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がん症例の往診切り替えタイミング〜症例編〜(東京犬猫往診/往診獣医)

前回に続き、今回は実際の2症例のお話を書かせていただきます。

 

少し辛い内容になるかもしれませんので、愛犬・愛猫とのお別れについてまだ考えたくないと思われた飼い主様は、この記事は読まない方がいいかと思います。

 

 

 

2017年に往診専門動物病院を開設してから今までで、200頭を超える犬猫たちを見送り、そして、そのご家族様を見てきました。

 

どんな処置を入れても、最後の最後は苦しい瞬間がやってきます。

その時間の長短はありますが、私たちができることはいかにその苦しい時間を短くし、安心できるご自宅で、ご家族様に見守られながら旅立たせてあげられるかについて、医薬品を使ったり環境を整備したりするだけです。

 

往診獣医療は究極の専門医療です。

往診による緩和ケアやターミナルケアは、決して延命処置ではありませんし、処置しても苦しんでしまうかも知れません。

しかし、医学的な根拠に則って、その子たちに残された時間を、いかに苦痛なく過ごさせてあげられるかをご家族様と一緒に考え、実施して行くのが、当院の往診専門獣医療です。

 

今回は、動物病院への通院から当院の往診に切り替え、在宅での緩和ケア、そしてターミナルケアを経て、ご家族様の腕の中で旅立つことができた2症例をお話しさせていただきます。

 

 

1. 急性腎不全→通院が苦手な子なので往診希望→腫瘍発覚

最初の症例は、東京中央区の猫、ゆきちゃん(推定21歳)です。

 

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ゆきちゃんは、急にぐったりしてしまったと言うことで、かかりつけの動物病院に通院したところ、血液検査所見から腎不全と診断され、入院点滴を指示されました。

しかし、もともと通院すること自体が大きなストレスになってしまうタイプだったので、20年近く動物病院に行けていなかったくらいであったため、院は断り、通院による皮下点滴を選択されました。

しかし、数値が数値であったからなのか、1回の皮下点滴量がゆきちゃんには多過ぎてしまったようで、帰宅してからぐったりしてしまったとのことでした。

もう無理に通院させたくないと言う気持ちと、通院しないと処置してもらえないと言う気持ちがぶつかり合っている中で、当院を見つけてくれました。

初診時には2時間程度で今までの経緯と、どんな性格の子なのか、ご家族様がどんな緩和ケアを望まれるのかなどを相談して決めていきました。

お母さん的に、針刺をできる限り減らしたいとのことから、基本は内服薬を使用し、もし内服がうまく投薬できなかったら注射薬を使用するという流れで診療プランを組みました。

結構力強く食べてくれ、またフラつきながらもしっかりとトイレまで行き粗相を最後の最後までしなかったという驚異の生命力を、ゆきちゃんに見ました。

もともと食欲旺盛だった猫ちゃんだった反面、何も食べなくなってからは状態の低下が早かったです。

ご家族様が見守る中、お母さんの腕の中で静かに旅立っていきました。

 

2. なんとなく元気がない→リンパ腫(がん)を確認→在宅緩和ケアを希望

次の症例は、東京千代田区の犬、トイプードルのくぅちゃん(15歳6ヶ月)です。

 

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くぅちゃんは、もともと心臓が悪かったわけではなく、1ヶ月くらい前に呼吸が荒いことを主訴にかかりつけの動物病院で診てもらったところ、リンパ節が腫れていることを確認し、FNA(細胞診)の結果、リンパ腫であることが発覚しました。

FNAの結果が揃う頃には、すでにふらつきが強く出ており、ご飯もほとんど食べられていませんでした。

腹部超音波検査(エコー検査)の結果、肝臓と脾臓がぼこぼこしており、抗がん剤などを使用し、しっかりとがんと向き合うこともできるが、抗がん剤に耐えられるほどの体力はないと判断し、無治療を選択されました。

残された時間はできる限り家の中で過ごさせてあげたいという気持ちから、往診によるターミナルケアを選択されました。

もともと食が細い性格でしたが、男の子ということもあり、なぜか女性スタッフが撫でると甘えたように尻尾を振ってくれ、いいところを見せたいのか、力強くご飯を食べる姿を見せてくれるという一面を併せ持った性格の子でした。

くぅちゃんは、内服薬をできる限り減らし、ほとんどの薬剤は注射薬として皮下点滴に混ぜて投与することで、くぅちゃんのQOL(生活の質)を大切にしていきました。そして、同時に、薬を飲んでくれないと悩まれる飼い主様のQOLにも着目し、診療プランを組んでいきました。

旅立つ1週間前から、黒い水っぽい下痢(海苔の佃煮のような感じ、通称:メレナ)をするようになり、下痢止めを使用してもしっかりと止まることはなく、3回目のメレナで立ち上がることができなくなり、お母さんの腕の中で静かに旅立ちました。

最後の瞬間、くぅちゃんが小さな高い声で話しかけてくれた、と伺いました。

 

腫瘍性疾患(がんなど)は、もし攻められるのであれば、化学療法(抗がん剤など)や外科手術、放射線療法など、戦い方はあります。施設や設備だけでなく、獣医師には腫瘍専門医と言われる、腫瘍(がん)に特化した獣医師も存在します。医療技術が発展してきた手前、かかりつけの獣医師によっては攻めることだけが正義のように話してしまうことがあるかもしれません。

例えば抗がん剤であれば、以前腫瘍専門の獣医師がF1レースの話を比喩表現として酢買っていました。

「運転免許をとったら、F1レースに出るような車をアクセル全開で運転できますか?直線だけのコースならいいですが、向かい風や横殴りの風、もしくは地面が凸凹かもしれないし、どんなイレギュラーが先に待っているか分からないのに、アクセルを踏み込む覚悟はありますか?抗がん剤治療は、まさにレーシングカーに乗り込んでアクセル全開で腫瘍に挑んでいくという意味です。」

抗がん剤治療は、うまくいっているときは教科書通りですので問題ないですが、必ずイレギュラーが待っています。その時に、何を予測してどんな先制処置ができて、万が一の時はどんな処置をすればいい、などの知識と経験を有している獣医師は多くないです。

もし抗がん剤治療を始めるのであれば、一度専門医の診察を受診しましょう。

 

そして、攻めるだけが正義ではないです。

 

もう攻めた治療はしたくない、または攻めてみたけど耐えられそうにない、と感じてそれでも痛みや吐き気など、症状だけは緩和してあげたいと希望される場合には、私たちがご自宅までお伺いし、愛犬・愛猫の、そしてご家族様にとって最良の診療プランを一緒に考えています。

 

最後の日まで、一緒に頑張っていきましょう。

 

 

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