今回は、前回に引き続き、みゆちゃんのその後の経過についてです。
前回までの内容は、こちらの記事 から読んでいただけます^^
さて参りましょう。。。
猫ちゃんの腫瘍性疾患といえば、まず考えなければいけないのがリンパ腫です。
愛猫がリンパ腫を抱えた場合の主な流れは、大まかに以下の流れです。
1. 違和感に気づく or 健康診断で発覚
2. 動物病院にて腫瘍を疑う部位の細胞診
3. 細胞診で腫瘍を疑う結果だったため、麻酔をかけた外科処置が可能か判断するための精査(CTなど含む)
4. 腫瘍切除による病理検査
5. 確定診断と方針決定(腫瘍外科or/and 放射線 or/and 抗がん剤 or/and ・・・)
2までは負担が比較的少ないですが、3、4は麻酔が必要であり、また外科も実施となると、その身体的負担は膨大です。
そして、5から下、抗がん剤。
抗がん剤は、よく運転に例えられます。
通常の薬を普通車で一般道を走っているような表現とするのであれば、抗がん剤はF1レースのような印象です。
うまくいっているときはいいですが、トラブルがあった時の副反応は、通常の薬とは比べ物にならないくらい、ガクッと下がってきます。
そして、その対処に十分な対処ができるほどの抗がん剤に対する専門的な知識を持ち、副反応が出た際に理論的に向き合える獣医師がそこまで多くない、ということを知っておかなければいけません。
もし抗がん剤をしないならば、腫瘍外科は希望しないのであれば、3から下は必要ないと考えています。
積極的な治療よりも、緩和的にケアしてあげたいのか。
それとも2次医療センターなどに進み攻めていきたいのか。
そうは言っても、いきなり緩和ケアを選択するのは、少し薄情な印象もあるようで、初代の犬猫に対しては、攻める選択をされる方が多い印象です。
うまくいけばいいのですが、もし治療の過程で体力がもたないと判断されてから、また方針を切り替えて緩和ケアに切り替えることも可能です。
その時その時の、あなたの心を信じて突き進みましょう。
さて、長くなってしまいましたが、ここからは前回の続きです。
初診が終わり、初回処置に対してどこまで反応を示してくれたのかを評価する2日目からです。
再診2日目
嬉しいことが起きました。
ほぼ寝たきりだったみゆちゃんは、昨日の皮下点滴後1時間半くらいで元気になってきたとのことでした。
今日は家の中をふらつきが多少ありながらも、スタスタ軽快に歩いて見せてくれました。
ほとんどなくなってしまった食欲も、一気に上がってきて、64gも食べてくれたと、嬉しそうにお話してくれました。
もちろんこれは薬の効果かもしれませんが、みゆちゃんに残された生命力の強さを目の当たりにしました。
11月中か、もっても年内とされていたみゆちゃんでしたが、この改善幅を見る限り、もしかしたらまだ...って、その場にいた誰もが信じたくなりました。
このまま状態が上がってくれるかもしれないと判断し、同日ご家族様に皮下点滴指導をじっくりと入れさせていただき、今後はご家族様だけで皮下点滴が実施できるようになっていただきました。
再診3日目
昨日よりもさらに状態が上がり、今後のことを見据えて、血液検査と超音波検査を実施することとしました。
状態が改善したとはいえ、病気が病気なこともあるので、検査には十分な人数を揃え、酸素化しながら呼吸状態の悪化を防ぎつつ、保定していきました。
通常の猫ちゃんは、保定されるのがとにかく嫌いです。
ところが、みゆちゃんは全く嫌がらずに、身を委ねてくれました。
採血中、エコー検査中、一切嫌がる素振りも見せず、ただ横になって協力してくれました。
そして医薬品を本日お渡しとし、明日からはご家族様だけで皮下点滴をしていただくこととしました。
次回の診察は、3日後とし、状態が安定していれば4日後、7日後と間隔を延ばしていきました。
この時点では、1週間に1回程度検査を実施し、急激な数値変化が起こらないかを、慎重にモニタリングさせていただいていました。
再診49日目
状態も安定してきていることから、注射プランから内服薬プランへの変更を検討させていただきました。
もし飲ませるのが難しかった場合には、注射薬プランにすぐに戻せる体制を整えつつ、内服に変更していきました。
内服薬6種類を全て苦くないものから選定し、シロップにして飲ませていただきます。
もし飲ませられれば、ここからは2週間に1回の検査までに減らすことができます。
うまくいくことを祈っていたところ、ちゃんと飲ませられたとの報告を受け、一安心でした。
このままの状態が長く続くことを、心から祈っていました。
再診71日目
少しずつ食欲が下がってしまったこともあり、内服薬プランのまま、1種類だけ皮下注射として追加処方させていただきました。
注射薬の量が少ないこともあり、ロードーズという細く小さい注射器に吸って準備することができましたので、刺される側も、刺す側もストレスが最小限で済みます。
インスリン注射の時に、よく使用される、細い針が注射器と一体になったものです。
状態が少しでも上がってくれることを信じ、次回も14日後の診察としました。
再診85日目
さらに下がってしまい、もう食欲増進の軟膏が反応しないようになりました。
基本は軟便だが、水っぽくなってしまったおきに下痢止めの注射を入れると、しっかりと反応してくれるとのことでした。
なお、下痢が止まっている日は調子がいいようです。
体重も少し下がっていましたが、直前の一番体調が悪そうだった日からは少し増えていました。
ヒレカツの中身、エビフライの中身、しらす、アジ、そして金目鯛...
食べてくれるなら、みゆちゃんが食べたいのなら、なんでもいいです。
キャットフードだけにこだわって食べられないのであれば、好きなものを好きなだけ食べてもらった方が、何倍もいいと考えています。
この日の超音波検査では、腸管の動きが普段よりも低下していて、拡張傾向のような所見を認めました。
消化管への浸潤が始まったのかもしれないと考えつつも、まだご飯を食べれば便が形成され、下痢止めにも反応を示すので、そこは様子見とさせていただきました。
この日から、内服薬を一部注射薬へと移行し、注射薬プランと内服薬プランを併用としました。
そして、診療間隔も、2週間に1回ではく、週1回とし、病状の変化を捉えていきます。
今日のまとめ
医薬品を使用することで、状態が下がりすぎていない状況であれば、経験上2度だけ不快な状態が軽減し、少し楽そうに過ごしてくれることが多いです。
ただ、医薬品は万能ではないし、その効果は有限であり、必ず終わりはやってきます。
いつ体調が大きく下がってもおかしくない状態ではありますが、できることを一緒に頑張っていきましょう。
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