓腫瘍は、犬の腫瘍の中では1.7%、猫の腫瘍の中では2.5%と言われており、そこまで多い病気ではないため、検査を積極的に行わない動物病院をかかりつけとしている場合には、軽度から中等度の腎臓病とされ、腎臓病の治療を行なわれている可能性も大いにあり得ます。
なぜかというと、腎臓腫瘍の症状には特異的なものがなく、血尿や体重減少などの別の鑑別診断がたくさんありそうな症状を呈していることがほとんどだからです。
しかし、画像検査、特にエコー(超音波)検査やX線検査などを行えば、画像所見として、腎臓の違和感を検知することができます。
腎臓腫瘍では、第一選択が外科手術ですが、発見した頃にはすでに体力的に麻酔や手術に耐えれないということが多々あります。
腎臓腫瘍は腫瘍であることもあり、高齢になればなるほど発症しやすくなりますが、犬で9歳くらい、猫で10歳くらいと言われています。
年齢的にも、慢性疾患である腎臓病(腎不全)を発症しやすい頃ですので、通常の腎臓病だと思い込み、定期検診の血液検査結果で尿素窒素やクレアチニンといった腎臓の数値が安定していたのに、突然痙攣発作が起き、亡くなるということが起こるかもしれません。
犬も猫も人と同じように、高齢期に差し掛かったのであれば、高い頻度での定期検診と画像検査を含めた包括的な検査を心がけましょう。
前置きが長くなりましたが、今回は通常の腎臓病の治療経過の中で、もうぐったりしてしまったことから家で看取る覚悟をして、当院まで在宅緩和ケアの相談をいただいた犬の話です。
チワワ×ポメラニアン、16歳
初診時はすでに弱り切っていましたが、こちらのわんちゃんは、とても繊細なタイプの性格で、診察で歯が出てしまうことから、迷惑をかけちゃまずいと考え、なかなか動物病院に近づけずにいたとのことでした。
最初に訪れた動物病院の対応だったのかもしれませんが、歯が出てしまうタイプの犬猫でも、ある程度であれば対応することができます。
事前に安定剤を服用してもらうなど、状態に応じて獣医師が提案してくれると思いますので、もし動物病院に通院するとすごく攻撃性が高くなってしまうなどで通院を断念されている場合には、獣医師に相談してみましょう。
今までの経緯として、5年ほど前に、普段なら数日で回復するはずなのに1週間近く体調が悪そうにしていたことを機に、満を持して動物病院に駆け込んだところ、画像検査は実施してもらえず、血液検査で軽度の腎臓病と言われたとのことでした。
そのため、ずっと腎臓病だと思い、腎臓病の療法食をひたすら与え続けていたとのことでした。
おそらくこの時点では、画像検査をしても、腎臓腫瘍は検出されなかったと思いますし、軽度の腎臓病が疑われたのであれば、腎臓系の療法食に切り替えてあげて正解だったと考えます。
2024年8月に咳が酷かったことを主訴に、頑張って動物病院に通院させてみたところ、腎臓と肝臓が悪いと言われた、在宅での皮下点滴を指示され、この日は動物病院で皮下点滴をして帰ってきたところ、全身が震えてしまうような痙攣をしてしまったとのことでした。
翌日からは在宅での皮下点滴実施を支持されましたが、通常の量よりもかなり少ない量を複数回に渡って投与するように指示が出されており、何度も針刺しを行うことや、動物病院でプロである獣医師による皮下点滴で具合が悪くなってしまったこともあって、在宅での皮下点滴はかなり消極的になっていたようでした。
医薬品は用いていないとのことから、この痙攣の原因は不明なままでしたが、おそらくストレス性と考え、皮下点滴のやり方や準備の仕方など、一連の動作を再度確認させていただき、ストレスがかかりづらい方法をレクチャーさせていただき、様子を見ることとしました。
その結果、そのような全身の身震いはなかったことから、ストレスの蓄積が全ての原因だった可能性をお伝えし、安心して在宅での皮下点滴に挑戦していただきました。
ただ、この日行った超音波検査(エコー検査)で、腎臓に腫瘍病変が検出され、腎臓や肝臓の数値が悪くなってしまった原因は、腎臓腫瘍である可能性をお伝えしました。
すでに尿素窒素やクレアチニン、リンと言われる腎パネルは、すでに上限値を超えており、今日明日の可能性が高い状態であることが、初日の検査にてわかりました。
鎮痛、鎮静など準備を進めていきます。
腫瘍症例では、その発生箇所によって痛みを伴う可能性が高い場所やそうでもない場所などが、ある程度予想できます。
この後、高頻度で痙攣発作が誘発される可能性があることを理解していただき、その時に備えて環境やマインドの準備を進め、いざという時に向き合えるように一緒に学んでいただきました。
高齢期や病末期における緩和ケア中の発作に対する考え方は、通常の特発性てんかんなどの犬猫に対する頓服対策と似て非なるものかもしれません。
ただ、医薬品を含めた環境準備、そしてマインドを強く持つことが、ペットの緩和ケアや終末期ケアと言われるターミナルケアでは最も大切になります。
その4日後、このわんちゃんは眠りにつきました。
ポン助ちゃんと最後に出会えたことに、心から感謝しています。
ご冥福を、心からお祈り申し上げます。
ご自宅での在宅緩和ケアを検討中のご家族様
東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院が訪問することが可能ですので、まずはお電話ないし問い合わせフォームから、今のご状況を教えてください。
ぐったりしてしまう前に、事前にご状況を把握させていただき、いざという日に備えた環境整備などから、一緒にやっていきましょう。
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