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犬の肺水腫の在宅緩和ケア

肺水腫とは?

肺水腫は、心臓の機能が低下することで肺に水が溜まり、呼吸が苦しくなる状態です。特に小型犬の高齢期に多くみられる僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、肺水腫を引き起こすことがあります。

今回ご紹介するのは、13歳の小型犬モコちゃんのケースです。モコちゃんは2ヶ月前に僧帽弁閉鎖不全症と診断され、内服薬で経過観察を続けていました。しかし、ある日突然呼吸が荒くなり、肺水腫が疑われる状態に。動物病院で緊急処置を受けましたが、ご家族は入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。

本記事では、モコちゃんの在宅緩和ケアの流れを通じて、肺水腫の管理やケアのポイントについて詳しく解説します。

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目次

モコちゃんのケース:肺水腫発症から在宅緩和ケアへ

在宅緩和ケアの開始:呼吸を楽にするための対策

現在の経過と今後の展望

まとめ:肺水腫の犬を在宅で支えるために

 

 

肺水腫発症から在宅緩和ケアへ

診断から2ヶ月間の経過

モコちゃんは13歳の小型犬で、2ヶ月前にかかりつけの動物病院で僧帽弁閉鎖不全症と診断されました。当初は内服薬で経過観察を続けていましたが、3日ほど前に呼吸がゼコゼコしているのに気づいたとのことでした。元気食欲などの一般状態には大きく変化はなく、たまたま定期検診だった日の前日の夜から体調が悪そうで、検査日当日は食欲廃絶の状態だったとのことでした。

 

呼吸状態の急変と肺水腫の診断

定期検診の当日、ご家族がモコちゃんの呼吸が異常に荒く、苦しそうにしていることに気づき、動物病院で詳しい検査をお願いしたところ、超音波検査を実施しようとした時に急変し、呼吸状態が一気に増悪したとのことでした。すぐに利尿剤などを用いた緊急処置を受けましたが、ご家族は入院でお別れしてしまうリスクを考慮し、ご自宅に連れて帰り、最後の時間を在宅緩和ケアで過ごさせたいと希望されました。

 

在宅緩和ケアの選択

動物病院では、急性肺水腫を疑う場合には、緊急処置と徹底した入院管理を行うことが常ですが、その選択が正しかったかどうかは、結果を見てみなければ誰も断定できません。モコちゃんのご家族は「入院中に亡くなってしまうのではないか」という不安を抱えました。

結果として、最期の時間を家で過ごさせてあげたいという想いから、入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。

 

 

在宅緩和ケアの開始

酸素環境の構築

モコちゃんのご家族は、帰宅後すぐに酸素ハウスの導入を決定しました。肺水腫の犬にとって、酸素濃度を適切に維持することは、呼吸の負担を軽減するために非常に重要です。

当院では、以下のような方法で酸素環境の構築をサポートしました。

- 酸素発生装置をレンタルし、モコちゃんが落ち着いて過ごせるスペースを確保

- 酸素ハウス内の温度や湿度を適切に管理

- モコちゃんの呼吸状態に適した酸素濃度指示

 

皮下点滴と投薬プランの調整

肺水腫の犬では、内服薬を無理に飲ませることで誤嚥やストレスによる悪化が懸念されます。そのため、モコちゃんには以下の対応を実施しました。

- 一旦内服薬の全面中止と注射薬への変更

- 皮下点滴による投薬を導入し、必要な薬剤を投与

- 利尿剤を適切な用量で使用し利尿による呼吸状態改善を目指す

モコちゃんは、ご家族の優しい声掛けと適切な環境調整により、少しずつ落ち着きを取り戻しました。診療の最後には、寝返りや呼び掛けに応じるなどの行動を見せてくれました。

 

食欲管理と日常生活のケア

肺水腫の犬は、呼吸が苦しくなることで食欲が低下しがちです。モコちゃんの場合も、食事を口にする機会が減っていました。そのため、ご家族には以下のような工夫をお願いしました。

- モコちゃんが好む食材を与える

- 水分補給は自由にさせてあげる

このようなケアを通じ、モコちゃんが少しでも体調を安定させ、もしかしたら酸素室から離脱できるかもしれない期待をみつつ、僧帽弁閉鎖不全症からの肺水腫に対する在宅緩和ケアが始まりました。

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現在の経過と今後の展望

在宅緩和ケア開始時の状況

モコちゃんは、在宅緩和ケアを開始したばかりであり、まだ安定しているとは言えない状態です。呼吸は高濃度酸素下でかろうじて維持できており、皮下点滴による治療と酸素環境の調整を行いながら、少しずつ様子を見ていく段階です。

 

モコちゃんの今後の展望

現時点では、今後の経過がどのように進むかは分かりません。大きく分けると以下の2つのシナリオが考えられます。

 

回復に向かう場合

- まずは酸素室内での飲食ができるようになる

- 現在は酸素濃度を高めに設定しているため、徐々に濃度を下げても呼吸の乱れが起きないか確認

- 酸素濃度を30%台まで下げることができれば、酸素室からの離脱が視野に入る

- 呼吸の安定を最優先しながら、皮下点滴での投薬を継続し、状態が良くなれば内服薬へ移行

- 最終的に酸素室なしで日常生活を送れるようになり、内服薬でのコントロールが可能になるのが理想のゴール

 

病状が進行する場合

- 高濃度酸素下でも呼吸促迫が止まらない

- 食欲廃絶が続き、栄養補給が困難になる

- 利尿剤を投与しても排尿が認められない状態になる

 

今後の診療計画

今後の診療では、モコちゃんの呼吸状態、食欲、排尿の有無などをこまめにチェックしながら、適切なケアを続けていきます。回復に向かうか、それとも悪化していくかは、今後の経過次第です。引き続きご家族と連携を取りながら、可能な限り最善のサポートを行っていきます。

どちらの道を進むのか、または紆余曲折しながらどちらにも揺れ動くのか、慎重に見守りながらケアを続けます。

 

 

まとめ:肺水腫の犬を在宅で支えるために

在宅緩和ケアの選択とその意義

肺水腫を発症した犬にとって、在宅緩和ケアは、ご家族が最期まで寄り添いながら治療を行う選択肢の一つです。モコちゃんのように、入院ではなく自宅でのケアを希望するケースでは、適切な環境を整え、状態を見ながら慎重に対応することが求められます。

 

肺水腫の犬に必要なサポート

- 酸素環境の適切な管理:酸素室や酸素発生装置を活用し、呼吸の負担を軽減する

- 定期的な状態チェック:呼吸の変化、食欲、排尿の有無をこまめに確認する

- 適切な投薬プラン:内服薬の調整や皮下点滴による薬剤投与を行い、症状を管理する

家族の心構え:病状の進行に備え、最期まで穏やかに見守る準備をする

 

モコちゃんのこれから

モコちゃんは、まだ在宅緩和ケアを開始したばかりです。今後の経過次第で、回復に向かう可能性もあれば、症状が悪化することも考えられます。どのような道を辿るにせよ、ご家族がモコちゃんと過ごす時間を大切にしながら、最適なサポートができるよう努めていきます。

 

在宅緩和ケアのご相談について

肺水腫や心臓病を抱える犬の在宅緩和ケアについて、ご相談を希望される場合は、お気軽にご連絡ください。東京23区を中心に往診を行い、愛犬とご家族が安心して過ごせるようサポートいたします。

 

 

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