高齢や病気によって通院が難しくなったペットにとって、在宅緩和ケアは大切な選択肢のひとつです。自宅での診療を通じて、ペットができるだけ苦しまずに穏やかに過ごせるようにサポートします。
わんにゃん保健室では、ご家族の不安に寄り添いながら、診療・投薬指導・在宅酸素の導入・定期フォローアップまで、一貫した緩和ケアを提供しています。
この記事では、当院の在宅緩和ケアの流れを詳しくご紹介します。ペットの最期の時間を後悔のないものにするために、ぜひご一読ください。
▼この記事の内容
- 在宅緩和ケアとは?自宅での安心した医療を提供
- 初診:じっくり時間をかけた問診とカウンセリング
- 診察の流れと検査の実施
- 具体的な在宅緩和ケアプランの策定
- 内服薬・皮下点滴などの投薬指導
- 生活環境に合わせた在宅酸素の運用指導
- 継続的なフォローアップとケアの見直し
- わんにゃん保健室の在宅緩和ケアの特徴と対応エリア
1. 在宅緩和ケアとは?自宅での安心した医療を提供
在宅緩和ケアの目的
在宅緩和ケアは、病気や加齢によって通院が難しくなったペットが、ご家族と一緒に自宅で穏やかに過ごせるようにサポートする医療ケアです。
緩和ケアの目的は、「治すこと」ではなく、「苦痛を軽減し、穏やかな時間を過ごす」ことにあります。
- 痛みや呼吸困難の緩和
- 食欲低下時のサポート
- 生活環境の調整とご家族の負担軽減
通院が難しいペットとご家族の負担軽減
高齢や病気の進行により、ペットがキャリーに入るのを嫌がる、移動の負担が大きいといった理由から、通院が難しくなることがあります。また、大型犬の場合は、歩けなくなると通院自体が物理的に困難になります。
往診による在宅緩和ケアでは、自宅で診療を受けられるため、ペットのストレスを大幅に軽減でき、ご家族も移動の負担を減らすことができます。
こんなペット・ご家族におすすめ
- ペットが高齢で通院の負担が大きい
- 病気の進行により、動物病院までの移動が困難
- ペットが通院を極端に嫌がる(キャリーを見ただけでパニックになる)
- 最期の時間をできるだけ穏やかに過ごさせたい
在宅緩和ケアを選択することで、ペットのストレスを最小限に抑えながら、ご家族がそばで見守ることが可能になります。
2. じっくり時間をかけた初回カウンセリング
初診は約2時間:ペットとご家族の状況を深く理解する
在宅緩和ケアを始める際、最も重要なのが初診の問診とカウンセリングです。ペットの病状だけでなく、ご家族の意向や生活環境も考慮しながら、最適な緩和ケアのプランを作成します。
当院では、初診時に約2時間をかけて以下のような内容を詳しく伺います。
- ペットの病歴・現在の症状・服用中の薬
- 食欲や排泄の状態、普段の生活リズム
- ご家族のケアに対する考え方(どこまで治療をするか)
- ペットが快適に過ごせる環境の確認
ご家族の気持ちに寄り添った方針の模索
緩和ケアでは、ペットのためだけでなく、ご家族の負担を減らすことも重要です。そのため、以下のような点も考慮しながら、無理のないケアプランを模索します。
- ご家族がケアに割ける時間(仕事や家庭の事情)
- どこまで治療を続けるか、在宅でどのように見守るか
- 「最後まで自宅で看取りたい」「少しでも長く一緒にいたい」などの希望
「何が正解かわからない」「どうしてあげるのが一番いいのか迷う」と感じる方も多いため、獣医師と一緒に考えながら、最適な方針を決めていくことを大切にしています。
診療後に行う方針の決定
初診後には、問診と診察結果をもとに、以下のような方針を決めていきます。
- 緩和ケアを進める上での具体的なケアプラン
- 内服薬や皮下点滴の導入有無
- 必要に応じた酸素管理の計画
- ご家族ができる在宅ケアの指導
初診時にしっかりと方針を決めておくことで、今後のケアをスムーズに進めることができます。
3. 診察の流れと検査の実施
診察は基本的に獣医師1名で実施
在宅緩和ケアの診察は、ペットのストレスを最小限に抑えるため、基本的に獣医師1名で訪問し、穏やかな環境で行います。
診察では、ペットの状態を総合的に確認し、ご家族が普段気になっている症状についても詳しく伺います。
必要な検査の実施と動物看護師の同行
病状の変化を正確に把握するために、検査が必要な場合は動物看護師1~2名が同行し、以下のような検査を行います。
- 血液検査:腎機能・肝機能・貧血の状態を確認
- 超音波検査:胸水や腹水の有無、腫瘍の状態を確認
- レントゲン検査:呼吸器や心臓の状態を把握(ご自宅では不可)
ご家族と結果を共有し、今後の方針を決定
検査結果はその場でご家族と共有し、今後のケア方針を相談しながら決定します。
- 検査結果に応じた内服薬や皮下点滴の調整
- 病状の進行に合わせた酸素管理の必要性
- ご家族ができる在宅ケアの範囲
診察と検査を通じて、ペットの状態を正確に把握し、ご家族と一緒に最適なケアプランを立てていきます。
4. 具体的な在宅緩和ケアプランの策定
ペットの状態に応じた個別ケアプラン
診察と検査の結果をもとに、ペットの状態やご家族の希望に合わせた個別の在宅緩和ケアプランを作成します。
緩和ケアは「全ての症状に対処する」のではなく、ペットの負担を最小限にしながら快適に過ごせる方法を選択することが大切です。
緩和ケアプランの主な内容
- 内服薬・皮下点滴の投与計画:投薬が難しい場合の代替方法も考慮
- 呼吸管理:酸素発生装置の導入や使用方法の指導
- 食事管理:食欲低下時の補助方法や好みに合わせた食事調整
- 疼痛管理:痛みがある場合の鎮痛薬の使用
- 生活環境の調整:移動しやすいスペース作りや寝床の整備
ご家族が無理なく続けられるプランを
緩和ケアは、ご家族が毎日行うケアでもあるため、無理のない範囲で続けられることが重要です。
- 仕事や家事の合間でもできるケア方法の提案
- ご家族の負担が少ないシンプルな投薬・点滴スケジュール
- ペットの性格に合わせたストレスの少ない方法を優先
「何を優先すべきか」「何を諦めるべきか」も一緒に考えながら、最適なケアプランを決めていきます。
5. 内服薬・皮下点滴などの投薬指導
ご家族が無理なくできる投薬方法を提案
緩和ケアでは、投薬が負担になりすぎないことが大切です。ペットの性格やご家族の状況に合わせ、ストレスの少ない方法を提案します。
「内服薬が飲めない=治療ができない」わけではありません。飲めない場合には、皮下点滴や注射薬への切り替えを検討します。
内服薬の工夫とサポート
- 投薬補助おやつ:おやつの中に薬を包み、自然に食べてもらう
- ウェットフードに混ぜる:香りが強いフードで薬を包み込む
- カプセルに入れて負担を減らす:苦味がある薬はカプセルで飲ませる
投薬に慣れていないご家族には、実際にやり方を見せながら指導し、スムーズにできるようサポートします。
皮下点滴の導入とトレーニング
腎不全や脱水症状がある場合、皮下点滴が在宅ケアの重要なポイントになります。ご家族が安心して実施できるよう、以下の点を重点的に指導します。
- 適切な針のサイズと点滴量の確認
- 皮下に適切に点滴液を注入する方法
- ペットがリラックスできる体勢と環境作り
無理なく続けられる投薬計画
「毎日投薬しなければならない」と思うと、ご家族にとって大きな負担になります。そのため、無理なく続けられるスケジュールを提案します。
- 飲ませる回数を最小限にする(1日1回にまとめるなど)
- どうしても飲めない薬は皮下点滴や注射薬に切り替え
- 投薬がストレスにならないよう、成功率の高い方法を選ぶ
ご家族が安心して投薬や点滴ができるよう、実践的なアドバイスを行いながらサポートします。
6. 生活環境に合わせた在宅酸素の運用指導
呼吸状態が悪化したときのための酸素管理
心疾患や腫瘍、腎不全の進行により、呼吸が苦しくなることがあります。このような場合、在宅での酸素療法が重要になります。
特に以下のような症状が見られた場合は、早めの酸素環境の整備を推奨します。
- 呼吸が速く、浅い(頻呼吸)
- お腹を使った呼吸(努力呼吸)
- 伏せの姿勢で首を伸ばし、口を開けて呼吸する
在宅での酸素供給の方法
在宅で酸素を供給する方法には、酸素発生装置と酸素ボンベの2種類があります。
- 酸素発生装置:長時間の使用が可能で、自宅での管理に適している
- 酸素ボンベ:緊急時に高濃度の酸素を即座に供給できる
酸素ハウスの活用と環境調整
小型犬や猫の場合、酸素ハウス(簡易的な酸素室)を設置することで、呼吸状態の安定を図ることができます。
- ペットが出入りできるようにして、ストレスを最小限に
- 室内の酸素濃度を適切に管理する(測定器の使用)
- 酸素の供給量を状態に応じて調整する
大型犬の場合は酸素ハウスの設置が難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法を採用します。
ご家族ができる酸素療法の工夫
酸素管理を在宅で行うためには、ご家族の協力が不可欠です。以下のような工夫で、より効果的な酸素供給が可能になります。
- 酸素発生装置の設置場所をペットの好きな場所に調整
- 酸素を嫌がる場合は、徐々に慣れさせる
- ペットがリラックスできる環境を作り、呼吸を落ち着かせる
在宅での酸素療法は、ご家族の理解と協力が不可欠です。事前に準備し、適切なタイミングで導入することで、ペットの呼吸状態を安定させることができます。
7. 定期フォローアップとご家族へのサポート
定期的な訪問診療でペットの状態を把握
在宅緩和ケアでは、定期的なフォローアップが重要です。ペットの状態に合わせて、診察やケアプランの見直しを行います。
訪問診療の頻度は以下を目安に調整します。
- 安定している場合:1〜3ヶ月に1回程度の訪問診療
- 症状が進行している場合:2週間~1週間に1回
- 終末期の管理:必要に応じた頻回のフォローアップ
ご家族が不安にならないためのサポート
緩和ケアでは、ペットだけでなくご家族のサポートも大切です。ご家族が「何をすればいいかわからない」とならないよう、以下の対応を行います。
- ペットの状態が悪化したときの対応方法を事前に説明
- 食欲低下や呼吸の変化など、注意すべきポイントを共有
- 内服薬・点滴の管理に関する相談受付
緊急時の対応と判断のポイント
「急に元気がなくなった」「食欲が落ちた」「呼吸が苦しそう」など、緊急時の対応が必要な場面では、すぐにご相談いただける体制を整えています。
ただし、緩和ケアを行う上で、救急対応が難しいケースもあります。そのため、以下のようなポイントを事前にお伝えし、ご家族に判断していただくこともあります。
- 動物病院に連れて行くべきか、在宅で見守るべきか
- 症状が出たときの具体的な対応手順
- どのような状態が「危険な兆候」なのかを理解しておく
ご家族が不安なく対応できるよう、事前にしっかりと準備を整え、サポートしていきます。
8. わんにゃん保健室の在宅緩和ケアとは
在宅緩和ケア専門の動物病院として
「わんにゃん保健室」は、ペットの在宅緩和ケアを専門とする往診専門の動物病院です。通院が難しくなったペットとご家族のために、ご自宅での診療を提供しています。
当院では、病気の治療だけでなく、ペットとご家族が穏やかに過ごせることを最優先に考え、以下のような診療を行っています。
- 緩和ケアの方針決定とカウンセリング
- ご自宅での診察・検査・処置
- 内服薬や皮下点滴などの投薬指導
- 在宅での酸素管理サポート
- 終末期のケアと看取りのサポート
東京23区を中心に訪問診療を実施
わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診を行っています。ご自宅での診療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
「病院に連れて行くのが難しくなった」「ペットが通院を嫌がるようになった」と感じたら、一度往診を検討してみてください。
ご相談・お問い合わせ
ペットの在宅緩和ケアについてのご相談は、当院の公式サイトまたはお電話にて受け付けています。
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