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急に歩けなくなった大型犬の在宅医療(ペットの終活/大型犬/緩和ケア)

大型犬は一般的に、小型犬と比べて寿命が短いです。

 

猫と比べ犬では品種ごとで、平均寿命が大きく異なることから、今時点で愛犬が高齢なのかどうかは、それぞれの犬種の平均寿命を参考に考えてあげましょう。

 

小型犬で平均寿命が15歳程度であり、よく10歳からは高齢期ですとお伝えしていることを考えると、平均寿命の2/3程度を過ぎた頃からは、いつ何が起きてもおかしくないという心持ちでいたほうがいいです。

 

今回お話しするのは、東京江東区に済むゴールデンレトリバーのレンくんのお話です。

 

急に立ち上がれなくなった

ゴールデンレトリバーのレンくんは、11歳8ヶ月、48kgの元気な男の子でした。

 

いつも通り散歩に出ていたところ、急に座り込んでしまい、そこから動かなくなってしまったとのことでした。

 

どうにか家の前まで近所の方の力を借りて持って来れましたが、玄関から部屋の中に運ぶのもかなりの力が必要で、またレンくん自体も元気がなくなってきてしまったことから、通院は難しいと考え、急遽往診のご連絡をいただきました。

 

当日予約の受付枠が確保できたため、2時間ほどでご到着することができ、状況を詳しくヒヤリングさせていただきました。

 

健康診断では問題なかった

3ヶ月ほど前に、1年健診でかかりつけの動物病院で詳しく検査してもらっていましたが、その時には何も異常は認めなかったとのことでした。

 

血液検査結果を見させていただきましたが何も異常所見はなく、この年齢のゴールデンレトリバーにしては、肝臓や腎臓、心臓など含めてもとてもいい数値をキープできていました。

 

健康診断はその時点でのデータであり、意味するのは未来ではなく過去であり、それまでの通信簿だと思っていただいたほうがいいとお伝えしました。

 

触診にて複数箇所のリンパ節が腫れていることを受け、多中心型リンパ腫が最も可能性が高いと考えました。

 

在宅緩和ケアプランの構築

抗がん剤治療の選択もありますが、環境的にも毎週通院させることは難しいだろうということと、もうこの年までよく頑張ってくれたので、あとは苦しくないように余生を家の中で過ごさせてあげたいというご家族様の意向を受け、在宅緩和ケアプランを構築していきました。

 

内服薬プランと注射薬プラン、注射薬併用プランの3つから選択することができ、お薬は飲ませられるとのことから内服薬プランで進めることとしました。

 

ただし、もし急に飲めなくなることがあるため、その時は注射薬にて投与できるように、3回分の注射薬セットを準備し、常備させておくことで急な変化にも家族だけで対応できる環境を構築しておきました。

 

内服薬は6種類でしたが、体重が大きい分錠数も増えてしまいましたが、それでも簡単にご飯と一緒に平らげてくれるので、ご家族様も不安なく投薬を開始することができました。

 

体調低下からの1週間

初診から4週間ほど経った日、急にお薬を飲めなくなったので注射薬を使います、というご連絡をご家族様から受けました。

 

診察予定日を前倒しし、急遽夜間の時間帯で訪問したところ、レンちゃんはだいぶ弱々しくなっていました。

 

今朝から急にご飯も食べなくなり、もう厳しのかなと思ったとのことでした。

 

血液検査では黄疸数値の上昇を強く認め、肝臓、腎臓ともに大きく悪化していることを認めました。

 

超音波検査では、胸水貯留はなかったのですが、腹水が貯留しており、ただ抜去するほどではありませんでした。

 

利尿剤の使用を検討し、膀胱にカテーテルを留置することで、そこからおしっこを引き抜いてあげることで、動かすことが難しい場合にも、尿による汚染を予防することができます。

 

おそらくもう長くないことを宣告し、この日から皮下点滴を用いた医薬品の皮下投与プランにシフトチェンジさせ、そして最後の日まで走り抜けました。

 

家の中に空いた大きな空間

レンくんが旅立った後の家の中は、とても静かで、部分部分に違和感のある広いスペースがありました。

 

そこはレンくんのおもちゃ箱だったり、トイレ、寝床やご飯の位置だったと伺いました。

 

診察はいつも1階の客室で行っていたこともあり、奥のリビングの生活環境は、この時初めて見せていただけました。

 

壁中に飾られたレンくんと、楽しそうに写っている家族みんなの笑顔から、過ごしてきた時間のやさしさを感じました。

 

ンくんとの別れは辛かったですが、先代も、その先代もずっとゴールデンレトリバーを迎えていたこともあり、迎えた時から最後の日のことを考えていたとのことでした。

 

最初の子は動物病院に入院中に旅立ち、2頭目は交通事故出なくなってしまったことから、レンくんは家の中でゆっくりと最後を迎えさせてあげたいという意向が最初からあり、それを実現できたことが何よりも嬉しかったと話してくれました。

 

最後の瞬間を見届けるのは辛いですが、それでも腕の中で眠らせてあげることができたことを誇りに思っているとのことでした。

 

勇気を持って決断する

どんな最後がやってくるのかは、誰も断言できません。

 

ただ、どんな最後にしてあげたいのかを考えることは、いつからでもできることです。

 

いざその時がやってきてから考えるには、大き過ぎる課題だと思います。

 

いつからでも早すぎることはないので、動物と暮らすご家族様には、是非考えておいてほしいと思っています。

 

レンくんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

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