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犬猫 在宅緩和ケア症例の最近のブログ記事

猫に胸水が貯留すると、胸腔内の圧迫により呼吸困難が生じ、非常に苦しい状態になります。

 

特に猫ちゃんや小型犬などの場合、胸水抜去は強い痛みを伴い、ストレスがかかりやすいため、繰り返し抜去が必要な場合には、鎮静下での実施が望ましいです。

 

そのため、可能な限り負担を軽減する処置を行うことを推奨しています。

 

胸水抜去の頻度は猫ちゃんの状態次第で変動し、数か月に一度で済むこともあれば、連日抜去を要することもあります。

 

また、胸水貯留を伴う猫の日常生活の質を向上させるために、在宅酸素の設置も有効です。

 

酸素室内では呼吸が楽になるため、呼吸圧迫があっても比較的快適に過ごせる空間を提供できます。以下に、胸水貯留に対する在宅緩和ケアの実践として、往診による2つのケースレポートを紹介します。

 

猫の心筋症による胸水貯留

 

背景

12歳の日本猫で、心筋症の治療を2年半にわたって通院で行っていました。

 

しかし、心筋症が進行し、胸水が貯留し始めたため、動物病院での胸水抜去を試みましたが、3日後には再び胸水が溜まってしまいました。

 

通院頻度が増すことで猫にかかる負担が大きくなり、飼い主様の意向で在宅緩和ケアへ切り替えることとなりました。

 

在宅緩和ケアの内容

1. 酸素室の導入と環境整備

まず、猫ちゃんが穏やかに過ごせるように在宅酸素環境を整え、日常生活での負担を減らすことから図ります。

 

ご家族様の生活環境も把握したうえで、安静が保たれるスペースを確保しました。

 

2.投薬内容と方法の変更

心筋症治療の内服薬は、次第に経口投与が難しくなり、薬を与えるたびに開口呼吸が見られていました。

 

そのため、薬剤の投与経路を可能な限り経口から皮下投与に切り替えることで、呼吸悪化のきっかけの減少と、投薬成功率を向上することができました。

 

3. 定期的な往診とモニタリング

週1回の往診で胸水貯留の状況を超音波検査で確認し、薬剤の効果や体調の変化を把握しました。

 

また、状態に合わせて1〜2週間に1回の血液検査で体調をチェックしました。

 

投与経路の変更後、胸水の貯留は大きく改善し、6か月間ほど胸水抜去を必要としない期間が続きました。

 

胸水の再発と最期までのケア

在宅ケア開始から6か月後、再度胸水貯留が見られるようになりました。

 

週1回で胸水抜去を行っていたものの、貯留頻度が上がり、最終的には連日での抜去が必要になりました。

 

緩和ケア開始107日目、猫は家族に見守られながら旅立ちました。

 

 

ケース②:猫の心臓血管肉腫による胸水貯留

 

背景

次の症例は、急激な体調悪化で動物病院を受診した14歳の猫ちゃんです。

 

胸水が貯留していることが確認され、胸水を抜去したところ呼吸が安定しましたが、胸水の細胞診で腫瘍が疑われました。

 

抜去後の呼吸は改善したものの、帰宅後に猫ちゃんが横になれず唸り声を上げて隠れてしまったため、通院での継続治療が困難となり、在宅緩和ケアに切り替えました。

 

在宅緩和ケア内容

1. 環境整備と飼い主様のサポート

緩和ケアにあたっては、まず家庭環境を整備し、飼い主様が病気と向き合う準備ができるようサポートを行いました。特に腫瘍性胸水は医薬品によるコントロールが難しいため、在宅ケアの方針をあらかじめ共有しました。

 

2. 投薬の工夫

この猫ちゃんも内服薬の服用が難しかったため、早い段階で全ての医薬品を皮下投与に切り替えました。

 

この時期の猫ちゃんにとって、内服薬の負担はかなり大きくなることが予想されるため、無理に負担をかけず、確実に薬剤を投与するための措置です。

 

鎮静下での胸水抜去とその後

往診時に鎮静をかけたうえで胸水を抜去すると、呼吸が楽になり、通院後には食べられなかったドライフードを再び食べる様子が見られました。

 

24日間の在宅緩和ケアの間に4回胸水抜去を実施しましたが、全ての抜去後も、通院後の異様な興奮行動は認められませんでした。

 

この猫ちゃんは緩和ケア開始から24日目に、家族に見守られながら眠るように旅立ってとのことでした。

 

 

まとめ

 

猫で胸水が貯留し、呼吸が圧迫される場合、胸水を抜去することで呼吸が改善し、生活の質が向上する可能性があります。

 

胸水抜去には強い痛みが伴うため、全身状態次第ではありますが、可能な限り鎮静下で行うことが望ましいです。

 

在宅緩和ケアのステージにいる猫ちゃんのほとんどが良くない状態です。

 

そのため、胸水抜去の時は軽度〜中等度まで鎮静量を調整し、猫ちゃんの体だけでなく精神的な面にもできる限り負担をかけずにケアすることを心がけています。

 

胸水抜去は1回で終わることはほとんどなく、繰り返し必要になる場合が多いため、その都度の痛みやストレスを最小限に抑える工夫が不可欠です。

 

また、胸水による呼吸困難が続く猫に対しては、酸素室の設置も有効です。

 

酸素室の使い方や設定方法については、担当の獣医師に相談し、猫の症状や状態に応じて適切なケアを行っていきましょう。

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肥大型心筋症(HCM)は、猫の心臓病の中でも非常に一般的な病気です。

 

特に高齢猫に発症することが多く、症状が進行すると呼吸困難や倦怠感、食欲不振といった症状が現れます。

 

この記事では、12歳の猫とともに過ごすご家族様の事例をもとに、猫ちゃんが最期を迎えるまでの緩和ケアについてご紹介します。

 

飼い主の皆さんが、猫にできるだけストレスをかけず、心穏やかな時間を過ごせるようなケアを中心に解説します。

 

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ご家族様と猫ちゃんの状況

今回登場する猫ちゃんは、9歳で肥大型心筋症と診断を受け、内服薬でずっとコントロールできていました。

 

しかし、12歳になって時から呼吸状態の悪化が著しくなり、かかりつけの動物病院にて胸水貯留を確認し、かかりつけの動物病院までタクシーで向かい、抜去してもらいました。

 

これで安心かと思っていたのですが、またすぐ3日後には貯留を認め、高い頻度での胸水抜去が必要とされた今、通常でも通院が苦手な性格の猫ちゃんでしたので、さらに強い痛みを伴う胸水抜去を通院で繰り返すのは難しいと判断され、在宅での治療を希望されました。

 

家族構成は、お母さん、お父さんの2人で、積極的な治療は望まないが、ただ苦しさだけは軽減させてあげたい、残された時間を家で過ごさせルコとを希望されました。

 

お父さんはカレンダー通りのお仕事で、かつ出張を伴うことから、在宅ワークをされているお母さんを中心に、1人でもできる範囲で最適な環境構築をしていく方針で進めました。

 

環境を整えることで、薬や処置以外の面でも猫ちゃんの負担をできるだけ軽減できるよう、在宅緩和ケアで幅広く見ていきます。

 

1. 在宅ケアの基本方針

在宅緩和ケアでは、猫ちゃんのQOL(生活の質)を最大限に尊重しつつ、その上で猫ちゃんの隣で戦うご家族様のQOLも大切にしていきます。

 

治療ではなく、症状のコントロールや痛みの緩和、快適な環境の提供が主な目的です。

 

ここでは、以下のポイントを重視していくことが多いです。

 

a. 痛みと不快感の管理

肥大型心筋症は、進行すると呼吸困難や胸水貯留などで猫が非常に苦しむことがあります。

 

呼吸困難を和らげるため、酸素療法の導入が考えられます。

 

往診の際に、酸素濃縮器や酸素ボックス、時には酸素ボンベの自宅設置における使用方法について説明し、ご家庭で安心して運用できるサポートを行います。

 

また、呼吸困難時に使用できる利尿剤や、呼吸を楽にするための鎮静剤、鎮咳薬(咳止め)などの処方も検討します。

 

b. 食欲の維持と栄養管理

どのステージにいるのかで、栄養に対する考え方は異なってきます。

 

緩和ケアに入りたての頃であれば、栄養管理は頑張ってあげたいものですが、ターミナルケアのステージであれば、話は変わります。

 

もしご家族様が強制給餌の実施をご希望されるのであれば、実施する時の猫ちゃんの姿勢や保定方法、使用するご飯について、また1口の量や1回の食事に許容できる容量、頻度など、状態と環境に合わせて徹底的に指導させていただきます。

 

そしてターミナルケアに入った時には、もう何も食べられないことが多いため、それでも食べさせたいのか、それとも無理に食べさせないことを選択したいのかを、客観的な所見や私たちの在宅緩和ケアの経験を交えてご説明し、ご家族様に選択していただきます。

 

c. ストレスの軽減

猫ちゃんはストレスにとても敏感な動物です。

 

環境を変えるだけでも体調が悪くなるともあるほどです。

 

そして、この緩和ケアのステージでは、多くの場合には病気を抱えており、常時ストレス下に晒されています。

 

検査や必要に応じた処置、処方などもまた、ストレスの一因であると思われます。

 

ただ、苦痛を緩和するために必要なもののため、他の箇所でいかにしてストレスを減らしてあげられるかが大切です。

 

家の中に、猫ちゃんが落ち着けるスペースはあるのでかなど、そのスペースをもっと豊かにすることは可能なのかなどを模索していきます。

 

2. 往診専門動物病院でのサポート内容

在宅緩和ケアをサポートするために、定期的な訪問による検査、処置、処方や指導が行われます。往診では、肥大型心筋症の猫ちゃんについては、次のような検査や処置が行われます。

 

a. バイタルサインのチェック

猫ちゃんの呼吸状態や心拍、歩様や食事などの変化などを定期的にモニタリングし、症状の進行具合を把握します。

 

これにより、状態が急変した場合の早期対応が可能になります。

 

b. 薬の処方と投与指導

緩和ケアの一環として、肥大型心筋症を抱えた猫ちゃんの場合には、利尿剤や鎮痛剤、酸素療法を行う場合の薬剤の使用方法を飼い主に丁寧に指導します。

 

自宅での薬の投与に関する不安を軽減するため、実際に飼い主の目の前で投薬方法を示し、実践してもらうことも大切です。

 

なお、内服薬が苦手な猫ちゃんが多いため、皮下点滴の指導を行い、ご自宅で皮下点滴という手法を用いて投薬をしてもらうことも可能です。

 

c. 胸水の管理

肥大型心筋症に伴う胸水貯留が見られる場合は、必要に応じて往診時に胸水を抜くことが可能です。

 

胸水を抜くことで、肺の拡張が担保誰、猫ちゃんの呼吸困難を一時的に改善させることが期待されます。

 

また、胸水抜去の時には、猫ちゃんの場合、軽度な鎮静処置をしてあげることを推奨しています。

 

胸水抜去の時は、肋骨の間から針を刺して胸腔内にアプローチをかけるため、腹水抜去や採血、皮下点滴などと比べると、強い痛みを伴います。

 

また、胸水は1回抜けば大丈夫なのではなく、またすぐに溜まってくることも予想されます。

 

痛かった思い出が積み重ならないように、状態に応じて、できれば少しでも鎮静をかけてあげることを検討してあげましょう。

 

3. 在宅でのケア方法

ご家族様が自宅で行うケアには、以下のようなものがあります。

 

a. 猫のコンディションモニタリング

呼吸困難の兆候(呼吸が荒い、口を開けて呼吸する)や、食欲の低下、活動量の減少を毎日確認します。

 

特に呼吸状態の悪化は、写真や動画などを合わせてご連絡いただくなど、注意深く観察することが重要です。

 

食欲などを含めた全身状態が一気に悪化したのか、それともゆっくりと悪化してきたいるのかなど、診察時にゆっくりとお伺いさせていただきます。

 

b. 快適な環境作り

温度や湿度の管理は肥大婦型心筋症を抱えた猫ちゃんにとって、とても重要です。

 

猫ちゃんの呼吸状態に合わせて、適切な室温を適宜お伝えさせていただきます。

 

多くの場合、ご家族様が涼しい〜寒いと感じるくらいの温度指定になることが多いです。

 

また、猫ちゃん自身で温度管理ができるように、暖かい場所の設置など、環境に合わせて考案させていただきます。

 

湿度は不快ではないくらいの50〜60%に維持することが推奨されます。

 

なお、心臓に負担をかけないために、過度な温度変化は避けましょう。

 

c. 投薬のサポート

毎日の投薬は、猫ちゃんにとって負担になりやすい部分です。

 

できるだけ猫ちゃんがリラックスできる方法で行うことがポイントです。

 

錠剤をピルポケットやおやつに包んで与えるなど、工夫をすることも役立ちます。

 

また、私たちの経験から、この薬ならこうすれば飲めるかもしれない、などの知識提供を都度させていただき、できる限り内服薬で投薬できるように、一緒に考えていきます。

 

もしどうしても内服薬が難しい場合には、皮下点滴などの手法を用いた方法で、注射薬で代替できる医薬品は代替していくことも検討します。

 

4. ご家族様への精神的なサポート

猫ちゃんの看護や看病は、ご家族様にとって体力的な負担だけでなく、精神的な負担になります。

 

これから起こりうるであろう症状や事象について先にご説明させていただき、その時にどう捉えて、何ができるのかなどのアクションプランを決定することで、先に起こる混乱に対して事前準備を徹底的に進めておきましょう。

 

精神的なサポートは、事実と感情を分けることで見えてきます。

 

まずは診察でしっかりとお話をお伺いさせていただき、何にどれだけの不安を抱えているのかを探っていき、その事象が起きた時、何をどうしたらいいのかなどを事前に対策を練っておきます。

 

多くの症状の変化は、事前に状態を把握していればある程度想定できます。

 

準備を整えておくことで、何もできない不安を払拭し、その猫ちゃん専用の動物看護師になっていただき、最後まで一緒に戦うマインド形成をお手伝いさせていただきます。

 

ここからは必ず状態は悪くなり、そしてお別れの日がやってきます。

 

少しでも後悔のない最期を迎えられるよう、在宅緩和ケアに特化した私たちが、最後まで伴走させていただきます。

 

まとめ

肥大型心筋症の猫ちゃんに対する在宅緩和ケアは、治療ではなく、猫ちゃんができるだけ快適に過ごせるようにすることを重視しながら、ご家族様が希望する最後の時間の構築を目指します。

 

痛みの管理、環境の整備、ご家族様のケアを含む全体的なサポートが、猫ちゃんとその家族にとって最良の結果をもたらせるように、最後までサポートさせていただきます。

 

東京を中心に、千葉、埼玉、神奈川などの近隣地区までは、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室が対応可能です。

 

ご家族様が猫ちゃんとともに穏やかな時間を過ごせるよう、往診を活用しつつ、適切な在宅緩和ケアを提供してあげましょう。

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「血管肉腫」

 

この病気は、発覚してから本当に進行速度が早い病気に分類されます。

 

例えば月初に健康診断を行っていても、月半ばくらいに違和感を覚え、再度検査したところ脾臓に疑わしいものがあったり、胸水や腹水が貯留していたりすることがあります。

 

そのくらい、進行速度は早いんです。

 

大型犬の血管肉腫における在宅緩和ケアでは、主にかかりつけの動物病院である程度診断がついてからの在宅切り替え相談が多いです。

 

大型犬の場合、通院できるうちは通院で頑張るものの、抗がん剤を断念して治療ではない緩和ケアを希望したいと感じた頃、かかりつけの動物病院では在宅相談が難しいとされて、切り替えに踏み切るようです。

 

猫ちゃんの場合には、もともと通院ができない子が多いために早期からの在宅緩和ケアを希望される傾向が多い中で、わんちゃんだとかなり病末期からのターミナルケアで、在宅緩和ケアに切り替えられることが多いです。

 

では、大型犬ではどうでしょうか。

 

大型犬の場合には、まだ歩けるうちから在宅緩和ケアに切り替えることをお勧めしています。

 

なぜかというと、歩行が難しくなってきた段階で、通院を断念せざるを得ないタイミングが突然来てしまうからです。

 

事前にご連絡をいただいていれば、その時のことを想定したインフォームが可能であり、さらには対策を打つこともでき、いきなり始まる愛犬の介護、看病に対しても事前準備しておくことができます。

 

今回書かせていただく内容は、ラブラドールの陸くん12歳の初診です。

 

摘出した脾臓の病理検査結果から「血管肉腫」と診断を受け、2024年4月17日から在宅緩和ケアに切り替えました。

 

初診(診察1日目)

陸くんの家は、猫ちゃんもワンちゃんも一緒に暮らす、大家族でした。

 

大型犬もたくさんいて、先に天国にお引越ししたラブラドールの子達も、最後は腫瘍でした。

 

1頭は趾端メラノーマで、もう1頭は陸くんと同じ骨肉腫でした。

 

かかりつけの動物病院の担当獣医師は、本当に親身になって説明をしてくれたそうですが、最終的には抗がん剤をしないで、緩和ケアを選択されました。

 

腫瘍と診断された場合には、外科手術や放射線治療、抗がん剤や分子標的薬の説明を、まずは受けることと思います。

 

ただ、その説明を受けた後すぐに決断するのではなく、確かな知識を持ってから、改めてご家族様で話し合われることをお勧めします。

 

ご家族様として、愛犬、愛猫に残された時間を、どこで、どんな風に過ごさせてあげたいのか。

 

抗がん剤と一言で言っても、その効果や副反応は異なっており、うまくいっている時は劇的な回復を認めることもありますが、副反応のダメージを目にしたことがある方であれば、抗がん剤の怖さを知っていることと思います。

 

抗がん剤ではなく、もう痛みや吐き気など、生活している上での苦痛を少しでも軽減させながら、もう延命は望まないと考えたのであれば、緩和ケアに切り替えることも、また1つの選択です。

 

緩和ケアは決して逃げではなく、ペットにとって最良であると判断した、勇気ある覚悟の形です。

 

また、緩和ケアの中にも通院医療と往診医療(在宅医療)で、考え方やプランの組み立て方、指導の仕方なども異なってくると思われます。

 

例えば、当院の場合は在宅緩和ケアに特化した獣医療チームを編成しているため、家族の関係性や連携具合、実際の生活環境や家族の日常スケジュールなど、事細かにお伺いして、実施可能な在宅緩和プランを提案していきます。

 

最後までご家族様を1人にしない。

 

私たちが心がけている大切な信条です。

 

陸くんの初診時問診では、10日ほど前から運動量の低下はあるものの、もともとおっとりしている性格なこともあり、あまり変わらない印象とのことでした。

 

食欲は旺盛で、1日4回のご飯タイムも、毎回完食してくれるとのことでした。

 

体重が40kg以上ということもあり、薬もかなりの量になりました。

 

人間でも、これだけでお腹いっぱいになっちゃいそうな量です。

 

陸くんの場合には、1日4回のご飯タイムがあるので、そのタイミングを利用して、投薬タイミングを4回に分散させることで、1回の薬剤量を減らすことをご提案させていただきました。

 

この時実施した血液検査では、貧血はあるものの、1ヶ月前にかかりつけの動物病院で実施した結果よりもやや改善しており、超音波検査で腹水や胸水を認めなかったことから、出血自体が安定していることが伺えました。

 

今後のことのご説明

病気はいつか必ず進行し、身体機能がある時を境に、うまく働かなくなってきます。

 

食べても消化がうまくいかなくなったり、そもそも食べなくなったり。

 

立ち上がりたいのに、立ち上がれなくなったり。

 

そんな時に考えなければいけないのが、「介護」です。

 

介護問題は人間社会だけではなく、ペットの介護についても同様かそれ以上に、社会が目を当ててくれないという側面を加えれば、辛い悩みが出てきているかもしれません。

 

しかし、この「介護」、そして投薬などの「看護」にもやり方があります。

 

全部をオリジナルでこなせるのであれば、それはすごいことです。

 

でももし、心が苦しくなってきた時や、介護をしていて悩み事が出た時には、専門家に相談することは何も恥ずかしいことではないです。

 

向き合い方さえわかって仕舞えば、あとはそれを生活環境にどんな形で組み込んでいくか、ただそれだけです。

 

全部ができないことで自身を責めることが多くなるこの時期ですが、決して100点を目指さず、60点でもやり続けてあげることが大切です。

 

在宅緩和ケアのことでご不安がございましたら、家まで来てくれる往診専門動物病院に連絡をするか、東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室がお伺いさせていただきます。

 

次は、陸くんの再診のご様子を書かせていただきます

猫のさぶちゃんの続きです。

 

前回まではさぶちゃんの在宅緩和ケア(初診から3日目まで)からどうぞ^^

 

もしかすると、インスタグラムでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

 

まだ見たことがないという方は、インスタグラムで@koheiemotoを検索してください。

 

さぶちゃんの動画を載せてありますので、口腔内扁平上皮癌の猫ちゃんの在宅緩和ケアの雰囲気が伝わればと思います。

 

また、【ペットの緩和ケア】というテーマで、BS朝日の「ネコいぬワイドショー」で取り上げていただきました。

 

  • BS朝日「ネコいぬワイドショー」
  • 2024年4月12日22:00〜 「ペットの在宅緩和ケアを知る」

 

今回、猫の口腔内扁平上皮癌の在宅緩和ケア(さぶちゃん)腎臓病の猫の緩和ケア(タロウちゃん)がメインで出ています。

 

もしかすると、まだTverなどで視聴できるかもしれませんので、今後ペットの在宅緩和ケアをご検討されるご家族様は、この機会に是非一度見ていただければと思います。

 

今回のブログは、東京江東区在住のさぶちゃん(猫の口腔内扁平上皮癌)の、前回からの続きです。

 

2024年2月13日から始まった在宅緩和ケア。

 

一度は上がってきたものの、病気は必ず進行していきます。

 

そして、2024年4月24日の朝、お母さんと一緒に眠る枕元で永い眠りにつきました。

 

その姿は、寝た時のままであり、苦しむ素振りの一切を見せずに、生涯に幕を閉じました。

 

再診(診察7日目)  2024年2月20日 3.5kg

前回の診察時よりは元気さが減っていたものの、この日はまだまだ元気さもあり、ベッドやキッチンに飛び乗ることもできていました。

 

ずっと便秘だったので心配でしたが、その後下痢になり、そしてこの日は良便になっていました。

 

医薬品の開始、特に抗生剤や吐き気を抑える薬などでは軟便傾向になることがあります。

 

状態にもよりますが、最初のうちは都度ご連絡をいただき、医薬品をカットするか、その状態であれば継続するかをお伝えさせていただいております。

 

そして、口腔内腫瘍からの出血は、食べるたびにポタポタ垂れてしまう状況に変わりはありませんでした。

 

それでも力強くおもちゃで遊ぶし、ご飯もしっかりと食べられていました。

 

この時から、近い将来の酸素環境の構築を見据えて、酸素ハウスの設置を相談させていただきました。

 

元気なうちから、酸素ハウスに慣れておくことで、本当に必要になった時に抵抗なく使ってくれるかもしれないためです。

 

酸素発生装置の設置はまだ先ですが、早期から酸素ハウスを設置して、日常の中に溶け込ませておくことをお勧めします。

 

さぶちゃん2.png

 

再診(診察17日目)  2024年3月1日 3.2kg

徐々に腫瘍のある左顎下あたりが膨らんできました。

 

元気食欲は少しだけ下がってきて、昨日からぼーっとしている時間が長くなってきたとのことでした。

 

この日からステロイドの増量を行い、状態が少しでも上がってくるのを期待しました。

 

状態低下に伴い実施した血液検査では、肝臓の数値が少し高くなっていること、軽度の貧血になっていることがわかりました。

 

この病気の出血に対しては、効果の薄い止血剤を使用するまでしか対処できないため、徐々に貧血になっていくことが予想されていました。

 

また、食べるたびに出血してしまうため、食べさせない方がいいのかというご質問を受けることがありますが、私たちとしては、本人に任せてあげてほしいと考えています。

 

さぶちゃんの場合、出血はするものの食べたがるため、食べられるうちはあげてもらうようにお伝えさせていただきました。

 

さぶちゃん4.png

 

再診(診察31日目)  2024年3月15日 2.6kg

体重も徐々に減ってきて、ご飯もほとんど食べられなくなってきました。

 

血液検査では、貧血の値が大幅に減少し、前回値よりも10%くらい低い13.4%を認めたことから、酸素発生装置の手配を行い、在宅緩和ケアでの酸素環境構築を行いました。

 

酸素発生装置は2台体制とすることで、酸素濃度の上昇速度を早めることができ、酸素ハウス内が汚れてしまった時に掃除をしても、すぐに必要な酸素濃度まで上昇させてあげられるようにしました。

 

また、さぶちゃんは酸素室の中でずっと過ごすことを嫌がっていたため、貧血になっても酸素ハウスの外での生活を希望していました。

 

この場合には、酸素ハウスの一部を開放してあげることで、自由に出入りができる空間を実現し、また垂れ流される酸素からの酸素供給が可能となります。(少量ですがないよりはマシです)

 

呼吸状態が悪い時は、酸素ハウス内に入れ、安定したら自由にさせてあげるような流れで使用していただくようにしました。

 

 

 

再診(診察42日目)  2024年3月26日 2.3kg

いよいよウェットのおやつを少し舐める程度までに、食欲が下がってきました。

 

ぼーっとしている時間が長くなったため、ぼーっとしているときは苦しいのかなと思い、酸素室に入れると、30分くらいで出せっていうので出す、というのを繰り返しているとのことでした。

 

 

再診(診察45日目)  2024年3月29日 2.2kg

まだこの時は、ベッドやキッチンには飛び乗れていました。

 

ずっと便が出ていなかったので心配だったが、2日前に大量のうんちをしてくれたとのことで、写真で見せてくれました^^

 

写真を見せてくれた時のお母さんの表情はとても明るく、本当に嬉しそうなご様子でした

 

ただ、その時にかなり体力を消費してしまったのか、ぐったりしてしまったとのことでした。

 

食欲増進剤の軟膏を使用するも食欲増加を認めないことから、軟膏はここで使用中止としました。

 

食欲増進剤の軟膏は、求めたい効果である食欲増進だけでなく、一定数は興奮してしまう作用があります。

 

最初に使用する時は半量で挑戦し、メリットとデメリットを評価してあげ、メリットの方が高い場合のみ、通常量を使用することをお勧めします。

 

もうトイレは間に合わないため、寝ているカーペットの上で漏らしているとのことでした。

 

猫ちゃんは本当に綺麗好きで、最後の最後までトイレまで行っておしっこやうんちをしようとします。

 

これは本能なのか、プライドなのか。

 

体力的に難しいからと、トイレを近くに持ってくるのではなく、トイレの数を増やすなどして対処してあげましょう。

 

再診(診察49日目)  2024年4月2日 2.2kg

前回の排便から出ないままで6日間が経過しました。

 

良かったことは、ウェットフードを右側からあげると出血を起こすが、腫瘍のある左側からあげると出血を起こさないことを見つけたとのこと。

 

もう目は見えていなさそうでしたが、それでも呼びかけにはちゃんと反応するし、たまに立ち上がって歩く姿も見せてくれました。

 

再診(診察52日目)  2024年4月5日 2.2kg

前日に小指の先程度の排便を認めたとのことでした。

 

もう何も食べないし、水も飲めていないとのことでした。

 

飲水ができないと脱水が一気に進行しそうなイメージですが、さぶちゃんの場合には腎機能はほぼ正常だったため、毎日の皮下点滴だけで十分にカバーできていたと考えています。

 

 

再診(診察64日目)  2024年4月16日 1.9kg

もうほとんど動けなくなっていました。

 

それなのに、大好きな猫じゃらしを前にしたら、体を起こして追いかけようとしてくれたんです。

 

遊んでいるのか、遊んでくれているのか。

 

私たちが来たことを、ちゃんと認識してくれていました。

 

さぶちゃん1.png

 

 

再診(診察67日目)  2024年4月19日 1.9kg

音はまだ聞こえていました。

 

音のする方に耳を少しだけ向けてくれました。

 

目もは見えないし、きっと鼻も効かないけど、すごく穏やかな表情で毎日を過ごしているとのことでした。

 

 

再診(診察69日目)  2024年4月21日 1.9kg

もうすぐお別れかなと思い、手のところに指を持っていくと、グイッと握ってくれたとのこと。

 

お母さんの温もりを、しっかりと感じているんだなと思えたお話でした。

 

最後の診察から3日後の2024年4月24日、さぶちゃんは永い眠りにつきました。

 

いつものようにベッドに連れていき、いつもの場所で一緒に寝て、いつもの朝を起きると、昨日の夜の姿で眠っていたとのことでした。

 

お母さんに気づかれないように、安らかな表情のまま眠るように旅立ったんだろうなと思いました。

 

さぶちゃんの73日間に及んだ在宅緩和ケアは、この日幕を閉じました。

 

さぶちゃんのご冥福をお祈り申し上げます。

 

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猫ちゃんの病気として有名なものに、甲状腺機能亢進症があります。

 

☑︎ご飯をよく食べる割には、痩せたような気がする。

 

☑︎毛並みが粗造になった気がする。

 

☑︎気が立ってるような気がする。

 

など、わかりやすい所見はいくつかありますが、中にはほとんど症状を表さないのに、甲状腺機能亢進症を発症している猫が一定数いる印象を受けています。

 

通常の動物病院では、血液検査項目をギリギリまで絞って検査されることが多いですが、これは診療費を抑え込むために、獣医師が必死に考えて項目を減らしてくれているからだと考えられます。

 

しかし、その分見落としが出るかもしれないことを理解していなければいけません。

 

追加検査が必要にあれば、また通院しなければいけないし、また針刺しという侵襲性のある行為を行わなければいけないので、できれば1回で広く検査してあげたいという方と、とはいえ金額の安さを重視する方と、二分されると思います。

 

通院頻度が高くなり、針刺し頻度も高くなることは、犬猫にとってストレスであることに間違い無いと考えています。

 

もし検査項目をもっと広く見てもらいたい場合には、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

 

今回書かせていただく症例は、重度の肝障害と黄疸を伴い、かかりつけの動物病院からは何もできないのでこのまま旅立つのを待つしかないとされた猫のハナちゃん、14歳の女の子の緩和ケアについてです。

 

はなちゃん①.jpg

 

当院での在宅緩和ケアでは、最初に広く検査をさせていただきデータを集め、データに基づいて、在宅緩和ケアプランを構築していきます。

 

検査結果から、隠れていた病気が見つかり、毎日の点滴によって、状態が調子の良かった頃のように戻ってきてくれています。

 

検査項目を絞ることだけが正義じゃないかもしれません。

 

既往歴

2021年に腎臓の数値が悪いとされ、血管拡張薬の内服を開始と、2週間に1回の通院で、ビタミン剤などを入れた皮下補液を実施するように指示されていたとのことでした。

 

2024年1月20日の段階では2.6kgあった体重が、2月2日から急に食べなくなってしまったことを機にガクッと下がり、2月4日時点では2.1kgまで減っていました。

 

また、この日は検診日だったこともあり動物病院に通院させて検査したところ、肝臓の数値が著しく悪化していることを指摘され、余命1週間とされたとのことでした。

 

今まで肝臓について何も指摘されてなかったこともありましたが、今回も特別今後の方針を示してくれず、ただ余命だけを言われてしまったことから、もし厳しいのであれば、もう苦手な通院はさせないで、在宅緩和ケアに切り替えたいという想いで、当院までご連絡をいただきました。

 

初診(診察1日)

見るからにぐったりしていたこともありましたが、血圧がしっかりしていることから、採血、そして超音波検査を実施することを踏み切りました。

 

猫のはなちゃんは、特別大きく嫌がることなく終始検査に協力してくれたこともあり、検査にかかる時間は、おおよそ15分ほどで完了することができました。

 

検査後も、好きなお部屋にトコトコと歩いて行き、そこでくつろいでいてくれましたので、現在予想している内容と、今後の流れ、今後起こりうることやその時はどうすべきなのかなど、幅広くお話しすることができました。

 

また、すでに苦い内服薬を飲ませるには厳しい状況だったこともあり、苦味のほぼない内服薬のみで作成したシロップ剤を1種類、朝晩の投薬と補水を目的とした皮下点滴としました。

 

皮下点滴トレーニングも問題なく完了し、医薬品もお渡し、この日から猫のはなちゃんの在宅緩和ケアが開始されました。

 

はなちゃん②.jpg

 

再診(診察5日目)

状態がかなり安定しており、以前のはなちゃんとは別の猫ちゃんのような毛並みにまで回復している姿を見せてくれていました。

 

3日間も食べられなかったご飯を食べてくれ、お水も飲め、ジャンプまでできるほどまでに改善してくれたとのことでした。

 

初診時に実施した血液検査結果では、肝臓の数値がかなり高く、黄疸も強く出ていることがわかりました。

 

心臓の数値も高かったのですが、甲状腺の数値がかなり高いことが検出されました。

 

この日から、甲状腺の薬、心臓の薬を開始して、更なる安定を図ることとしました。

 

 

はなちゃんの在宅緩和ケア

 

もう治らない、余命1週間と言われて家に帰った後も、苦しい時間は続きます。

 

今どんな状態で、最後の日までの間にどんな変化が起こり、どんな症状を出すのか。

 

その時どう捉えて、何をしてあげられるのか。

 

治療が叶う状態であれば、ある程度の診療時点での説明で十分かもしれませんが、緩和ケア、時に終末期ケアの段階では、未来に起こり得る変化までをお伝えしておく必要があります。

 

本当に今の準備だけしかできないのか。

 

不安は募る一方であり、その不安は自然に減少することはないです。

 

猫のはなちゃんの場合には、たまたま東京世田谷区だったこともあって、私たちがお伺いすることができ、在宅緩和ケアプランを組むことができました。

 

もしお伺いできないエリアにお住まいの場合には、お薬だけを受け取って帰るのではなく、不安な気持ちを少しでも払拭できるように、かかりつけの獣医師に全部聞いてもらうようにしましょう。

 

きっとご家族様のお力になってくれるはずです。

 

最後まで粘り強く、少しでも緩和できるよう、方法を追求してあげましょう。

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猫の口腔内腫瘍で最も多いとされるのが、扁平上皮癌です。

 

扁平上皮癌を抱えると、口の動きに合わせて痛みや出血を伴う印象があり、ご飯を食べなくなり、動かなくなるという経過をよく見受けます。

 

また、発生場所にもよりますが、頬が腫れてくるように見えることから、歯の病気に分類される根尖部膿瘍を疑われ、根尖部膿瘍の治療に入ってしまう場合があります。

 

この場合にも、基本的には麻酔下での処置となるため、口腔内をしっかりと観察することができ、その違和感から細胞診などの実施を踏み切り、扁平上皮癌が発見されるというケースもあります。

 

また、初期であれば腫脹も軽度なため、もしその時に鼻風邪や鼻炎のような症状を伴っていた場合には、猫風邪などで様子見とされてしまうことが多いです。

 

猫風邪の治療に、もしプレドニゾロンなどのステロイドを使用されていた場合には、少し状態が改善してしまうということが起こってしまうかもしれません。

 

そのため、細胞診などの麻酔をかけた検査への踏み込みが遅れてしまい、猫風邪にしては症状が長く、改善したのに徐々に悪化してきておかしいとされ、ようやく麻酔に踏み切り口腔内を精査すると明らかな違和感を認め、検査、診断とつながるという、少し回り道をしてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

 

この病気は、明らかな変化(頬の腫脹や鼻の形状変化など)を伴っていなければ、検査に麻酔が必要となることから踏み込まれづらいところがありますが、もし見つかれば腫瘍性疾患となり、可能であれば腫瘍を専門とする動物病院でがん治療に踏み込みましょう。

 

また、現状は慢性の猫風邪だと思い長期間の服薬をしている猫ちゃんの場合にも、一度セカンドオピニオンとして、腫瘍専門の動物病院で、がん専門医の診察を受けることをお勧めします。

 

今回書かせていただく症例は、東京江東区にお住まいのさぶちゃん、12歳の日本猫の男の子です。

 

現在も継続中の在宅緩和ケアについて書かせていただきます。

さぶちゃん1.png

 

今までの経緯

2023年12月に左頬からの排膿を認めてかかりつけの動物病院に通院したところ、その違和感から検査に踏み込み、扁平上皮癌と診断されました。

 

その状況から、内服薬での緩和治療とされていましたが、2024年2月を迎えると徐々に食欲が下がり、内服薬を受け付けてくれなくなりました。

 

もともとドライフードを好んでいましたが、この時はすでにチュールしか食べてもらえず、それの量も減ってしまっていました。

 

もう通院させるのは厳しいと判断され、2024年2月13日に当院までご連絡をいただきました。

 

 

初診(診察1日目)

お伺いすると、猫のさぶちゃんはリビングで伏せており、手をぴんと伸ばしたまま、終始じっとしていて動きませんでした。

 

目が開かないほどの左頬の腫脹もあり、毛並みもパサパサ、脱水も著しい状況でした。

 

過去の血液検査結果、かかりつけ動物病院での処方歴など、お母さんがお持ちだった全てのデータを見させていただき、現在までにどんなことがあり、何をされていたのかなどについて整理させていただきました。

 

血液検査結果では、腎臓や肝臓などに異常所見はなく、栄養状態なども含めて特記すべき所見は認めませんでした。

 

腫瘍疾患を抱えていて、特に肝臓転移や腹腔内腫瘤による障害などを伴わない場合には、血液検査結果がキレイなことが多いです。

 

そのため、肝臓や腎臓の機能は正常に残っていることから、現在の状態をサポートしてあげ、自力でご飯を食べたり、お水を飲んだりできるようになれれば、体を維持できることが期待できます。

 

お母さんのお話によると、まだ歩いて水を飲みに行っているが、全然飲めていないように感じるとのことがあり、おそらく扁平上皮癌によって、舌をうまく動かせていない可能性を疑いました。

 

食欲がないのも、痛みと口を動かすことが辛いのではないかと疑いました。

 

排便も、食欲の低下とともに徐々に少なくなり、ころっとした硬いものが少しでた程度とのことでした。

 

おしっこは出ていないとのことで、腎臓の問題で尿の生成ができていない、いわゆる腎不全の最終段階にある無尿期ではなく、単純に水が飲めていないことで、体内にある少量の水分をうまく運用して生命維持をしている可能性を疑いました。

 

そして、診察開始の少し前に吐血のような症状があり、結構な量の血が出ていたこともあってか、舌色はかなり白く、出血性の貧血を伴っている様子でした。

 

今の状態に出血が重なったこともあり、さぶちゃんはぐったりしていたと考えました。

 

状態から、同日に検査で負担をかけることは避けた方がいいと考え、今までのデータを持って在宅緩和ケアプランを組み立てていくこととし、脱水補正ではなく投薬を目的とした皮下点滴を1日2回実施してもらうこととしました。

 

在宅緩和ケアプランを組む上で大切なことは、病状だけでなく、この犬猫と暮らすご家族様の環境などをすることです。

 

具体的には、生活環境や家族構成、誰がペットの看護や介護に協力してくれるのか、その人たちの日常のスケジュールなどです。

 

猫のさぶちゃんでは、まずは皮下点滴をご自宅で実施していただくために、皮下点滴のトレーニングをしていただきました。

 

1つ1つの手順を一緒に、ゆっくりと指導させていただきますので、初めての方でもご自宅で、家族内で皮下点滴を実施できるようになります。

 

道具をお渡しし、次回診察を3日後としました。

 

薬の効果がどこまで出るかにもよりますが、状態が悪くなってから内服薬がうまく飲ませられていなかったことを考慮すれば、少し状態が上がってくることが期待できると考えました。

 

再診(診察4日目)

 

そこには、元気さを取り戻したさぶちゃんがいました。

 

さぶちゃん2.png

 

本当にびっくりするくらいまで状態が上がっており、遊んでって言わんばかりに猫じゃらしのおもちゃを持ってきては、戯れてくれていました。

 

ふらつきも強く、お水も飲めていなさそうだった初診の時とは打って変わり、動きも俊敏にあり、ジャンプまでするようになったとのことでした。

 

水もちゃんと飲めているようで、体重も増え、毛並みもだいぶ改善しており、もう見た目が別の猫ちゃんのようでした。

 

ご飯もチュールだけでなくウェットフードを食べてくれるようにあり、少し軟便が出ましたが、その後良便に戻りました。

 

さぶちゃん3.png

 

在宅緩和ケアの可能性

私たちが得意とする「犬猫の在宅緩和ケア」では、末期症状だった犬猫の状態を少しでも楽にしてあげることで、体の不自由左から諦めていた行動を、犬猫たちの意思によってまた時間を与えられる可能性があります。

 

また、緩和ケアは治療ではないため、延命かどうかの問いには答えられません。

 

しかし、少しでも楽に余生を過ごさせてあげたいと考えた場合、緩和ケアは最良の選択肢になりうると考えています。

 

犬猫は言葉を話せないため、送られてくるサインをどう受け取り、どう判断していくかの全ては、ご家族様次第です。

 

最後の時間を、できる限り家の中で過ごさせてあげたいとお考えの場合には、在宅緩和ケアをお勧めします。

 

ご自宅の地域まで往診で来てもらえる動物病院、または往診専門動物病院があるかどうかを、事前に調べておきましょう。

 

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猫の乳腺腫瘍の多くは悪性です。

 

乳腺腫瘍に関しての記事はたくさんweb上に溢れていますので、もし犬猫の乳腺腫瘍に関する治療方法や外科の術式、抗がん剤の話や余命の話などは、是非そちらを探してお読みいただければと思います。

 

私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、病気を抱えたが、手術や抗がん剤などの攻めた治療を望みたくはないが、せめて残された時間を少しでも緩和的に過ごさせてあげたいとお考えのご家族様のお力になれます。

 

過去にも、乳腺腫瘍の記事を書いていますので、もしお時間がございましたら一読いただければと思います。

■乳腺腫瘍の高齢犬

■乳腺腫瘍末期の高齢猫

 

今回ご紹介する症例は、乳腺腫瘍を患った猫ちゃんです。

 

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【既往歴】

2021年2月10日に乳腺のしこりを認め、すぐに2次医療施設にて片側の乳腺全部と所属リンパ節の切除を行いました。

 

だいぶ痛そうな術後だったとのことでしたが、病気を乗り越え退院することがで、つい先日まで、いつも通り過ごせていたとのことでした。

 

定期検診も3ヶ月に1回、苦手な通院でしたが意を決して動物病院に通院し、血液検査、X線検査、超音波検査としっかりと診ていました。

 

直前の検査では問題なかったとされた中、その1ヶ月後の2023年4月3日夜に咳、ふらつき、食欲低下を認め、動物病院に行って再度検査してみたところ、肺に腫瘍病変を確認されました。

 

抗がん剤や外科手術はすでに不可とされ、自宅で見守るようにと内服薬と坐薬をもらいましたが、お薬を飲ませることができず、日に日に弱々しく、また咳も激しくなり、ふらつきも強くなってしまったため、もう在宅医療に切り替えてあげたいと考えたとのことでした。

 

【初診時】

普段から通院できる性格の猫ちゃんということもあり、診察にお伺いすると、スリスリしに出てきてくれました。

 

話しかけてくれて、撫でてとせがまれるのですが、その呼吸状態は荒々しく、急ぎ酸素環境の準備が必要であることと、この状態だと血液検査などのストレスがかかることは避けた方がいいとお伝えしました。

 

呼吸状態が悪い犬猫に対して、通常は酸素を嗅がせ、呼吸を安定させながら検査や処置を実施しています。

診療時には保定してもらうことが必須になりますが、当院では動物看護師を含めた複数のスタッフと一緒にお伺いしているため、診療の補助の全ては、基本的に必要ありません。

呼吸状態を管理しながらの保定業務は、訓練を積んだ専門チームに任せるべきですが、多くの往診専門動物病院が獣医師1人でお伺いしていることから、この業務をご家族様が担わなければいけません。

胸を強く押さえてしまうことで、呼吸を悪化させてしまい、最悪致命的なことになってしまうことを避けるためにも、もし往診専門動物病院を始めてご利用される場合には、必ず動物看護師が同行しているのかを確認するようにしましょう。

 

その場で酸素発生装置、酸素ボンベ、酸素ハウスの手配完了し、運用方法を簡単にご説明させていただきました。

 

翌日の診療までに全部が揃うこととなりましたので、詳しい運用方法はそこでご説明させていただくこととしました。

 

超音波検査にて特記すべき所見は認めませんでした。

 

処置は皮下点滴を実施したのですが、液体量を極力なくし、なるべく早く処置を完了させてあげることが優先であると判断しました。

 

猫ちゃんに特に多くみられる腎臓病など病気では、脱水補正の観点からも皮下点滴の輸液量をちゃんと多く入れます。

 

もちろん貧血(腎性貧血など)や心臓の状況、高血圧はどうなのか、そもそも皮下点滴に耐えられるのかなど、多岐にわたる情報整理を一瞬で行い、できる限り負担のない、かつ多めの量を投与してあげるよう専念します。

 

しかし、呼吸器疾患や腫瘍性疾患などでは、腎機能はそもそもダメージを受けていないケースが多く、その場合には少量であってもしっかりと腎臓が機能してくれます。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、その子がいかにして普段の慣れ親しんだ環境で、他に邪魔されることなく悠々自適に過ごさせてあげられるかを考えてあげたいです。

 

そのため、ご家族様だけで処置の全てを完結できるようなプランを構築することに、私たち往診専門動物病院は特化しています。

 

この日の診察では、過去の血液検査結果や既往歴、今までどんな経過を歩んでこられたかなどを幅広くヒヤリングさせていただき、明日の診療までの暫定的な診療プランを組みました。

 

【再診】

初診時とは変わり、足並みも軽やかであり、食欲も上がってきたとのことでした。

 

もちろん病気が治ったわけではなく、症状が緩和されただけとわかっているものの、昨日よりも元気そうな姿が本当に微笑ましかったです。

 

酸素環境を整える道具も全て揃っており、この日は酸素環境の構築および運用皮下点滴トレーニングの2つをご説明させていただきました。

 

呼吸状態から、まずは酸素運用方法を吹きかけによることで、日常コントロールとしました。

 

また、当院としておすすめしている酸素ハウスは、見栄えは良くはないものの、機能性重視でご紹介させていただいています。

 

酸素ハウス.jpg

 

 

呼吸状態に合わせて、酸素吹きかけから初めていき、酸素ハウス内での管理となっていきます。

 

酸素室内での管理となっても、掃除のタイミングやご飯のタイミングなどで酸素ハウスを開閉する必要があります。

 

その時に登場するのが酸素ボンベです。

在宅酸素ボンベ.jpg

 

わんにゃん保健室では、常に呼吸状態の悪化を想定した診療を心が変えており、常時酸素ボンベを数本揃えています。

呼吸状態が悪い犬猫、または検査や処置で呼吸状態が悪くなりそうな場合には、使用することにご同意いただいております。

 

酸素室内の酸素濃度が下がってきたら、酸素ボンベでブーストしてあげることで、酸素発生装置だけでの酸素コントロールよりも酸素ボンベを併用した方が、より利便性高く運用することが可能です。

 

そして、皮下点滴のトレーニングをしました^^

 

【まとめ】

今回のように、呼吸状態が悪い犬猫の症例で、いかにして呼吸状態を悪化させないのかが鍵になってくると考えています。

 

そのためには、詳しいヒヤリングと既往歴、今までの経緯や犬猫の性格など、詳細に把握しておくに越したことはありません。

 

今回の症例では、初診におおよそ2時間半ほどかかりましたが、この猫ちゃんの性格や病状をしっかりと把握できたこともあり、スムーズに診療に入ることができました。

 

乳腺腫瘍、特に猫ちゃんの乳腺腫瘍は悪性の可能性が高く、発見された時点で、すでに末期であるということはかなり多くあります。

 

まずは普段からのコミュニケーションの中で、乳腺にしこりがないかを入念に確認し、もしあった場合には、外科手術を選択するのか、または痛い思いをさせるくらいなら運命を受け入れ、在宅での終末期ケアにするのかを考えましょう。

 

保定業務は、呼吸状態が悪い犬猫においてかなり高度な洞察力が求められます。

 

健康診断程度であればまだしも、病気でもうぐったりしている場合には、動物看護師に保定業務が頼めるのか、必ず担当される動物病院に確認するようにしましょう。

 

往診専門動物病院のほとんどが、獣医師一人で運営しています。

 

動物看護師をアテンドしてくれるのか、往診専門動物病院が初めての場合には、必ず電話などで確認をとりましょう。

 

乳腺腫瘍は怖い病気です。

 

もし乳腺にしこりが見つかった場合には、まずは獣医師にご相談ください。

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在宅でリンパ腫と向き合う④

猫ちゃんとの暮らしは、わんちゃんとの暮らしと違い、お互いに独立した存在として生活を送られている方が多いように感じています。

 

しかし、最後が近づくに連れて、例外なく、人肌を恋しくなるのか、急に、または一段と甘えん坊になるようです。

 

①.png

 

最後はお皿から食べるなんてことはなくても、なぜかお母さんの手、お父さんの手からなら、少しだけ食べてくれるといった奇跡も見せてくれます。

 

その一口から、また力が湧き出てきて、ご飯を食べるようになったりとかもあり、奇跡っていつ起こるかわからないんだなと、非科学的なことに驚かされる毎日です。

 

今回の主役のみゆちゃんも、もうダメだと言われた2022年11月に、12月は迎えられないことを突きつけられながらも、そこからの快進撃はもう、その場にいるご家族様をはじめ私たち動物病院スタッフですら驚きを隠せませんでした。

 

リンパ腫は化学療法に反応する可能性が高いとされており、症状がコントロールされ、腫脹していたリンパ節や転移部位が小さくなっていることが見られれば、きっとどんどん攻めたくなると思います。

 

ただ、抗がん剤は通常の薬と違って、持ち合わせる副反応の強さが大きいものが多いです。

 

・・・今朝までは元気で、抗がん剤を投与した後、ぐったりしてしまった。

 

抗がん剤を継続を断念し、在宅医療にて緩和ケアを希望される相談電話で、最も多い事例です。

 

ぐったりしてしまうと、続けての抗がん剤投与はおろか、通院すら難しくなると思われます。

 

高齢猫だったみゆちゃんにとって、今回の在宅切替を選択されたことで高頻度での通院ストレス、待合室でのストレスなど、外出に伴うストレスの全てが軽減されたことだと思います。

 

診察の時は、必ずいつものかまくらの中にいてくれて、検査・処置が終わると、お母さんの寝室に移動し、僕らがちゃんと帰るのかを見定めるように、玄関の方をじ〜っと見つめていました。

 

採血や超音波検査は、在宅であったとしても全くストレスのない検査ではなく、保定されるストレスや針刺、お腹を押されるなど、通常の動物病院と同じようなストレスはあります。

 

しかし、その後すぐに好きな場所で自由に過ごせることで、きっと大きなストレスになることなく、2週間に1回の検査にも耐えられていたのだと考えています。

 

普通なら嫌がって、お腹に力が入り、腹圧が上がてくるのですが、みゆちゃんは腹圧を抜いてくれて、とてもリラックスしているような姿で検査を受けてくれました。

 

みゆちゃんはきっと、全部わかっているんだなと思いました。

 

再診113日目

 

この日はいつもの検診を予定していましたが、少し機嫌が悪そうな感じでした。

 

もしかしてと、可視粘膜と言われる口腔内粘膜や皮膚の薄い場所などを確認したところ、普段よりも黄色っぽい所見を確認しました。

 

おしっこの色も濃くなっているようで、おそらく黄疸が出てきたと判断しました。

 

採血の時にシリンジ(注射器)に入ってくる血液の性状に、感覚的に体がお別れの準備に入ったような感じを受けました。

 

そしてこの日、初めて鳴き声を聞きました。

 

みゆちゃんの声って、こんな声なんだって、変な話、その声が聞けて嬉しかったです。

 

検査が終わると、いつもならスタスタ歩いて寝室に向かいますが、この日はそんな体力はなく、保定が終わってもその場から動けずにいました。

 

みゆちゃんをお母さんが抱っこしてくれたのですが、お母さんにも怒っていました。

 

検査はずっと嫌だったけど、我慢してくれていたんだよね。

 

我慢して受けてくれてありがとね。

 

お薬も、点滴も、全部受け入れてくれて本当にありがとね。

 

この日の採血をした際に、極度の貧血が起きていることを感じ、同日酸素発生装置を手配しました。

 

翌日には届くことで酸素レンタル会社に相談できましたので、翌日の夜に再診を組み、この日を終了としました。

 

ただ、今夜が山であることをお伝えし、今日は一緒に過ごしていただくことをお勧めしました。

 

再診114日目

 

酸素発生装置がご自宅に届き、なかなか診療でお会いできなかったお父さんにも、久しぶりにお会いすることができました。

 

酸素発生装置の運用方法は、病気だけでなく、その子その子の生活環境や性格を考慮していくことが大切です。

 

酸素ハウスのサイズや素材、形状など、考えなければいけないことがたくさんあるのですが、多くの場合が急を要するため、相談しながらも最初の走り出しとしてのハウス設計をその場で決めていきます。

 

そして、知っておいていただきたいことは、酸素ハウスなんか誰も入りたいわけがない、と言うことです。

 

全く必要のない同居の犬猫にとっては、なぜか格好の巣穴になるのか、その中を好むと言うことが多く見られますが、本当に必要な犬猫ほど、酸素ハウス内での管理を嫌います。

 

今回は、みゆちゃんが好きなかまくらを酸素ハウスがわりになるようにDIYして、大体の酸素運用の運用骨格を知っていただきました。

 

結局、酸素ハウス内ではなく、ホースを嗅がせてあげる形になったようです^^

 

②.png

 

 

 

 

 

2023年3月15日

 

お母さんに頭を撫でてもらいながら、生涯に幕を閉じました。

 

苦しそうな素振りもなく、ただただ安心しながらゆっくりと呼吸が止まっていったとのことでした。

 

在宅医療切り替えは特別なことではなく、人と同じようにごくごく自然の流れです。

通院させられるうちは通院をさせてあげ、もう難しいと判断したらすぐに切り替えられるように、通院できるうちから将来を見据えて、最後の先生を選択しておくこと、是非全ての飼い主様に推奨させていただきます。

 

小さな箱になったみゆちゃんの横には、綺麗な桜の花が優しく咲いていました。

 

みゆちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

江本宏平 スタッフ一同

③.png

 

 

前回までの経過は、以下から読めます。

・在宅でリンパ腫と向き合う①(初診〜暫定方針決定まで)

・在宅でリンパ腫と向き合う②(再診からの経過変化とプラン変動)

 

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在宅でリンパ腫と向き合う③

高齢猫のみゆちゃんのブログの続きが書けましたので、是非読んでください^^

 

IMG_2904.JPG

 

リンパ腫を抱え、余命半月と言われて在宅切替を行なった2022年11月中旬。

 

本日は2023年3月3日のブログです。

 

不思議と、在宅医療に切り替えると、ストレスも少なくなるためなのか、みんな表情が穏やかになるような気がします。

 

みゆちゃんは、出会った昨年の11月から、ずっとおっとりした性格でしたが^^

 

前回までの続きは、ブログの最後にリンクを貼っておきますね^^

 

リンパ腫は、猫ちゃんが抱える病気としては比較的多いものであり、その病気から見られる症状の経過も、ある程度の道筋が決まっています。

 

もちろん、どの道を行くのかは、誰にもわかりません。

 

しかし、どんな道に進んだとしても、その時にどう対応して行くのかを事前に準備しておくことで、少しでも何かできる未来を目指すことが大切です。

 

もっというのであれば、知るだけでできなくてもいいです。

 

覚悟しておくことで、もし本当の最後の瞬間に立ち会えた瞬間、取り乱すだけでなく、少しでも心温かく過ごせればと、いつも願っています。

 

高齢猫のみゆちゃんのお話の続きが書けましたので、是非読んでください^^

 

本ブログの続きとなる再診は、おそらく2023年3月17日になると思います。

 

本日2023年3月10日、これから診察に向かうのですが、その前にあげさせていただきます。

 

 

再診96日目

この日はサラダチキン、カツオと一緒に、ご飯を少し食べているようだとのことでした。

 

便は相変わらず緩いが、体重も2.9kgから3.05kgまで増えたとのことでした。お水はお風呂場の洗面器から飲んでいます。

 

ただトイレに関しては、トイレには行くのですが、なぜかトイレの外にしてしまうという状況とのことでしたが、排泄できているということをとてもポジティブな視点で捉えてあげることしているとのことでした。

 

少しだけ嘔吐がありましたが、その後も大きく体調を崩すことなく、この日を迎えられたとのこと。

 

本日も血液検査と超音波検査を実施し、血液液検査結果、超音波検査結果通しても、大きな変化は認めませんでした。

 

病気が進行して苦しそうにしているというよりは、お迎えが来るその日を、ただマイペースに家の中で過ごしているという印象でした。

 

検査を終えると、いつも寝室に行き、玄関を眺めています。

 

また来週、その日が来ることを祈って、診察を終了としました。

 

 

再診106日目

状況は一進一退。

 

寝ている時間もさらに長くなり、ご飯もなかなか食べられなくなってきました。

 

数日前には複数回の水下痢、嘔吐もあり、もう覚悟したとのことでした。

 

しかし、たまたまあったカニを少し上げてみたところ、パクパク食べてくれ、それを切り目に鰹節のスープをのんでくれました。新しいものであれば、まだまだ食欲を出してくれるようです^^

 

高齢期、感覚的には慢性疾患の後半、特に15歳以上では、もう体重が増えることは少ないように感じています。

 

人間もそうですが、徐々に痩せていくものなんだなと、自然の摂理を感じつつも、文明の力である知識を用いて、吸収率の高いもの、栄養価が高いものを中心に上げるようにお伝えしています。

 

ただ、緩和ケアの後半からは、もうそんな話ではなく、なんでもいいので食べたいものを探してあげるようお伝えします。

 

ステーキが好きなら焼いてあげてください。

 

お刺身が好きなら最高のお刺身を準備してあげてください。

 

生クリームが好きなら舐めさせてあげてください。

 

何も悪いことはないです。

 

この子たちは、私たち人間が選んだものの中からしか、晩餐を選ぶことができません。

 

ご家族様側で療法食しかダメだと規制してしまっては、選びたくても選べないという状況を作ってしまいます。

 

お別れを覚悟したのであれば、個人としては、是非好きなものを探してあげ、一口でも食べてくれることを祈っています。

 

この日は超音波検査のみを実施し、胸水や腹水が溜まってくる頃かと嫌な気持ちも抱えつつ評価したのですが、この日も特別な変化を認めず、データ上は良好となりました。

 

また来週。

 

会えることを信じてるよ^^

 

前回までの経過は、以下から読めますので、どうぞ!

・在宅でリンパ腫と向き合う①(初診〜暫定方針決定まで)

・在宅でリンパ腫と向き合う②(再診からの経過変化とプラン変動)

 

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今回は、前回に引き続き、みゆちゃんのその後の経過についてです。

 

前回までの内容は、こちらの記事 から読んでいただけます^^

 

さて参りましょう。。。

 

猫ちゃんの腫瘍性疾患といえば、まず考えなければいけないのがリンパ腫です。

 

愛猫がリンパ腫を抱えた場合の主な流れは、大まかに以下の流れです。

 

1. 違和感に気づく or 健康診断で発覚

2. 動物病院にて腫瘍を疑う部位の細胞診

3. 細胞診で腫瘍を疑う結果だったため、麻酔をかけた外科処置が可能か判断するための精査(CTなど含む)

4. 腫瘍切除による病理検査

5. 確定診断と方針決定(腫瘍外科or/and 放射線 or/and 抗がん剤 or/and ・・・)

 

2までは負担が比較的少ないですが、3、4は麻酔が必要であり、また外科も実施となると、その身体的負担は膨大です。

 

そして、5から下、抗がん剤。

 

抗がん剤は、よく運転に例えられます。

 

通常の薬を普通車で一般道を走っているような表現とするのであれば、抗がん剤はF1レースのような印象です。

 

うまくいっているときはいいですが、トラブルがあった時の副反応は、通常の薬とは比べ物にならないくらい、ガクッと下がってきます。

 

そして、その対処に十分な対処ができるほどの抗がん剤に対する専門的な知識を持ち、副反応が出た際に理論的に向き合える獣医師がそこまで多くない、ということを知っておかなければいけません。

 

もし抗がん剤をしないならば、腫瘍外科は希望しないのであれば、3から下は必要ないと考えています。

 

積極的な治療よりも、緩和的にケアしてあげたいのか。

それとも2次医療センターなどに進み攻めていきたいのか。

 

そうは言っても、いきなり緩和ケアを選択するのは、少し薄情な印象もあるようで、初代の犬猫に対しては、攻める選択をされる方が多い印象です。

 

うまくいけばいいのですが、もし治療の過程で体力がもたないと判断されてから、また方針を切り替えて緩和ケアに切り替えることも可能です。

 

その時その時の、あなたの心を信じて突き進みましょう。

 

さて、長くなってしまいましたが、ここからは前回の続きです。

 

初診が終わり、初回処置に対してどこまで反応を示してくれたのかを評価する2日目からです。

 

IMG_2407.jpg

 

再診2日目

嬉しいことが起きました。

 

ほぼ寝たきりだったみゆちゃんは、昨日の皮下点滴後1時間半くらいで元気になってきたとのことでした。

 

今日は家の中をふらつきが多少ありながらも、スタスタ軽快に歩いて見せてくれました。

 

ほとんどなくなってしまった食欲も、一気に上がってきて、64gも食べてくれたと、嬉しそうにお話してくれました。

 

もちろんこれは薬の効果かもしれませんが、みゆちゃんに残された生命力の強さを目の当たりにしました

 

11月中か、もっても年内とされていたみゆちゃんでしたが、この改善幅を見る限り、もしかしたらまだ...って、その場にいた誰もが信じたくなりました。

 

このまま状態が上がってくれるかもしれないと判断し、同日ご家族様に皮下点滴指導をじっくりと入れさせていただき、今後はご家族様だけで皮下点滴が実施できるようになっていただきました。

 

再診3日目

昨日よりもさらに状態が上がり、今後のことを見据えて、血液検査と超音波検査を実施することとしました。

 

状態が改善したとはいえ、病気が病気なこともあるので、検査には十分な人数を揃え、酸素化しながら呼吸状態の悪化を防ぎつつ、保定していきました。

 

通常の猫ちゃんは、保定されるのがとにかく嫌いです。

 

ところが、みゆちゃんは全く嫌がらずに、身を委ねてくれました。

 

採血中、エコー検査中、一切嫌がる素振りも見せず、ただ横になって協力してくれました。

 

そして医薬品を本日お渡しとし、明日からはご家族様だけで皮下点滴をしていただくこととしました。

 

次回の診察は、3日後とし、状態が安定していれば4日後、7日後と間隔を延ばしていきました。

 

この時点では、1週間に1回程度検査を実施し、急激な数値変化が起こらないかを、慎重にモニタリングさせていただいていました。

 

IMG_1771.JPG

 

再診49日目

状態も安定してきていることから、注射プランから内服薬プランへの変更を検討させていただきました。

 

もし飲ませるのが難しかった場合には、注射薬プランにすぐに戻せる体制を整えつつ、内服に変更していきました。

 

内服薬6種類を全て苦くないものから選定し、シロップにして飲ませていただきます。

 

もし飲ませられれば、ここからは2週間に1回の検査までに減らすことができます。

 

うまくいくことを祈っていたところ、ちゃんと飲ませられたとの報告を受け、一安心でした。

 

このままの状態が長く続くことを、心から祈っていました。

 

再診71日目

少しずつ食欲が下がってしまったこともあり、内服薬プランのまま、1種類だけ皮下注射として追加処方させていただきました。

 

注射薬の量が少ないこともあり、ロードーズという細く小さい注射器に吸って準備することができましたので、刺される側も、刺す側もストレスが最小限で済みます。

 

インスリン注射の時に、よく使用される、細い針が注射器と一体になったものです。

 

状態が少しでも上がってくれることを信じ、次回も14日後の診察としました。

 

再診85日目

さらに下がってしまい、もう食欲増進の軟膏が反応しないようになりました。

 

基本は軟便だが、水っぽくなってしまったおきに下痢止めの注射を入れると、しっかりと反応してくれるとのことでした。

 

なお、下痢が止まっている日は調子がいいようです。

 

体重も少し下がっていましたが、直前の一番体調が悪そうだった日からは少し増えていました。

 

ヒレカツの中身、エビフライの中身、しらす、アジ、そして金目鯛...

 

食べてくれるなら、みゆちゃんが食べたいのなら、なんでもいいです。

 

キャットフードだけにこだわって食べられないのであれば、好きなものを好きなだけ食べてもらった方が、何倍もいいと考えています。

 

この日の超音波検査では、腸管の動きが普段よりも低下していて、拡張傾向のような所見を認めました。

 

消化管への浸潤が始まったのかもしれないと考えつつも、まだご飯を食べれば便が形成され、下痢止めにも反応を示すので、そこは様子見とさせていただきました。

 

この日から、内服薬を一部注射薬へと移行し、注射薬プランと内服薬プランを併用としました。

 

そして、診療間隔も、2週間に1回ではく、週1回とし、病状の変化を捉えていきます。

 

IMG_1764.JPG

 

今日のまとめ

医薬品を使用することで、状態が下がりすぎていない状況であれば、経験上2度だけ不快な状態が軽減し、少し楽そうに過ごしてくれることが多いです。

 

ただ、医薬品は万能ではないし、その効果は有限であり、必ず終わりはやってきます。

 

いつ体調が大きく下がってもおかしくない状態ではありますが、できることを一緒に頑張っていきましょう。

 

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猫ちゃんの病気というと、きっと多くの方で、「腎臓病」という言葉が最初に浮かんでくると思います。

 

もちろん、ほとんどの猫ちゃんで腎臓病を抱えますので、定期的な検査をしてあげることを推奨します。

 

ただ、猫ちゃんの多くで通院を苦手としているため、健康診断目的に通院させて、帰宅後にぐったりさせてしまうくらいなら、いっそのこと往診で在宅診療による健康診断を選択することも可能です。

 

往診では、血液検査、超音波検査、尿検査など、大型機器を必要としない検査は実施可能です。

 

また、検査は安全性を確保するため、獣医師と動物看護師1〜3名ほどでお伺いさせていただきます。

 

何事も手際よくスムーズに実施することで、猫ちゃんにかかるストレスを最小限まで下げてあげることを大切にし、開放後、速やかに安心できる場所に隠れさせてあげられるよう、動線確保にもご協力をいただいています。

 

本日は主疾患が腎臓病でははなく、私たち人間と同じ、旅立ち要因として最も多く挙げられる、腫瘍性疾患についてです。

 

かかりつけ動物病院にて、膵十二指腸リンパ節のFNA(細胞診)を実施し、大細胞性リンパ腫と診断された日本猫のみゆちゃんの在宅医療についてのお話です。

 

初診が2022年11月で、年越しは難しいとされていた中で、2023年1月初旬までは安定してくれて、そこから少しずつ状態が下がりつつも、2月13日現在、今日もお母さん、お父さんとゆっくりと過ごせています。

 

IMG_1750.jpg

 

初診時の問診内容

2022年3月くらいから徐々に体重が減少してきた感じはありましたが、まだまだ全身状態は良好でした。

 

この時通院していた動物病院では、体重減少に対して相談したところ、特別何もせずに様子見とされたとのことでした。

 

しかし2022年8月になると体調不良を訴え始め、ただ本格的に食欲がなくなってしまい、ご飯を食べられなくなってきたのは2022年10月9日からとのことでした。

 

2022年11月5日に状態がおかしいと感じ、11月7日に少し大きめの動物医療センターに転院し検査したところ、膵十二指腸リンパ節が腫脹していると指摘され、細胞診の結果悪性のリンパ腫と言われたとのこと。

 

このから2日間連続で抗がん剤治療を通院で行い、また毎日通院させて皮下点滴を打つようプランとされたとのことでした。

 

内服薬を4種類処方されており、ただ内服薬は状態が悪い中でも、まだ元気なうちしか飲ませられないため、今後どうすべきか悩まれていたとのことでした。

 

2022年11月17日、本来であればこの日も通院の予定でしたが、ぐったりとしている姿を見て、もう皮下点滴のために毎日通院することは体力的に難しいと判断し、在宅に切り替えて看取ってあげたいと考え、往診を希望されました。

 

 

初診時の様子

ほぼ寝たきりのみゆちゃんですが、まだお家の中を歩く体力はありそうでした。

 

食欲はもう無さそうで、排便もずっとできていませんでした。

 

それでも、お水は自分から飲みに行けて、おしっこも1日に3回は自力でトイレでできていました。

 

呼吸状態も安定しており、咳もありませんでした。

 

ただ、初診前夜に嘔吐をしてしまったとのことでした。

 

みゆちゃんが抱えている病気はリンパ腫であることから、今後もしかすると胸水が溜まってきてしまう可能性があります。

 

初診時検査

当院では、初診時に全身状態を把握するためにも血液検査を含めた、各種検査を実施しています。

 

しかし、今回は前日の検査結果が手元にあることもあり、大きく変化が出ていないとと判断したため、それらのデータを用いて診療プランを決定する、初回カウンセリングとして診療を進めました。

 

診断がついている病気であったり、また過去の検査結果が数日前のものであったりする場合には、無理に検査して負担をかけるより、まずはそのデータを持って今後のプランを組み立てたほうがいいとする場合があります。

 

ただ、もちろん検査が全てではないですが、できれば検査をしてあげたいと考えています。

 

とはいうものの、在宅での検査であっても、保定や捕獲などによるストレスは、多少なりともかかってしまうものです。

 

しかし、移動を伴わないため、検査・処置後に好きな場所にすぐ隠れられるという大きなメリットがあるので、通院が苦手な犬猫には、往診はおすすめです。

 

診療を進める上で、現状把握を優先すべきか、過去のデータと今得られる視診や望診、一般身体検査から得られたデータのみで診療を進めていくべきか、常に葛藤しています。

 

処置

今回みゆちゃんは、初回カウンセリングとして状況を判断し、皮下点滴に6種類の医薬品を混ぜて投与しました。

 

また、腫瘍性疾患であり、脱水補正のための皮下点滴ではないので、投与量も20ml/kg未満の50mlとしたこともあり、処置中もあまり嫌がることなく、静かに受けてくれました。

 

IMG_1771.JPG

 

今後のプラン

まずは3日間連続、1日1回の往診とし、状態に合わせて医薬品の量や種類を調整することとしました。

 

なお、内服薬は全部中止としました。

 

先述した通り、猫ちゃんで内服薬を飲めるのは、ほんの一部であり、また状態がまだいい時までです。

 

状態が下がってしまった時からは、できる限り注射にできる薬は注射で投与してあげ、どうしても内服でしかダメなものだけを経口投与するようにしましょう。

 

お薬の優先順位を立てて、全部飲めなくても良しとする心構えが大切になってくる時期です。

 

少しでも状態が安定し、お父さん、お母さんと一緒に過ごせる時間を今よりも快適にできればと祈りました。

 

なお現段階では、物理的な抜去は痛みを伴うこともあり、積極的に胸水抜去はしない方針としています。

 

胸水抜去の時には、特に猫ちゃんでは、往診だと鎮静麻酔をかけることが多いです。

 

そのくらい、肋間を針が貫くときに痛みがあるということです。

 

今回のまとめ

今回のブログでは、リンパ腫を抱えた猫ちゃんの在宅医療の初診について書かせていただきました。

 

いつまで攻めるべきなのか、抗がん剤を使用することが正しいのか、やめてしまうことが間違っているのか。

 

答えなんてありません。ただ言えるのは、最終的に判断するのはご家族様、ということです。

 

ご家族様と愛猫、愛犬との間には、深くて長いストーリーが存在します。

 

もしかしたら、今までの経緯の中に、今この段階で緩和に使える出来事があるかもしれません。

 

在宅での緩和ケアは医療面だけでなく、生活環境や介護面など多岐にわたる視点から実施することで、より良い診療プランを組むことができます。

 

そのため、初診ではご家族様の声をしっかりとヒアリングすることに重点を置いて、診療をおこなっています。

 

どんな悩みがあり、今この子たちに対して何をしてあげたいのか、現実問題としてどこまでできるのか、など、まずはお話をお伺いさせていただき、一緒に考えていきましょう。

 

次回は、在宅で【リンパ腫と向き合う②(その後の診療経過)】です^^

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