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猫が「腎不全」と診断されたとき、多くの飼い主さんがまず勧められるのが「皮下点滴(皮下補液)」です。

最初は少しでも良くなることを信じて、慣れない注射にもチャレンジし、献身的にケアをされる方がほとんどです。

けれど時間が経つにつれ、ふとこんな疑問が浮かんでくることはないでしょうか?

「この点滴、いつまで続けるのが正解なの?」
「最近、苦しそうに見えるのは気のせい?」
「点滴が本当にこの子のためになっているのかな...」

実はこうした悩みは、腎不全の猫と向き合う多くのご家族が抱える共通のものです。

特に高齢の猫や末期の腎不全に差しかかると、「点滴のやめどき」がひとつの大きなテーマになってきます。

この記事では、「皮下点滴をいつまで続けるべきか?」という疑問に向き合いながら、
猫ちゃんの体調やご家族の気持ちに寄り添った在宅緩和ケアの考え方や、
往診という選択肢についてやさしく解説していきます。

「大切なこの子と、後悔の少ない時間を過ごしたい」
そんなあなたのために、少しでもヒントとなる情報をお届けできれば幸いです。

目次

第1章|腎不全と診断された猫の飼い主さんへ

猫の慢性腎不全(CKD)は、高齢猫によく見られる進行性の疾患です。「よく吐く」「水をよく飲む」「痩せてきた」「口をくちゃくちゃしている」など、日常のちょっとした変化が、腎不全の初期サインであることも少なくありません。

初期症状は見逃されやすい

腎臓は"沈黙の臓器"とも呼ばれ、かなり悪化するまで目立った症状が出にくい臓器です。
そのため、飼い主さんが異変に気づいたときには、すでに病気が進行しているケースも多いのです。

たとえば、以下のような変化が見られた場合は要注意です。

  • 食欲の低下や体重の減少
  • 水をよく飲む、尿の量が増える(多飲多尿)
  • 吐き気、口臭、元気の低下

こうしたサインに気づいたら、なるべく早めに血液検査などで腎機能を確認することが大切です。

治療=完治ではないことを知っておく

慢性腎不全は「治す」病気ではなく、「うまく付き合っていく」病気です。
つまり、完治を目指すのではなく、症状をコントロールしながら生活の質(QOL)を維持していくことが
治療の目的となります。

この視点を持っておくことで、治療の選択肢やケアの方針をより柔軟に考えられるようになります。

長期管理における「選択」の重要性

腎不全の治療やケアは長期にわたることが多く、
「通院を続けるかどうか」「皮下点滴を自宅で続けるか」「どこまで治療を頑張るか」など、
ご家族が"選択"を迫られる場面が何度もやってきます。

そのときに大切なのは、「何が正しいか」ではなく、
"この子とどう過ごしたいか"を軸にした選択です。

次章では、皮下点滴の役割と正しい理解についてお話していきます。
点滴が持つ意味と限界を知ることが、今後のケアの判断軸になります。

第2章|皮下点滴の役割と効果を理解する

腎不全と診断された猫にとって、皮下点滴(皮下補液)はとても一般的なケアのひとつです。
しかし、「とりあえず毎日やりましょう」と言われたまま、
本来の目的や意味を知らずに続けている飼い主さんが多いのも事実です。

ここでは、皮下点滴が持つ役割とその効果について、
改めて整理しておきましょう。

脱水の改善と老廃物の排出

腎機能が低下すると、体内の老廃物をうまく尿として排出できなくなります。
その結果、体に毒素が溜まりやすくなり、食欲の低下や嘔吐、倦怠感といった症状が現れます。

皮下点滴で水分を補給することにより、

  • 脱水の改善
  • 尿量の確保(排泄のサポート)
  • 老廃物の排出促進

が期待されます。

点滴は"治療"ではなく"サポート"

多くの方が誤解しがちなのが、点滴=治療というイメージです。
ですが、**皮下点滴は病気を"治す"ものではなく、"症状を緩和するためのサポート"**です。

つまり、体のつらさを和らげるために行うケアであり、
腎臓の機能そのものを回復させるものではありません。

この認識を持つことは、今後の「点滴の続け方」や「やめどき」を考えるうえで、とても大切な視点になります。

点滴の方法や頻度は猫によって異なる

「うちの子には毎日やったほうがいいのか、週2回でいいのか」
「量はどのくらいが適切なのか」
----こういった疑問は、個々の猫の体調やステージに応じて答えが異なります。

たとえば、以下のように調整されることが多いです:

  • 初期(ステージ2〜3)...週2~3回、1回あたり100〜150ml程度
  • 末期(ステージ4)...毎日または1日おき、薬剤の投与も目的になることが多い
  • 終末期(ターミナルケア)...薬剤投与中心に切り替え、量を減らすことも

腎不全は"進行性の病気"であるため、
体の状態にあわせて点滴の内容を見直していくことが重要です。

第3章|皮下点滴を続けるうえでの落とし穴

皮下点滴は、適切に行えば猫の体をサポートできる心強いケア方法です。
しかし一方で、**「続けていれば安心」「多ければ多いほどよい」**といった思い込みから、かえって猫の体に負担をかけてしまうケースも少なくありません。

ここでは、皮下点滴を続ける中で起こりうる注意点やリスクについてお伝えします。

過剰な点滴は、呼吸を圧迫することもある

皮下に入れた補液は、体内に徐々に吸収されます。
ですが、猫の代謝や腎機能が低下していると、吸収が間に合わずに体内に水分が溜まりすぎてしまうことがあります。

その結果:

  • 浮腫(むくみ)
  • 胸水・肺水腫(呼吸を圧迫する)
  • 嘔吐やぐったり感の悪化

といった症状につながることがあり、命に関わることも

点滴は「たくさん入れればよい」ものではありません。
その子の体調に合わせて、「適量・適頻度」で行うことが大切です。

点滴が"義務"になっていませんか?

毎日のように点滴を続けていると、
「今日もやらなきゃ」「この子のために頑張らないと」と、
気づけば"目的"がすり替わっていることがあります。

  • 点滴をやること=自分の使命になっている
  • 本当は嫌がっているのに、我慢して続けてしまっている
  • 皮下点滴の量・頻度を調整すべき時期なのに、そのままにしている

...そんな状況になっていないか、一度立ち止まって見つめなおすことも大切です。

自宅だけで続けるには限界がある

皮下点滴は自宅でもできる反面、
「このままで本当に大丈夫?」「やり方あってるのかな...?」という不安が積もっていくものです。

加えて、猫の体調は日々変わります。
昨日までと同じ量が、今日からは"過剰"になる可能性もあるのです。

そんなときは、往診による診察や、緩和ケアの視点からの見直しが有効です。

第4章|皮下点滴の"やめどき"とは?

猫の腎不全において、皮下点滴は重要なケアのひとつですが、
病状が進行する中で、**「このまま続けていていいのか?」**と悩む時期がやってきます。

ここでは、点滴のやめどきを判断するヒントをお伝えします。

点滴をやめる=諦めること、ではない

多くの飼い主さんが「点滴をやめるなんて、見捨てるようで怖い」と感じます。
ですが、点滴の中止は"愛情をやめる"ことではなく、"方法を変える"選択肢のひとつです。

特に、末期や終末期では

  • 点滴の吸収が悪くなっている
  • 水分が排出されず、胸水や肺水腫のリスクがある
  • 猫自身が点滴を強く嫌がっている

といった状況が起こることがあります。

そのようなとき、「苦しまずに過ごすこと」を優先する判断は、猫の尊厳に寄り添う大切なケアです。

やめる目安となる"体のサイン"

以下のような変化が見られたときは、点滴の見直し時期に入っている可能性があります:

  • 皮膚の吸収が悪く、点滴が残りやすくなっている
  • 点滴の直後にぐったりしてしまう
  • 呼吸が浅く、早くなっている(胸水・肺水腫の可能性)
  • 排尿量が極端に減っている(体外に出せない状態)

こうしたサインを見逃さないためにも、往診などでの定期的な診察が非常に重要です。

点滴に代わるケアの視点を持つ

点滴をやめたからといって、何もできなくなるわけではありません。
むしろ、その子にとって今必要なケアを"再構成"するタイミングです。

  • 吐き気を抑える薬の注射
  • 食欲が出るような工夫(薬、環境、フードの変更)
  • 安心して過ごせる空間の整備
  • 痛みや不快感の除去

こうしたケアを行うことで、点滴をしなくても"穏やかに生きる時間"は十分に作れます。

第5章|点滴の終了後も、できるケアがある

皮下点滴をやめる判断をしたあとも、
飼い主さんにできること、支えられることはたくさんあります。
むしろ、点滴という"医療的なケア"が終わったからこそ、
"生活そのもの"に寄り添ったケアが大切になってきます。

水分補給を別の方法でサポート

点滴をしなくても、水分を補う工夫は可能です。

  • ウェットフードやスープ仕立てのごはんを活用
  • 少量ずつでも、自力で水を飲める環境を整える
  • 自動給水器やぬるめの水など、好みに合わせた工夫を

飲水量や脱水サイン(歯茎の乾き、皮膚の張り)に注意を払いながら、
無理のない範囲での水分管理を心がけましょう。

不快な症状をやわらげるケア

点滴をやめるというのは、"体にやさしい生活"を意識するタイミングでもあります。
その子が少しでも穏やかに過ごせるように、症状緩和のための工夫をしていきましょう。

  • 吐き気止め、食欲増進薬などを注射やスポット投与で取り入れる
  • 体が冷えないように保温をする
  • ストレスがかからない環境(静かで安心できる空間)を整える

これらのケアは、"在宅緩和ケア"の視点からとても重要です。

「見守る」ことも立派なケア

点滴や治療のような"わかりやすいこと"がなくなると、
「何もできていないのでは...」と不安に思う飼い主さんは少なくありません。

でも、そばにいて見守ること、撫でてあげること、話しかけてあげること----
それらすべてが、猫にとっては安心をもたらす立派なケアです。

そして、「もう頑張らなくていいよ」と声をかけてあげることも、
最期までその子を支える"優しさ"のひとつだと私は思っています。

第6章|"やめどき"は1人で決めなくていい

皮下点滴をやめるかどうかは、非常に繊細で悩ましい判断です。
「続けていいの?」「やめるのは正しいの?」と迷いながら、
ひとりで苦しんでしまう飼い主さんも少なくありません。

でも本来、"やめどき"はご家族だけで抱えるものではないのです。

獣医師と一緒に考えるべきタイミング

点滴の継続や中止を迷ったときは、
獣医師と一緒に体の変化を見ながら判断することが基本です。

  • 点滴後の様子に変化はあるか
  • 呼吸状態や浮腫はどうか
  • 吸収が悪くなっていないか
  • 皮下点滴以外の方法が望ましい段階か

こうした点を、診察や検査結果をもとに総合的に判断していく必要があります。
特に、往診での診察なら、実際の生活環境を含めてケアプランを立てやすいのもメリットです。

感情の揺れはあって当然

「やめる=見捨てる」ような気がして辛い----
「何かしていないと不安」という気持ち----

そんな飼い主として自然な感情の揺れは、誰にでも起こります。
でも、あなたの気持ちは、猫にきっと伝わっています。

だからこそ、"どうやったら苦しませずにいられるか"という視点での判断が何より大切。
それは「諦める」のではなく、「寄り添うケア」に切り替えるということなのです。

やめどきは、"その子の変化"が教えてくれる

正解が1つではないからこそ、
「いつかやめるときが来る」と心の準備をしておくことは、とても大事です。

そして、やめるタイミングは

  • 猫が点滴を嫌がるようになったとき
  • 点滴のあとに体調を崩すようになったとき
  • 水分の排出が追いつかず、胸水などが出はじめたとき

...そんな**"その子の変化"が教えてくれる**ことがほとんどです。

そのときに焦らず、家族と獣医師が一緒に最善の方法を選んでいけるように、
日々の観察と対話を大切にしていきましょう。

第7章|"もうやらない"と決める強さ

皮下点滴を続けてきたご家族にとって、
「もう点滴をやらない」と決めることは、想像以上に勇気がいることです。

でもその決断には、大きな優しさと責任、そして"覚悟"が宿っています

「頑張らせる」から「寄り添う」ケアへ

点滴を続けることで、
「まだ頑張ってくれてる」「何かしてあげられている」という気持ちになるのは自然なことです。

けれど、病気が進行し、

  • 体が点滴を受け止めきれない
  • 水分の排出ができず、呼吸が苦しそう
  • 点滴自体がストレスになっている

という状況になったとき、
"やめること"が最もやさしい選択になることもあります。

それは「投げ出す」のではなく、
"頑張らせる"ケアから、"寄り添う"ケアへの切り替えなのです。

「やめた後」のケアこそ、その子らしさを支える

点滴をやめたからといって、できることがなくなるわけではありません。

むしろそこからは、

  • 食事や水分のサポート
  • 呼吸や痛みのコントロール
  • 不快感を減らすための工夫
  • ご家族のぬくもりの中で過ごせる環境づくり

など、"その子が安心して過ごせる毎日"を支えるケアが主役になります。

点滴という選択をやめるのは、最期までその子を大切に思っているからこそできる判断でもあります。

あなたのその決断は、愛のかたち

「やめる」という選択には、後悔や迷いがついてくるかもしれません。
でもその迷いの背景には、"もっと一緒にいたい"という深い愛情があります。

どうか、ご自身の判断を責めないでください。

点滴をやめる"という選択も、
"その子の苦しさを取り除きたい"という想いから生まれた、
大切な愛のかたちのひとつなのです。

第8章|皮下点滴をやめても、後悔しないために

「やめてよかったのか」
「もっとできることがあったのではないか」
----皮下点滴をやめた後、飼い主さんが感じる後悔や不安は、とても自然な感情です。

でも、"後悔しない選択"とは、最善を尽くしたかどうかではなく、最善を"考えようとしたか"どうかだと、私は思います。

"点滴をやめるかどうか"ではなく"何を大切にしたいか"

やめる・続ける、の二択に悩むのではなく、
「その子のどんな時間を大切にしたいか」を考えることが、後悔を少なくする鍵になります。

  • 穏やかに過ごせること
  • 苦しまずに眠るように旅立てること
  • 家族みんなで見守れること

そうした"願い"が判断軸になれば、点滴の有無ではなく、
あなたの中に「やる理由」「やめる理由」がきちんとあることが後悔の少なさにつながります。

そのときどきで「正解」は変わっていい

「正しい選択ができなかった」と感じることがあるかもしれません。
でも、体調も、気持ちも、状況も日々変わる中で、"揺れながら出した答え"に正解も間違いもありません。

  • 昨日はやると決めた
  • 今日はやめると感じた
  • 明日はまた、やりたくなるかもしれない

それでいいのです。

1回の決断がすべてではなく、毎日向き合っていること自体が、その子にとっての支えになっています。

「見送ったあと」も、あなたの優しさは残ります

点滴をやめたことも、最期の時間を一緒に過ごしたことも、
すべてがあなたの優しさの延長にあります。

そして、その優しさは、見送ったあとも確かにその子に届いていると、私は信じています。

だから、どうか自分を責めずに、
「ありがとう」「よくがんばったね」「一緒にいられてよかった」
そんな言葉を、自分自身にもかけてあげてください。

まとめ|皮下点滴をやめる、その前に考えたいこと

猫の腎不全における皮下点滴は、
病気の進行やその子の体調、生活環境にあわせて「続ける・やめる」を柔軟に見直すべきケアのひとつです。

特に老猫や末期の腎不全では、点滴の目的が「治療」から「症状の緩和」へと変わっていきます。

  • 点滴=延命ではありません
  • やめること=諦めることではありません
  • 点滴の"やりすぎ"が体を苦しめてしまうこともあります

大切なのは、ご家族が"その子らしく過ごす時間"を一番に考えてあげること。
その視点から、「今どうするのがいいのか」を一緒に考えていくことです。

どのタイミングでやめるか。どうやって続けるか。
その選択に"正解"はありません。

けれど、選択をする過程にこそ、飼い主さんの愛情が詰まっています。

その子とご家族が、最期まで穏やかに過ごせるように。
どうか一人で抱え込まず、獣医師や専門家と相談しながら進めていきましょう。

関連ブログ記事:猫の腎不全、皮下点滴はいつまで続けるの?

「最近よく吐くようになった」「やせてきた気がする」「水をよく飲むようになった」----そんな猫ちゃんの変化に気づいた飼い主さんへ。

それは、もしかすると慢性腎不全(CKD)のサインかもしれません。

慢性腎不全は、特に中高齢の猫に多く見られる、ゆっくりと進行していく病気です。はっきりとした症状が出にくいため、「ただの老化かな」と見過ごされることも少なくありません。
しかし、実は"気づいたときにはかなり進行していた"ということが多いのです。

診断を受けたばかりの飼い主さんにとって、「治療すれば治るのか」「何をすればいいのか」「点滴や薬は必要なのか」と、不安がたくさんあるのではないでしょうか。中には、「通院が難しいけれど、ちゃんとケアしてあげたい」と悩まれている方もいるかもしれません。

このブログでは、そんな飼い主さんに向けて、

  • 慢性腎不全の症状や仕組み
  • 病気の進行と治療の考え方
  • ご自宅でのケアや点滴のこと
  • 緩和ケアを取り入れるタイミングや意味

などについて、わかりやすくお伝えします。

"治療"だけではなく、"その子らしく穏やかに過ごすためのケア"という選択肢があること。
そして、それをご自宅でも実践できるという安心感を、ぜひ知っていただけたらと思います。

目次

第1章|症状から気づく猫の慢性腎不全

慢性腎不全は、ゆっくりと進行する病気です。
初期の段階では目立った症状が現れにくいため、「なんとなく調子が悪そう」「ちょっと元気がないかな?」といった、ささいな変化がサインになることもあります。

ここでは、飼い主さんが気づきやすい症状を中心に紹介します。

食欲の低下や体重の減少

「最近、あまりごはんを食べなくなった」「前より体がほっそりしてきた」----そんな変化がある場合、
腎臓の機能が低下し、老廃物が体に溜まってきている可能性があります。

特に、ウェットフードや好物にも反応が鈍いときは、消化器症状や吐き気が背景にあることも。
慢性腎不全の初期〜中期に見られることが多いサインです。

水をよく飲む、尿の量が増える(多飲多尿)

「お水を飲む量が増えた」「トイレの回数やおしっこの量が多くなった」----これは、
腎臓がうまく尿を濃縮できなくなっているサインです。

体が水分を維持できなくなっているため、代わりにたくさん水を飲むようになります。
この症状は比較的わかりやすく、飼い主さんが最初に異変に気づくきっかけになることも多いです。

口臭、吐き気、元気の低下

進行とともに、体に老廃物がたまってくると、尿毒症という状態になることがあります。
これにより、

  • アンモニアのような口臭
  • 吐き気や嘔吐
  • だるそうに寝てばかりいる
  • 鳴かなくなった・反応が鈍い

などの症状が現れます。

こうした状態になると、見た目にも「具合が悪そう」と感じられることが増え、受診される方も多いです。

大切なのは「なんとなく変だな」と思ったら受診を

腎不全は、血液検査や尿検査によって初めてわかることがほとんどです。

「このくらい大丈夫かな」「年のせいかも」と思わずに、気になる変化があれば早めに獣医師に相談することが、
早期発見につながります。

第2章|そもそも「腎不全」ってどんな病気?

「腎不全」と聞くと、どこか重い響きがあるかもしれません。
実際、猫にとって腎不全は命に関わる病気ですが、その一方で、
上手にコントロールしながら生活していくこともできる慢性疾患です。

ここでは、腎不全の仕組みや、なぜ猫に多いのか、
という基本的な部分をやさしく解説します。

腎臓のはたらきと役割

腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物を尿として排出したり、水分や電解質のバランスを保ったりする、
体の「フィルター」のような役割を果たす臓器です。

また、血圧の調整や赤血球をつくるホルモンの分泌など、実は多くの重要な働きを担っています。

腎不全になるとどうなる?

腎臓の機能が徐々に低下していくと、以下のようなことが起こります:

  • 老廃物が体内にたまる(=尿毒症)
  • 尿が薄くなり、体が脱水状態になりやすくなる
  • 食欲が落ち、嘔吐や口内炎、貧血などが出てくる

こうした変化が少しずつ進行していくのが、**慢性腎不全(CKD)**です。

なぜ猫に多いの?

猫はもともと水をあまり飲まない動物であり、腎臓に負担がかかりやすい体のつくりをしています。
また、高齢になると腎臓の細胞が自然と減少していくため、加齢による腎機能低下が非常に多く見られます。

そのため、7歳を過ぎた頃から定期的な検査をすることで、早期発見・早期ケアにつながることが多いのです。

第3章|「治療」と「ケア」のちがいを知っていますか?

猫の慢性腎不全は、「治すこと」よりも「付き合っていくこと」が大切な病気です。
けれど、診断を受けたばかりの飼い主さんの多くが「治療をすれば治る」と思ってしまうのも自然なこと。
ここでは、"治療"と"ケア"の違いについて、あらためて整理してみましょう。

「治療」は病気を治すためのアプローチ

多くの病気では、薬や手術などを用いて病気の原因を取り除き、元の健康な状態に戻すことを目指します。
これがいわゆる「治療」であり、完治がゴールです。

しかし慢性腎不全の場合、すでに失われた腎臓の機能は、残念ながら元に戻すことはできません。

「ケア」は"その子らしく過ごす"ためのサポート

慢性疾患において重要なのが、「症状をコントロールしながら、できるだけ快適に暮らす」という視点です。

これが「ケア」や「緩和ケア」の考え方です。

  • 吐き気や食欲不振をやわらげる
  • 脱水や貧血を防ぐ
  • 無理のないペースで生活できるようにする

こうした日々の積み重ねが、その子の生活の質(QOL)を保つことにつながります。

緩和ケアは"最後の選択肢"ではありません

「緩和ケア」と聞くと、「もうなにもできないときに行うもの」と思われがちですが、それは大きな誤解です。
実際には、腎不全と診断されたそのときから、ケアの視点はすでに必要なのです。

往診などでおうちの環境に合わせたケアを行うことで、通院が難しい子でも安心して過ごせますし、
飼い主さんの心の負担も軽くなります。

第4章|慢性腎不全におけるステージと経過

猫の慢性腎不全は、進行の程度によって大きく4つのステージに分類されます(IRISステージ分類)。それぞれのステージによって、現れる症状や必要なケアが異なります。

飼い主さんが「いまどの段階なのか」を知ることは、今後の治療・ケアの方針を立てるうえでとても大切です。

ステージ1・2:気づきにくい初期段階

初期の段階では、血液検査でやや異常値が出るものの、見た目には大きな症状が出ないことが多いです。

この時期には、

  • 多飲多尿
  • 軽度の体重減少
  • 少し元気がない

といったささいなサインが見られることも。

この段階でフードの見直しや水分補給など、早めのケアを始めることで、
その後の進行を緩やかにすることが期待できます。

ステージ3:症状が明らかになってくる

この頃になると、

  • 吐き気や嘔吐
  • 食欲のムラ
  • 明らかな体重減少
  • 口臭や口内炎

などが見られるようになります。

脱水を防ぐための皮下点滴や、吐き気止め、胃薬の投与などが必要になることも増えてきます。

症状の出方や進行スピードには個体差があるため、獣医師との連携を密にしながら、
その子に合ったケアを行っていく時期です。

ステージ4(末期):QOLを重視するケアへ

血液検査の値が大きく悪化し、尿毒症の症状が顕著になってくるステージです。

この時期には、

  • 毎日の皮下点滴や注射での薬剤投与
  • ごはんが食べられない時のサポート
  • 呼吸や循環のケア

などが必要になることも。

この段階では、症状を無理に抑え込むのではなく、いかに苦痛を軽減し、
穏やかな時間を保てるか
がテーマになってきます。

第5章|おうちでできるケアと皮下点滴

通院が難しい子や、病院が苦手な猫ちゃんにとって、ご自宅でのケアはとても重要です。
なかでも「皮下点滴(皮下補液)」は、慢性腎不全の猫にとって代表的なケアのひとつです。

ここでは、おうちで行えるケアの選択肢と、皮下点滴について基本的なことを整理してみましょう。

皮下点滴の目的と効果

皮下点滴には、以下のような目的があります:

  • 脱水を予防し、腎臓への負担を軽減する
  • 老廃物を薄めて排出しやすくする
  • 電解質のバランスを整える
  • 食欲や元気の改善をサポートする

とくに自力で十分な水分が摂れなくなってきた子には有効で、症状の緩和に大きく貢献します。

点滴の頻度・量は、その子によりけり

皮下点滴の量や頻度は、腎不全のステージや体調によって変わります。

  • 初期〜中期:週に2〜3回程度が目安
  • 中~後期:1日おき、または毎日行うことも

ただし、点滴の"やりすぎ"も逆効果になる場合があり、浮腫や呼吸状態の悪化につながることも。
そのため、定期的な診察や血液検査を通じて、こまめに調整することが大切です。

ご家族でできる他のケア

皮下点滴のほかにも、おうちでできるケアには以下のようなものがあります:

  • 食事:腎臓に配慮した療法食や、水分の多いウェットタイプを活用
  • 投薬サポート:飲ませるのが難しい場合は注射薬への切り替えも相談
  • 環境調整:静かで安心できるスペースの確保、トイレの位置の工夫

「無理をさせず、その子ができるだけ心地よく過ごせるように」を基本に考えていきましょう。

第6章|点滴をやめるときの考え方と注意点

「点滴を続けるのがつらそうだけど、やめていいのか分からない」
「点滴をやめる=見捨てることになってしまうのでは...?」

慢性腎不全のケアのなかで、**点滴の"やめどき"**に悩むご家族はとても多いです。ここでは、やめるタイミングの考え方と注意点を整理していきましょう。

点滴=延命治療とは限らない

点滴は、あくまでも水分補給や症状緩和の手段のひとつであって、
必ずしも「命を長らえさせるための延命措置」ではありません。

そのため、「点滴をやめる=諦める」ではなく、
"その子がつらくないように過ごす"ことを優先する選択として、やめる判断がなされることもあるのです。

やめる判断の目安とは?

点滴を中止するかどうかは、以下のような状態を見ながら検討していきます。

  • ☑︎ 呼吸が苦しそう(過剰な水分が肺や胸にたまっている可能性)
  • ☑︎ 点滴をすると具合が悪化する
  • ☑︎ 尿がほとんど出なくなっている
  • ☑︎ 点滴そのものが強いストレスになっている

獣医師の診察を受けながら、無理なく続けられるかどうかを見極めることが大切です。

やめる前にできる「調整」もある

いきなりやめるのではなく、以下のように段階的に減らしていく方法もあります。

  • ☑︎ 回数を減らす(毎日→2日に1回、週3回 など)
  • ☑︎ 量を減らす(1回100ml → 50mlなど)
  • ☑︎ 内容を見直す(薬剤の追加や除去)

また、点滴の代わりに注射薬だけを使って症状を緩和する方法もあります。
獣医師と相談しながら、その子にとってのベストな選択肢を見つけましょう。

第7章|終末期ケアとしての緩和ケアのすすめ

「もう治せないなら、どうしてあげるのがいいのだろう...」
そんな問いに直面するのが、腎不全の猫ちゃんの"終末期"です。

この時期に大切なのは、無理な治療を続けるのではなく、穏やかに過ごせる時間を大切にすること。
それを叶えるのが、「緩和ケア(パリアティブケア)」という選択肢です。

緩和ケアとは、「苦しみを和らげる」ケア

緩和ケアとは、延命や治癒を目的とせず、つらい症状をやわらげてQOL(生活の質)を保つケアのことです。

たとえば:

  • ☑︎ 吐き気や痛みを抑えるお薬(飲み薬または注射)
  • ☑︎ こまめな体調チェック
  • ☑︎ 食べられないときのサポート(流動食・補助食品 など)

「その子らしく」「穏やかに」「ご家族と一緒に」過ごす時間を守るための、優しいケアです。

「在宅でできる緩和ケア」という選択

往診による緩和ケアであれば、病院に通うストレスを避けながら、必要な処置や投薬を受けることができます。

実際に在宅で行われるケアの例:

  • ☑︎ 注射薬の皮下投与(吐き気止め・痛み止めなど)
  • ☑︎ 呼吸の苦しさを軽減する環境調整
  • ☑︎ 看取りの相談や準備のサポート

「動物病院で最期を迎えたくない」「できるだけ家でそばにいてあげたい」
そんなご家族の気持ちに寄り添うのが、在宅緩和ケアの強みです。

ご家族の「後悔の少ない看取り」を支えるために

終末期のケアでは、「あのとき、こうしていれば...」という後悔がつきものです。

だからこそ私たちは、"医学的な正しさ"だけではなく、"
ご家族の気持ち"にも寄り添いながら選択していくこと
を大切にしています。

  • ☑︎ 本当に必要な処置なのか
  • ☑︎ その子が苦しくないか
  • ☑︎ ご家族にとって納得のいく選択か

こうした問いを一緒に考えていけるのが、緩和ケアの本質です。

第8章|"その子らしく"生きる時間を大切にする

治療やケアの選択肢をひとつひとつ決めていくとき、
大切にしてほしい視点があります。

それは、「この子が"その子らしく"いられるか?」という問いです。

最後まで食べる楽しみを持てるように

たとえ少量でも、「好きなものを食べる」「自分で食べられる」という体験は、
猫にとってもご家族にとっても、その子らしさを保つ大きな要素です。

  • ☑︎ 食べられるものを探してみる(好物・温めたごはん など)
  • ☑︎ 自分で食べられないときは、そっとサポート
  • ☑︎ 「食べない=もうダメ」と決めつけない

「一口でも食べてくれた」その瞬間が、宝物のような時間になることもあります。

無理のない範囲で、好きな場所・好きな空気の中で

通院や処置でぐったりしてしまうより、
家でゆったりと陽だまりにいるだけで、猫は穏やかで安心した表情を見せることもあります。

  • ☑︎ ベッドの高さやトイレの位置を調整
  • ☑︎ クッションや毛布であたたかい場所を作る
  • ☑︎ お気に入りの場所にそっと連れて行く

「治す」ことだけが目的ではなく、今その子が快適でいられることに目を向けてみてください。

ご家族にとっても、心に残る時間を

「なにをしてあげればいいのかわからない」
そう思うこともあるかもしれません。

でも、ただそばにいるだけで、猫ちゃんにとってはかけがえのない時間になっています。

  • ☑︎ 声をかけてあげる
  • ☑︎ そっと撫でてあげる
  • ☑︎ 一緒にいる時間を静かに過ごす

"最期までその子らしく"。
そして"最期までその子と一緒に"。
そんな時間が、ご家族にとっての癒しや後悔の少ない見送りへとつながっていきます。

まとめ|腎不全の猫と向き合うために大切なこと

猫の慢性腎不全は、ゆっくりと進行しながら、生活にさまざまな変化をもたらす病気です。
「治す」ことを目指すのではなく、**その子の体調や性格に合わせて"症状をやわらげながら支える"**という視点がとても大切です。

見逃したくないサイン
  • 食欲低下、体重減少、嘔吐や口臭、多飲多尿などの初期症状
  • これらを早めに気づくことで、暮らしの質を保ちやすくなります
点滴や投薬は"合う方法"で
  • 自宅での皮下点滴、注射薬、飲み薬など、その子に合う形を選ぶ
  • 点滴は無理に続けるものではなく、やめどきも見極めながら
緩和ケアは"腎不全と診断されたときから"始まっている
  • 治すのではなく、できるだけつらくないように寄り添うケア
  • 通院に頼らず、在宅でも十分にできるケアがある
最後まで"その子らしく"を大切に
  • 食べる・眠る・安心する...そんな小さなことが、大きな癒しに
  • ご家族が無理をせず、できる範囲で関わることが大切

慢性腎不全は、決して「絶望的な病気」ではありません。

早期からのケア、的確な判断、そして愛情ある寄り添いによって、猫ちゃんはとても穏やかに過ごすことができます。

少しでも不安を感じたときは、ひとりで悩まずご相談ください。
あなたと、あなたの大切な猫ちゃんのために、できるサポートを全力でさせていただきます。

関連ブログ記事:慢性腎不全の猫(よく吐く/口をくちゃくちゃする/お水をよく飲む/痩せた)

対話を重視する安心の獣医療

東京都23区を中心に、往診専門の動物病院として活動する「わんにゃん保健室」です。
私たちは、動物病院への通院が難しいわんちゃん・ねこちゃんとそのご家族のために、ご自宅での診療を提供しています。

「対話」を重視した診療スタイル

わんにゃん保健室の往診診療では、病院ではなく「ご自宅で診療を受けられます。年齢を重ねたペットや、持病がある子たちの、病院までの移動や待ち時間のストレスを最小限にするため、飼い主さまのご自宅にお伺いする往診スタイルを取り入れています。
診察時も、普段通りの環境でリラックスした状態で受けることができるため、ペットにもご家族にも安心していただけます。

また、診察の間は獣医師だけでなく、動物看護スタッフも飼い主さまとお話しする時間を多く設けています。
ペットの様子を伺い、ご家族の不安に耳を傾けながら、チームとして支える医療を実践しています。
飼い主さまとも温かな信頼関係を築きながら進めていく診療が、わんにゃん保健室の大きな特徴です。

緩和ケア・ターミナルケアにも対応しています

当院は、病気の進行を止めることが難しいペットに対して、緩和ケアやターミナルケア(終末期ケア)にも力を入れています。
できる限り苦痛を抑えながら、穏やかな時間をご自宅で過ごせるよう、獣医師と看護スタッフが一体となってサポートいたします。
このような診察には1〜2時間ほどじっくり時間をかけることも多く、時には3時間を超えることも。ご家族としっかりお話ししながら、寄り添うケアを大切にしています。

ペットにとって、どんな環境が一番ストレスなく安心できるか?
その答えを常に考えながら、わんにゃん保健室は日々の診療を行っています。
もし「通院が大変」「高齢で移動が難しい」「穏やかに最期を迎えさせてあげたい」など、
少しでもお困りのことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

あなたと、あなたの大切な家族であるペットのために、一番近くで支える獣医療を目指しています。

 

東京都内を中心に往診専門で獣医療を提供しているわんにゃん保健室です。当院では往診専門の動物病院ですので、ご自宅にお伺いして診療を行っています。

わんちゃんやねこちゃんは、病気の容態によっては病院への通院が難しい場合があります。また通院すること自体がストレスとなり、病状の悪化を招く危険性もあります。

そういったストレスを極力回避し、ご自宅でリラックスした状態で診療が受けられるのが、往診動物病院の魅力です。

ペットにとってもストレスがなく、飼い主様も、わんちゃんやねこちゃんを連れての通院の必要がなくなるため、
お忙しい飼い主様にとっても、待ち時間がなくご好評いただいております。

本日は、わんにゃん保健室の一日についてご紹介したいと思います。

わんにゃん保健室の一日

わんにゃん保健室では、「往診業務」「症例報告」そして「電話対応」を行っています。
往診の依頼があったペットの容態を確認し、適切な処置ができるよう準備を行い往診に向かいます。

10:00 往診準備

まずは、メールチェックやカルテのチェックを行います。
今日一日の往診予定を確認し、往診のルートもチェックします。

10:30 往診に出発!

診療予定に合わせて往診に出発します。
車で往診先へ向かうため、事前に駐車場の有無や近隣のコインパーキング、渋滞の状況に関して調べておきます。

11:00 診察開始

往診先に到着したら、診察を開始します。
ご予約時に聞いていた事前の状況と変わりないかを確認し、飼い主さんへのヒヤリングを行いながら診察を進めます。

13:30 ミーティング

次の往診診療時間までの間、ミーティングを行います。
往診のため移動時間があるのですが、その移動時間も無駄にせず、次の診療についての最良の獣医療を検討します。

15:30 診察開始

午後の診察も、午前同様飼い主さんへのヒヤリングを行いつつ進めていきます。
定期的に往診を行っている子の場合、次の往診日の予約を行います。

18:00 事務所へ戻り検査を行う

往診診察を終えたら、事務所へ戻り検査を実施。
また、翌日の往診の準備もこの時に行います。
器具などを使用する診察の場合、稼働や消耗品に問題がないかを確認します。

往診専門の動物病院は、ご自宅が診療室になります

往診専門の場合、来院してもらうタイプの動物病院での勤務とはややイメージが異なるかと思います。往診病院には往診病院の良さ、動物病院には動物病院の良さがあると思いますが、わんにゃん保健室の一番の魅力は、なによりも「ペットや飼い主さんに寄り添える」点にあります。

通院型の動物病院の場合、診察室には限りがあります。
当然、1匹のわんちゃんを診ている間はほかのわんちゃん・ねこちゃんを診てあげることができないので、必然的に診察へスピードが求められます。

すべての動物病院がそうではないですが、中には効率を重要視し、飼い主さんの話をほとんど聞かないままに診察を終える動物病院もあります。

わんにゃん保健室ではそういった診療体制は取りません。
もちろん時間が無限にあるわけではありませんが、できる限り寄り添い、飼い主さんの心のケアもできればと思い診察にあたっています。

ペットの往診にご興味のある方、寄り添った診療をお求めの方、
まずはなにかしらをご相談したいとお考えの方、
是非お気軽にご相談ください。

猫の心筋症(特に肥大型心筋症など)は、高齢猫に比較的多い病気であり、診断されたときには「いつ何が起こるかわからない」という不安に包まれてしまうこともあります。

 

「通院での検査や処置が難しくなってきたけれど、このままで大丈夫?」

「呼吸が苦しそうに見えるけれど、どうすればいいの?」

「最期まで家で穏やかに過ごさせてあげたいけど、それって現実的なの?」

 

そんな不安を抱えるご家族に向けて、この記事では心筋症におけるターミナルケアの考え方、在宅でできる具体的なサポート、そして治療から緩和への切り替えのヒントを、獣医師の立場からわかりやすくお伝えしていきます。

 

猫の心筋症とは?──はじめに理解しておきたいこと

猫の心筋症は、心臓の筋肉(心筋)に異常が生じることで、心臓の機能が低下する病気です。中でも「肥大型心筋症(HCM)」は猫にもっとも多く、心筋が厚く硬くなることで血液の循環が悪くなります。

初期には無症状のことも多いため、「気づいたときにはすでに進行していた」というケースも少なくありません。心筋症と診断されたときに、病気の性質を正しく知ることは、今後のケアの選択にもつながります。

心筋症の種類と特徴(特に肥大型)

猫の心筋症にはいくつかのタイプがありますが、なかでも肥大型心筋症(HCM)は特に多く見られます。

☑︎ 心筋が肥厚して心室内が狭くなる
☑︎ 血液がうまく送り出せず、全身に十分な酸素が行き渡らない
☑︎ 最終的には肺に水がたまる「肺水腫」や「胸水」が起こることもある

このように、呼吸や循環に大きく影響を与える病気です。

よくある症状と見逃しやすいサイン

心筋症の症状は、必ずしも急激に出るとは限りません。次のような変化があった場合は注意が必要です。

☑︎ 呼吸が早くなる、浅くなる(休息時も口呼吸など)
☑︎ 階段を登れない・ジャンプしないなどの活動性の低下
☑︎ 急に後ろ足を動かせなくなる(血栓塞栓症)

「少し疲れてるのかな?」という程度に見えることもあるため、慎重な観察が必要です。

診断されたとき、まず大切にしたいこと

心筋症と告げられたとき、最初は動揺するかもしれません。でも、以下のことをまず確認しておくと、その後のケアの選択がスムーズになります。

☑︎ 呼吸状態は安定しているか?(今すぐ酸素が必要かどうか)
☑︎ 内服薬の開始が必要か?飲ませられるか?
☑︎ 今後の急変に備えてどんな選択肢があるか

病名を知ることは、ゴールを定めるための第一歩です。次は「心筋症=すぐに亡くなる」という誤解について、正しい理解をお伝えします。

 

「すぐに亡くなる病気」ではありません

心筋症と診断された直後、多くの飼い主さんが「この子はもうすぐ亡くなるの?」と不安になります。

もちろん、急変や突然死のリスクがある病気ではありますが、それが“すぐ”という意味ではありません。症状を観察し、適切なケアを行えば、しばらく落ち着いて過ごせるケースも多くあります。

急変=すぐ死に至るとは限らない

たしかに心筋症は急激な症状悪化(肺水腫や血栓など)を引き起こすことがありますが、「急変 = 即死」ではないことも多いのです。

☑︎ 呼吸が速くなる、苦しそうになる前に前兆がある
☑︎ 一度落ち着けば、数日~数週間安定することもある
☑︎ 「あのときこうしていれば」という後悔を減らすためにも観察が大切

治療によって維持できる期間もある

投薬や酸素ケアによって、呼吸や循環を安定させることが可能な場合もあります。無理に延命をするのではなく、「その子らしく過ごす」ことを目指した治療が、QOLを高めてくれます。

☑︎ 利尿剤や強心薬の使用で症状をコントロール
☑︎ 食欲や活動性を保ちながら過ごす子も多い
☑︎ 完全には治せないが「うまく付き合う」ことはできる

在宅での見守りでできるサポート

通院が難しい猫でも、在宅での観察とサポートを工夫することで、穏やかな日常を取り戻すことができます。

☑︎ 呼吸のチェックや、安静にできる環境づくり
☑︎ 必要に応じた往診や在宅酸素の導入
☑︎ ご家族の「気づき」が命を支える大きな力になる

焦らず、ひとつひとつのサインに気づくことが、これからの時間をより良いものにしてくれます。

次は、内服薬が難しいときに選択できる「注射薬+皮下点滴」というケアについてお話しします。

 

内服が難しいときの代替手段

心筋症の治療では、内服薬が重要な役割を果たしますが、「薬を飲ませるのが難しい」「毎日の投薬が猫にも家族にも負担になっている」というご相談をよくいただきます。

そんなときに検討したいのが、注射薬への切り替えや皮下点滴による投与です。薬を「飲ませる」のではなく「体に入れる」方法を工夫することで、治療の継続と猫の穏やかな生活を両立できることがあります。

シリンジ投薬がストレスになる場合

元気がない、口を開けさせるのが難しい、嫌がって暴れる…。そんな状態で毎日お薬を飲ませることは、ご家族にも猫にも大きなストレスになります。

☑︎ 投薬のたびに関係性が悪くなってしまう
☑︎ 無理に口をこじ開けると、呼吸を乱す原因にも
☑︎ 飼い主さんが「怖くてできない」と感じることもある

注射薬+皮下点滴での投与という選択肢

猫の状態やご家族の生活に合わせて、薬剤を皮下点滴の中に混ぜて投与する方法があります(例:利尿剤、制吐剤、鎮痛薬など)。これにより、口からの投薬を減らすことができます。

☑︎ 注射によって安定的な投与が期待できる
☑︎ 家でのケアがシンプルになり、精神的な余裕が生まれる
☑︎ 通院が難しい場合の代替手段として有効

なお、投与量や組み合わせには注意が必要なので、必ず獣医師の指導のもとで行いましょう。

ご家族が無理をしないケア設計の重要性

「投薬を続けなければ」とがんばる気持ちは尊いものですが、無理を重ねてしまうとご家族の心も疲れてしまいます。

☑︎ ケアは「正しさ」より「続けられるかどうか」が大切
☑︎ 家族が笑顔でいられることが、猫にとっても安心につながる
☑︎ 無理せず続けられる方法を、一緒に見つけていきましょう

次は、心筋症に多くみられる「胸水」の問題と、その対応についてお伝えします。

 

胸水抜去の正しい理解と注意点

心筋症が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、胸の中に水がたまる「胸水」が起こることがあります。胸水が増えると肺が圧迫され、呼吸が浅く速くなり、猫は苦しそうに見えるようになります。

このような状態に対して行うのが「胸水抜去」という処置ですが、すべてのケースにおいて行うべきとは限りません。ここでは、胸水抜去について正しく理解し、必要性と負担を見極めるヒントをお伝えします。

胸水がたまるとどうなる?

胸水は、心臓や血管からしみ出した体液が胸腔内にたまったものです。肺が圧迫されてうまく膨らまなくなることで、呼吸がしにくくなります。

☑︎ 安静時にも呼吸が浅く速くなる
☑︎ 寝ているときに「横向き」になれず座ったままになる
☑︎ 酸素室を使っても改善しない場合は注意が必要

このような症状があれば、胸水の可能性も視野に入れる必要があります。

抜去処置のメリットと身体的負担

胸水を抜くことで肺が広がり、呼吸が一気に楽になることがあります。ただし、処置には注射針を刺す必要があり、猫にとっては少なからず痛みや緊張を伴います。

☑︎ 呼吸状態が急速に改善するケースもある
☑︎ 一方で、針を刺す処置には苦痛や不快感がある
☑︎ 抜いてもすぐに再貯留する場合もある

何度も繰り返すことが猫の負担になっている場合は、あえて抜去を控える判断も考えられます。

苦痛を伴う場合の判断と緩和的ケアへの切り替え

処置によって一時的な改善が見込めても、それが猫にとって「つらい体験」となっているなら、無理に続けることが最善とは限りません。

☑︎ 何度も胸水を抜くより、酸素や薬剤での緩和を優先する
☑︎ ご家族の意思と猫の様子をふまえて治療方針を柔軟に見直す
☑︎ 穏やかに過ごすことが、何よりのケアになることもある

次は、呼吸を助けるために必要な「在宅酸素ケア」について、導入のポイントや注意点をご紹介します。

 

在宅酸素はどう整える?

呼吸がつらそうな猫にとって、「酸素を吸える環境を整えること」は命をつなぐだけでなく、日々の安心にもつながります。在宅でも酸素環境を整えることは可能です。

ここでは、在宅酸素の導入方法や使用上の注意点についてご紹介します。

在宅酸素の準備に必要なもの

猫に酸素を届ける方法はいくつかありますが、多くの場合は「酸素濃縮器+酸素ハウス」を使用します。

☑︎ 酸素濃縮器(電源が必要)
☑︎ 密閉性のあるケージやテント(酸素ハウス)
☑︎ 万一の停電に備えたバックアップ手段(酸素ボンベやポータブル電源)

酸素濃縮器はレンタルが可能で、動物病院や専門業者を通じて自宅に設置できます。

設置時の注意点とトラブル回避

酸素ハウスを快適な空間にするためには、温度や湿度、音、ストレス対策も大切です。

☑︎ 濃縮器の作動音が猫のストレスにならないように設置場所を工夫
☑︎ 温度管理(夏場の酸素ハウス内は熱がこもりやすい)
☑︎ 密閉しすぎると酸素がこもってしまうため、適度な換気も必要

猫が安心して入ってくれるよう、日頃から「落ち着ける場所」として慣れさせることも大切です。

導入の判断は獣医師と相談を

酸素の導入は、すべての心筋症の猫に必要というわけではありません。症状や呼吸状態、今後の方針に応じて判断することが大切です。

☑︎ 呼吸が苦しそう、動かなくなってきた場合はすぐ相談を
☑︎ 酸素が必要なレベルかどうか、診察での確認が重要
☑︎ 導入後も酸素濃度や状態を定期的にチェックしましょう

次は、呼吸だけでなく「ごはんが食べられないとき」のケアについてお伝えします。

 

ごはんが食べられないときの対応

心筋症が進行してくると、息が苦しくて「食べたいのに食べられない」状態になることがあります。これは「食欲がない」のではなく、体がつらくて食事がとれないケースも多いのです。

ここでは、そんなときにできる工夫やサポートをご紹介します。

呼吸が安定すると食欲も戻ることがある

食欲の低下が、単に病気の末期だからというわけではなく、呼吸の苦しさが原因であることも多いです。呼吸が落ち着くことで、自然と食べ始めることもあります。

☑︎ 酸素室や利尿剤で呼吸が落ち着いたら少しずつ食べ始める
☑︎ 横になる姿勢が取れるようになると、食事への意欲も回復しやすい
☑︎ 吐き気止めなどを併用することで、食べやすくなることもある

強制給餌は慎重に

「食べてほしい」という思いから強制的に口へ運んでしまうと、猫にとっては大きなストレスとなることがあります。

☑︎ 呼吸が苦しい状態では、無理な給餌は逆効果になる
☑︎ 無理に与えることで食事そのものを嫌がってしまう可能性も
☑︎ 「今日はこれくらいで大丈夫」と一歩引く勇気も必要

食べやすい工夫とケアのバランス

無理に「食べさせる」のではなく、「食べやすくしてあげる」工夫を心がけましょう。

☑︎ ウェットフードやスープ状のごはんに変える
☑︎ 手のひらに乗せてみる/横に寝たまま食べられる工夫を
☑︎ 少量ずつ何度も、を意識する(1回の完食にこだわらない)

「今この子が何をつらいと思っているのか」を見つめながら、食事のサポートも無理なく続けていきましょう。

次は、猫にとっての「穏やかな最期とは何か」について考えていきます。

 

穏やかな最期とは?

病気の進行とともに、「延命」から「看取り」へとケアの視点が変わっていく時期があります。 その中で、ご家族にとって最も大切なのは「この子にとって何が幸せなのか」を見つめ直すことです。

ここでは、穏やかな最期を迎えるための考え方や、家族ができるサポートについてお伝えします。

治すことよりも「苦しくない」が大切になる

最期の時間においては、治療よりも「痛みや苦しさを取り除く」ことが最優先になります。

☑︎ 無理な検査や処置は控え、安心できる環境を整える
☑︎ 苦しみのサイン(呼吸、体勢、鳴き方)を見逃さない
☑︎ 「この子らしさ」を大切にした関わり方を意識する

そばにいることが、何よりの薬になる

体に触れる、声をかける、一緒に過ごす…。特別なことをしなくても、ご家族の存在は猫にとって大きな安心になります。

☑︎ 「そばにいてくれる」ことが猫の心を落ち着かせる
☑︎ 抱っこよりも、隣にそっと座るだけで十分なこともある
☑︎ 眠るように旅立てる子の多くは、家族の声を聞きながら過ごしている

「良いお別れだった」と思えるように

後悔をゼロにするのは難しいかもしれません。でも、「最期をどう迎えたか」は、ご家族の心を大きく支えてくれるものになります。

☑︎ 「あのときこうしてよかった」と思える場面を増やす
☑︎ できなかったことより、できたことを大切に
☑︎ 悲しみの中にも、あたたかな記憶を残せるお別れを目指しましょう

次はいよいよ最終章、「治療から看取りへ、気持ちの切り替え方」についてお話しします。

 

治療から看取りへ、気持ちの切り替え方

「もう治せないのかもしれない」と感じたとき、胸がしめつけられるような不安や迷いが生まれます。 でもその気持ちは、愛情があるからこそ。ここでは、治療から緩和ケア・看取りへと気持ちを切り替えるヒントをお届けします。

「やめる」のではなく「切り替える」だけ

治療を終える=あきらめる、ではありません。ケアの目的が「治すこと」から「楽にすること」へ変わるだけです。

☑︎ 投薬や処置を減らすことで、穏やかな時間を増やせる
☑︎ 「最後までケアしてあげたい」という思いが支えになる
☑︎ ケアの主役は「命を守ること」から「痛みを減らすこと」へ

正解はひとつじゃない

どんな選択をしても、それはご家族がその子のために悩み、考えた結果です。 「これでよかったんだ」と思える選択肢は人それぞれ違っていて当然です。

☑︎ 他の人と比べる必要はない
☑︎ ご家族が納得できる道を選ぶことが一番大切
☑︎ 自分を責めすぎないで、「いまのこの子の気持ち」に耳を傾けて

看取りを通して気づく“あたたかさ”

最期の時間は、決して悲しいだけのものではありません。 そこには、言葉にできないあたたかさや、絆の深さがあるはずです。

☑︎ 小さな変化を見つけて声をかけるたび、通じ合う感覚が生まれる
☑︎ そばにいることが、自分自身の癒しにもなる
☑︎ 最期まで一緒にいられた時間が、これからの人生の支えにもなる

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。 次は、このテーマのまとめに入ります。

 

まとめ|心筋症と診断された猫と、穏やかに向き合うために

猫の心筋症は、初期の段階ではあまり症状が目立たないことも多く、 「急に苦しそうになった」「病院に行ったら末期だった」と驚かれる飼い主さんも少なくありません。

ですが、心筋症=すぐに亡くなるわけではありません。

✔︎ 内服が難しいときには、注射や皮下点滴での投薬に切り替える選択肢もあります。
✔︎ 胸水抜去がつらい処置である場合は、あえて控える判断もあります。
✔︎ 在宅での酸素ケアを整えることで、病院ではなく「おうちで過ごす時間」を叶えることも可能です。

いまこの瞬間から「何をしてあげられるか」を見つめ直すこと、
そして、治療から穏やかな看取りへと視点を変えることは、 決して“諦め”ではなく、愛情にあふれた選択です。

「最期まで寄り添えた」と思える時間を、一緒につくっていきましょう。

 

猫の心臓病や呼吸の変化が不安なときは、ご相談ください

呼吸が浅くなってきた/ごはんを食べられない/通院が難しくなってきた――

そんなときは、一人で抱え込まずにご相談ください。 往診専門動物病院わんにゃん保健室では、 猫の心筋症や終末期のケアに寄り添った在宅サポートを行っています。

東京都内、23区を中心に往診獣医療を提供しているわんにゃん保健室です。
当院では、ペットにも飼い主様にも安心いただける往診を心がけております。
最良の獣医療をご提供できるよう、今後も務めてまいります。

本日のブログでは、わんにゃん保健室の「行動指針」についてご紹介したいと思います。
獣医療を提供する者として技術や知識も重要ですが、
わんにゃん保健室では「人としての能力」を重視しています。

柔軟な考えで、臨機応変に対応

わんにゃん保健室では「臨機応変」や「柔軟な思考」を大切にしています。

わんちゃんやねこちゃんの診療を行う上で、すべてが想定通りに治療が進むわけではありません。
獣医師として、最善の治療を行うためにご提案する内容があります。
ですが、ペットや飼い主様それぞれの考えがあり、わんにゃん保健室の意向のみで物事を考え進めることはできません。

相手の意向はどうか? 現状はどうか?
想定する行動をとった際に、どのような結果が導かれるか?

そういったことを考慮し、柔軟な思考によって対応していくことが必要となります。

自分自身の信念や考え方を持つことは大切です。
わんにゃん保健室のスタッフも、一人ひとり信念を持って診療にあたっています。
ですが、相手の意見に耳を傾け、全員にとって最善となる方法を検討することがもっと重要です。

そういった「柔軟な思考」や「臨機応変に対応できる力」を大切にしています。

治療への誠実さ、ペット・飼い主様への誠実さ

誠実さは、どういった面でも必要となってきます。
「柔軟さ」「臨機応変な対応」も、相手に対する誠実さの表れのひとつだと考えます。

わんにゃん保健室では、本来の目的を見失わないよう診療にあたっています。
それは、「ペットや飼い主様にとって最善とはなにか?」という点を常に考えることにあります。

獣医療を提供する際に、飼い主様やわんちゃん・ねこちゃんへ誠実に対応することは、より良い獣医療を提供することにつながってまいります。
自分がすべきことを考え、行動する。
その信念のもと、獣医療を提供しております。

素直な心でペット、飼い主様へ接する

何事においても「素直さ」は重要です。
診療に対して、何が必要なのか? を素直な心で考え、飼い主様へ提案することが重要です。

時には飼い主様からご指摘をいただくこともあり、そういった内容に対しても素直に受け取り、今後の診療時の課題としています。

言い訳をせずに真摯に受け止める、と言うのも素直な心が関連していると思います。
前述した「誠実さ」ともつながる話ではありますが、他責思考ではいつまでも当事者意識が生まれず、良い獣医療を提供することは難しいです。

ご指摘がなくとも、飼い主様とのコミュニケーションや対応方法、診療内容で、誤った部分はなかったか?
失礼にあたるようなことはなかったか? そういったことを常に考え、皆様に接しています。

当院では、往診専門の動物病院として
「ペットが最後の時間を家族と迎えられるよう 最大限寄り添った最良の往診獣医療を 最後まで提供していく」
を理念に往診を行っています。

最後まで寄り添い、より良い時間を過ごしていただく。
獣医療のプロフェッショナルとして、共に最良の獣医療を追求していくことが、我々の使命なのです。

ChatGPT Image 2025年7月12日 18_01_19.png

猫の慢性腎不全は、高齢の猫によく見られる進行性の病気です。病気と診断されたばかりの飼い主さんの多くは、「これから何をしてあげればいいの?」「点滴ってどれくらい続けるの?」と、不安や迷いの中にいることでしょう。

皮下点滴は、腎不全においてとても大切なサポート手段です。しかし、それが“いつまで必要なのか”や、“やめるときにどう判断すればいいのか”については、あまり知られていません。

この記事では、腎不全の猫と向き合うご家族に向けて、皮下点滴の役割ややめどき、そして自宅でできる穏やかなケアの選択肢について、獣医師の視点からやさしく、そして誠実にお伝えします。

 

猫の腎不全とは?──初期に知っておきたい基本知識

猫の慢性腎不全(CKD)は、高齢猫に多く見られる進行性の病気です。年齢とともに腎機能が少しずつ低下していくため、はじめのうちは目立った症状が出ないことも少なくありません。

しかし、気づかないうちにゆっくりと病気が進行し、ある日突然、食欲不振や元気消失などの症状が現れることがあります。「年だから仕方ない」と思って見過ごしてしまうケースも多く、発見されたときにはすでにステージが進んでいるということも。

CKD(慢性腎臓病)の主な症状

☑︎食欲の低下、体重減少

☑︎水をよく飲む、尿の量が増える(多飲多尿)

☑︎口臭や吐き気、元気の低下

これらの症状は一見、腎臓とは関係なさそうに思えるかもしれません。しかし腎機能の低下は、老廃物の排出や体内の水分バランスに大きく関わっているため、さまざまな不調として表れるのです。

進行とともに起こる変化

初期のうちは症状が軽くても、病気が進行するにつれて脱水、電解質異常、貧血などの合併症が現れます。また、腎臓がうまく働かなくなることで、食欲や元気の低下だけでなく、吐き気や口内炎、神経症状が出ることもあります。

特にステージ3〜4と進むにつれて、症状は日常生活に影響を及ぼすレベルになってきます。猫の体調を細かく観察し、早期に対応することがとても重要です。

命を脅かす合併症とは

☑︎重度の脱水によるショック

☑︎尿毒症による意識障害やけいれん

☑︎高カリウム血症による不整脈や心停止

これらの合併症は命に関わることもあるため、見逃さず早めのケアを行うことが大切です。猫の腎不全は進行性ではありますが、早い段階で見つけ、適切な対応をすれば穏やかに過ごすことも可能です。

次は、そんな腎不全において重要なサポートとなる「皮下点滴」について詳しくご説明します。

 

皮下点滴の役割と目的

猫の慢性腎不全において、皮下点滴(皮下補液)はとても重要なケアの一つです。とくに自宅でできる医療サポートとして、多くの飼い主さんに実践されている方法です。

腎臓の機能が低下すると、老廃物をうまく排出できなくなり、脱水や電解質の乱れが生じやすくなります。皮下点滴は、これらの問題を和らげるためのサポート手段です。

水分バランスの補正と脱水の予防

腎臓がうまく働かないと、尿として水分を排出する一方で、必要な水分を体内に保持できなくなります。これにより慢性的な脱水状態になりやすく、体調が不安定になります。

皮下点滴を行うことで、水分をゆっくりと体内に吸収させ、脱水の予防と体調の安定を図ることができます。

老廃物の排出サポート

腎不全では、血液中に老廃物(尿素窒素やクレアチニンなど)が蓄積していきます。皮下点滴により水分量が増えると、残っている腎機能によって老廃物の排出が促進されます。

その結果、吐き気やだるさといった尿毒症の症状が軽減されることもあります。

薬剤投与の手段としての点滴

腎不全の進行により、内服が難しくなることもあります。そんなとき、皮下点滴のルートを使って鎮痛薬や制吐剤、ビタミン製剤などを注射で投与することができます。

「水分補給」だけでなく、「薬剤投与の手段」としての役割もあるため、特に終末期では大切なサポートとなることがあります。

このように、皮下点滴は腎不全の猫の体調を支える大切な手段です。しかし、続けていく中では「本当に今の量や頻度で大丈夫なのか?」と疑問を感じることもあるかもしれません。

次は、皮下点滴を始めるタイミングや、その判断基準について解説していきます。

 

皮下点滴を始めるタイミング

猫が腎不全と診断されたとき、「今すぐ皮下点滴を始めたほうがいいのか?」と悩む飼い主さんは多いと思います。点滴にはメリットもありますが、必要なタイミングで適切に始めることがとても重要です。

ここでは、皮下点滴を始める目安や判断基準についてご紹介します。

血液検査で見るべき数値

皮下点滴を始めるかどうかは、血液検査の結果が重要な判断材料になります。以下のような数値が一定の基準を超えると、皮下点滴の導入が検討されます。

☑︎ BUN(尿素窒素)が30~40mg/dL以上
☑︎ Cre(クレアチニン)が2.0mg/dL以上
☑︎ リン値の上昇や脱水所見がある

これらは一例であり、数値だけでなく全体の体調や症状とあわせて判断する必要があります。

食欲・飲水・排尿のチェックポイント

血液検査に加えて、日々の様子も重要なサインになります。以下のような変化が見られる場合、皮下点滴が有効なケースがあります。

☑︎ 水をよく飲むのに、脱水症状が見られる
☑︎ 食欲が落ちてきた、嘔吐がある
☑︎ 排尿回数や量が増えている(多尿傾向)

これらは、体内の水分と老廃物のバランスが乱れているサインかもしれません。

獣医師の指示で始める重要性

皮下点滴は、自己判断で始めたり、市販の情報だけで独自に量を決めて行うと、かえって危険なこともあります。

例えば、心疾患を抱えている猫の場合、過剰な点滴が呼吸困難や胸水の原因になることがあります。腎臓だけでなく、全身の状態を診たうえで獣医師が判断することが大切です。

特に在宅での点滴を検討している場合には、一度は対面診察を受け、適切な方法や量について指導を受けるようにしましょう。

次は、皮下点滴を続けていく中で気をつけたいポイントについてご紹介します。

 

皮下点滴を続ける際に気をつけたいこと

皮下点滴は猫の体調を安定させるために役立ちますが、「一度始めたらずっと続ける」というものではありません。猫の状態に合わせて、適切な量や頻度を見直していくことがとても大切です。

このセクションでは、点滴を続ける際に注意すべきポイントについて解説します。

投与量と頻度の目安

一般的な目安としては、30ml/kgが基本量とされます。たとえば体重4kgの猫であれば、1回120ml前後が標準的です。ただし、腎不全の進行度や他の持病によって調整が必要になることもあります。

☑︎ 初期は週2〜3回からスタート
☑︎ ステージの進行に応じて1日おきや毎日へ
☑︎ 循環器系疾患がある場合は少量ずつ慎重に

自己判断で量を増やすことは危険なので、必ず獣医師と相談して調整していきましょう。

飼い主さんが見落としやすいリスク

皮下点滴はメリットの多いケアですが、続ける中で以下のようなリスクにも注意が必要です。

☑︎ 皮膚の腫れや硬化(繰り返し同じ場所に刺すことによる)
☑︎ 呼吸が浅くなる、苦しそうにする
☑︎ 点滴後にぐったりしている

これらは、点滴の量や頻度がその子の体に合っていない可能性があります。違和感を覚えたら、早めに動物病院へ相談しましょう。

在宅ケアにおける観察ポイント

ご自宅で皮下点滴を続ける場合には、次のような点に注意して日々の様子を見てあげてください。

☑︎ 点滴後の呼吸の変化や落ち着き具合
☑︎ 食欲・排尿の量と回数
☑︎ 点滴部位のしこりや痛がる様子

日常的に猫の“いつもと違う”を見逃さないことが、過剰投与や体調悪化の早期発見につながります。

次は、皮下点滴の「やめどき」をどう見極めるかについて、具体的に解説していきます。

 

皮下点滴のやめどきはいつ?

皮下点滴は腎不全のケアとして有効ですが、猫の状態によっては「やめる/緩める判断」が必要になることもあります。

多くの飼い主さんが「やめたら命に関わるのでは」と不安になりますが、やめることが=諦めること、ではありません。むしろ、その子の体にとって無理のないケアを選ぶために、「やめるタイミング」を見極めることが大切です。

やめる=諦めるではないという考え方

皮下点滴をやめるという判断は、ケアを放棄することではありません。その子のQOL(生活の質)を守るために、必要以上の処置を控えるという立派な選択です。

☑︎ 点滴による体への負担が大きくなってきた
☑︎ 点滴のたびに強いストレスや痛みを感じている
このような変化がある場合、やめることも「その子らしく過ごす」ためのひとつの手段になります。

呼吸状態・浮腫・尿量の変化

皮下点滴が合わなくなってきているサインは、身体にも現れてきます。以下のような症状があるときは、点滴の見直しや中止を検討する時期かもしれません。

☑︎ 呼吸が浅く苦しそう、腹式呼吸が強くなっている
☑︎ 四肢やお腹がむくんでいる(浮腫)
☑︎ 尿量が極端に減ってきている

これらは体内に水分がうまく排出できなくなってきているサインです。

ご家族と獣医師で見極めるサイン

「やめた方がいいのかも」と感じたら、決して一人で抱え込まず、かかりつけの獣医師と相談してください。可能であれば対面診察を受け、猫の全身状態を診てもらいましょう。

☑︎ 点滴が本人にとって“つらい時間”になっていないか
☑︎ ご家族に強い不安や負担がないか
☑︎ 別の方法で穏やかに過ごせるサポートがないか

やめることは「何もしない」ではなく、「今の状態に合ったケアを再選択すること」です。

次は、実際に皮下点滴をやめる際に注意すべき点や、安全に進めるためのステップについて解説します。

 

皮下点滴をやり続けるリスクと過剰点滴の落とし穴

皮下点滴は有効なサポートである一方、「やりすぎ」によるリスクも無視できません。特に、漫然と続けてしまった場合、かえって猫の体を苦しめてしまう可能性もあるのです。

このセクションでは、皮下点滴を過剰に行うことで起こりうる問題や、注意すべき症状について詳しく解説します。

過剰な皮下点滴で起こること

点滴の量や頻度が猫の体に合っていない場合、次のようなトラブルを引き起こすことがあります。

☑︎ 胸水や肺水腫による呼吸困難
☑︎ 四肢やお腹のむくみ(浮腫)
☑︎ 点滴後に苦しそうにする、動かなくなる

「なんとなく続けていた」点滴が、実は猫の呼吸を圧迫していたというケースも珍しくありません。

こんなケースは要注意

以下のような状態に心当たりがある場合、過剰輸液(点滴のやりすぎ)になっている可能性があります。

☑︎ 点滴後に呼吸数が増えている
☑︎ 排尿量が極端に減っているのに、点滴を続けている
☑︎ 点滴量や頻度を長期間見直していない

獣医師に相談し、身体に合わせた量へと調整する必要があります。

対面診察のもとでの調整が大切な理由

在宅で点滴を続けていると、「このままでいいのかな?」と感じることもあるでしょう。ですが、見た目では分からない異変が起きていることもあります。

☑︎ 本当に今の量・頻度で体に合っているのか
☑︎ 呼吸や循環器に問題が出ていないか
☑︎ 点滴以外にできるサポートがあるか

対面で診察を受けることで、より正確な判断が可能になります。必要に応じて血液検査や聴診、触診などを行い、その子に合ったケア方法を見直していきましょう。

次は、皮下点滴をやめた後にどのようなケアができるのかについてお話します。

 

皮下点滴をやめた後のケアと過ごし方

皮下点滴をやめると決めたあとも、「本当にやめてよかったのかな」「これからどうケアすればいいんだろう」と不安になる方も多いでしょう。

ここでは、点滴をやめたあとにできるサポートや、日々気をつけたいポイントについてご紹介します。

食事・水分補給の工夫

点滴の代わりに、水分や栄養を少しでも摂れるような環境づくりが大切です。

☑︎ ウェットフードやスープタイプのフードを活用する
☑︎ 自動給水器やぬるま湯など、飲みやすい環境を整える
☑︎ 少量でも食べられるフードを複数用意する

食欲や飲水量が落ちている場合も、「食べやすさ・飲みやすさ」の工夫で改善することがあります。

体調の変化をどう観察するか

点滴をやめたあとは、脱水や尿量の変化、食欲低下などに注意を向けておきましょう。

☑︎ 皮膚のハリ(テントテスト)で脱水のサインを見る
☑︎ 歯茎の色や湿り具合を確認する
☑︎ 排尿の回数・量に変化がないかを記録する

これらのサインを日常的にチェックしておくと、異変に早く気づくことができます。

穏やかに見守るケアの心がまえ

皮下点滴をやめたあとは、“何かをしなくては”というプレッシャーを感じがちです。でも大切なのは、猫ができるだけ快適に、そして穏やかに過ごせることです。

☑︎ 静かな場所で休める環境を整える
☑︎ 声をかけたり撫でたり、安心感を与える
☑︎ 点滴がなくても「そばにいること」がいちばんのケア

飼い主さんの不安や葛藤も自然な感情です。ひとりで抱えずに、信頼できる獣医師や在宅ケアの専門家に相談しながら、その子らしい時間を支えていきましょう。

次は、通院が難しくなったときに選択肢となる「在宅緩和ケア」についてご紹介します。

 

在宅緩和ケアという選択──最期までその子らしく

病気が進み、通院が難しくなったとき、選択肢のひとつとして「在宅緩和ケア(ターミナルケア)」があります。これは、積極的な治療ではなく、痛みや不快感をやわらげながら、その子らしく最期の時間を過ごせるようサポートするケアです。

通院が難しくなったときの選択肢

腎不全が進行すると、移動や診察自体が大きな負担になることがあります。そんなときに在宅でのケアが選択できると、猫もご家族も穏やかに過ごせます。

☑︎ 車の移動や待合室でのストレスがなくなる
☑︎ 猫が安心できる「いつもの場所」で診療を受けられる
☑︎ 病院に行けないからといって、ケアを諦めなくていい

家族とともに過ごす最期の時間

最期まで一緒にいたい──これは多くのご家族の願いです。在宅緩和ケアでは、治療よりも「一緒にいる時間」や「過ごし方」に重きを置きます。

☑︎ 点滴や投薬を必要最低限にして、苦痛を減らす
☑︎ 食べられるものを一緒に探してあげる
☑︎ 不安や痛みをやわらげるケアを一緒に選んであげる

穏やかな時間の中で「ありがとう」と伝える準備ができることも、在宅ケアの大きな意味です。

往診専門動物病院に相談するメリット

在宅緩和ケアは、獣医師との連携がとても大切です。往診を専門とする動物病院では、その子の状態に合わせたサポートが受けられます。

☑︎ 必要に応じて点滴や投薬の調整を受けられる
☑︎ ご家族の不安や悩みに寄り添ったアドバイスがもらえる
☑︎ 看取りの時期も含めて「最後まで一緒に考えてくれる」

「もう病院には行けないけど、まだやってあげられることはある」──そう思えることは、ご家族にとっても大きな支えになるはずです。

次は、この記事のまとめとして、皮下点滴のやめどきと穏やかなケアについて整理します。

 

まとめ|皮下点滴のやめどきと穏やかなケアを考える

猫の腎不全における皮下点滴は、進行する病気と上手に向き合うための大切なケアです。

しかし、点滴を「いつまで続けるか」「そろそろやめるべきか」と迷ったときは、治療のゴールを見直す大切なサインでもあります。

☑︎ 点滴は延命のためだけではなく、生活の質を守る手段
☑︎ やめる判断は「諦めること」ではなく、「その子らしさ」を大切にする選択
☑︎ 獣医師と一緒に、猫と家族にとってベストなケアを考えることが何より大切

ご家族が「本当にこれでよかったのか」と迷わないように──。 猫ちゃんが「ありがとう」と安心して旅立てるように──。

点滴をやめるかどうかは、“手放す”のではなく“寄り添い方を変える”ということ。 その一歩を、どうか一緒に考えていきましょう。

ご相談・お問い合わせはこちら

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運営・執筆者情報

往診専門動物病院 わんにゃん保健室
獣医師 江本宏平
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル
受付時間:10:00〜19:00(不定休)
TEL:03-4500-8701(※留守電にメッセージをお願いします)
MAIL:house.call@asakusa12.com

東京都内を中心に往診専門の動物病院として、緩和ケア・ターミナルケアを提供している「わんにゃん保健室」です。
私たちは、通院が難しいワンちゃん・ネコちゃんやそのご家族に寄り添いながら自宅でできる医療・ケアを大切にしています。

往診専門だからこそできること

一般的な動物病院とは異なり、わんにゃん保健室では
ご自宅で診療を行う在宅医療を専門としています。

  • 初診では、飼い主様のお話をじっくりお聞きするために、2〜3時間かかることもあります。
  • 通常の病院よりも症例数は少ないですが、1件1件に時間と想いを込めた診療を心がけています。
  • 飼い主様と信頼関係を築きながら、ペットのQOL(生活の質)だけでなく、飼い主様のQOLも大切 

ターミナルケアで最期まで寄り添う

私たちが行っているターミナルケアでは、「治すこと」だけではなく、
最期までどう寄り添えるか」を重視しています。

状態が大きく改善しなくても、
「穏やかに過ごせている」
「家族のそばで安心して過ごせている」

そんな時間を提供できるよう努めています。

例えば、ある日当日のご予約で処置に伺ったワンちゃんが、
その翌日に旅立ったケースがありました。

飼い主様は、「自宅で苦しまずに腕の中で看取ることができた」と、
涙ながらに感謝の言葉をかけてくださいました。
在宅で看取るという選択肢を持つことで、飼い主様の心にも大きな意味があるのだと印象に残っています。

在宅で、医療も介護もリハビリも

当院の往診では、単に医療行為をするだけではありません。
・介護   ・リハビリ  ・食事や生活環境のアドバイス
といったトータルケアを飼い主様と一緒に考え、実践していきます。

「できる限り自宅で過ごさせてあげたい」
「病院に通うストレスから解放してあげたい」
そんな飼い主様の想いを、実現するためのパートナーでありたいと願っています。

通院が難しいご家族のために

高齢のペット、介護が必要なご家族、交通手段の問題など、
様々な理由で動物病院への通院を断念せざるを得ない方がいらっしゃいます。

  • 「点滴のために毎回通院させるのが負担」
  • 「集中的な治療よりも、穏やかな時間を大切にしたい」
  • 「自宅で最期まで見守りたいけれど、苦しそうで心が痛む」

このような想いに寄り添い、ご自宅でできる医療を提供することこそが、私たちの使命です。

東京でペットの往診・在宅医療をご希望の方へ

「わんにゃん保健室」では、東京都内を中心に往診対応を行っています。
通院が難しいワンちゃん・ネコちゃん、在宅での緩和ケアをご希望の方は、ぜひご相談ください。
ペットも飼い主様も、最期まで安心して寄り添えるように
"その子らしく最期まで生きる"を、一緒に支えていきます。

東京都内を中心に活動する犬猫専門の往診動物病院「わんにゃん保健室」です。
私たちは、「最良の在宅医療を届ける」ことをモットーに、飼い主様とペットの双方にとって安心できる医療を提供しています。

ご家庭ごとの「最適な治療方針」を大切に

当院では、緩和ケア・ターミナルケアに特化した往診診療を行っております。
ですが、「この治療が正解です」と押しつけることは決してありません。
ご家族様の想いにしっかり耳を傾け、必要に応じて獣医師としての専門的なアドバイスを行いながら、
その子に合った診療方針を一緒に考える――それが「わんにゃん保健室」のスタイルです。

緩和ケアは高齢の子だけのものではありません

「緩和ケア=老犬・老猫」と思われがちですが、それだけではありません。
若いうちに慢性疾患や難治性の病気を抱えてしまった場合も、
早期から緩和ケアを取り入れることで、苦痛を最小限に抑え、その子らしい日々を過ごすサポートが可能です。
ペット自身が「どうしたいか」を言葉で伝えられないからこそ、ご家族の「どう過ごさせてあげたいか」が何より大切になります。

飼い主様へのケアも大切にしています

ペットの緩和ケアやターミナルケアでは、ご家族様への精神的・身体的負担も大きくなります。
人の医療では「ご家族も第二の患者」と言われるように、チームで支援する体制が整っていますが、
動物医療の現場では、まだその仕組みが十分とは言えません。
だからこそ、私たちは飼い主様にもしっかり寄り添い、心のケアにも力を入れています。

入院だけが「正解」ではありません

医療の進歩により、さまざまな治療が可能になった今、「最後まで病院で治療する」ことが正しいと考えられる風潮もあります。
ですが、愛するペットが自宅で家族と一緒に過ごし、いつもの場所で安らかに最期を迎えることも、間違いなくひとつの"最良の医療"です。
私たちは、ご家庭ごとに、ペット毎に、過ごし方もそのケアの仕方も変えるオーダーメイドの診療プランが必要だと思っています。
入院では叶わない、温かな時間がそこにはあります。
周囲の声に流されるのではなく、ぜひご家族皆さんでしっかりと話し合い、
うちの子にとっての最良の選択は何か」を見つけてほしいと願っています。

東京都内で犬・猫専門の往診動物病院をお探しの方は、ぜひ「わんにゃん保健室」へご相談ください。
緩和ケアや在宅医療のことなど、どんな小さなことでも構いません。
あなたと大切な家族であるペットが、安心して過ごせるように全力でサポートいたします。

東京23区を中心に、往診にて獣医療を提供しているわんにゃん保健室です。
ご要望にお応えして、往診エリアを順次拡大中です。
都内にお住いの方はもちろん、近隣エリアの方もお気軽にお問い合わせください。

ペット、そして飼い主様にしっかりと寄り添う動物病院

わんにゃん保健室では、わんちゃんや猫ちゃん、そして飼い主様に寄り添うことを最重要にしています。治療方法や治療方針についても、獣医師のほうから方針を押し付けるのではなく、まずは飼い主様がどのようにされたいか、わんちゃんや猫ちゃんにとってどの方法が苦痛がないか、という点を第一にしています。

勿論、飼い主様からアドバイスを求められたときは
しっかり、プロフェッショナルとして回答、対応します。
飼い主様やペットたちが困らないよう、獣医師や愛玩動物看護師の知識・スキルがあるのです。

ですが、
「絶対にこういった治療法を試すべきです」
「うちの動物病院の方針に従ってください」
といった対応をされた飼い主様は、どう考えるでしょうか。

プロの言葉だからと信じて、その方針に従ってくれるかもしれません。
ですが結果、わんちゃんや猫ちゃんが苦しむ結果になってしまえば
飼い主様も、ペットも、不幸せにしてしまうのです。

わんにゃん保健室では、飼い主様・ペットを尊重し寄り添うことでより良い治療方法を模索しています。
そのおかげで、飼い主様から
「わんにゃん保健室さんのおかげで、良い時間を過ごせました!」
「ペットのことを第一に考えてくださって、嬉しいです」

といったお声をいただけています。

せっかく仕事をするのであれば、喜ばれる仕事がしたい。
それが、わんにゃん保健室の方針です。

緩和ケアやターミナル期のケアは、迷われることも多いと思います。
何が最善の治療方法なのか、この子に対して何をしてあげられるのか、
飼い主様やご家族の皆様は、きっとそう思い悩まれているでしょう。

わんにゃん保健室は、そんなご家族に寄り添います。

猫の腎臓病は在宅緩和ケアが可能(2025年5月)

猫の慢性腎臓病は進行性の疾患であり、内服薬や皮下点滴などを含めた期的な管理が必要です。特に高齢の猫にとって、頻繁な通院は大きなストレスとなることがあります。本記事では、15歳7ヶ月の日本猫、ロッキーくんの症例を通じて、在宅での緩和ケアの可能性とその実践について詳しく解説します。

 

ロッキーくんの症例紹介

東京都中央区にお住まいの日本猫、15歳7ヶ月の去勢雄ロッキーくん。3年前にかかりつけ動物病院で腎不全と診断されました。診断当初は腎臓ケアのフードやサプリメントによる治療が中心でしたが、徐々に血液検査結果の悪化がみられ、血管拡張薬やラプロスの投与が開始されました。

さらに病状が進行するにつれ、皮下点滴が必要となり、通院回数も最初は週1回から週3回へと増えていきました。しかし通院後はぐったりして寝込んでしまう日が続き、ご家族は「これ以上の通院はストレスになる」と判断し、在宅緩和ケアへの切り替えを決断。当院へのご相談をいただきました。

初診ではこれまでの治療経過や現在のご様子、ご家族が希望する今後の診療方針を細かくお伺いするカウンセリングからスタート。特に呼吸状態の悪化が気になったため詳細に状況をお聞きすると、体重2.3kgのロッキーくんに対し1回150ml以上の皮下点滴を行っていたことがわかりました。

すぐに超音波検査(エコー検査)を実施したところ、胸水の貯留を確認。もともと心臓には問題がないと聞いていたものの、診察では心雑音も確認できました。このことから、腎臓病の管理に集中するあまり、循環状態の悪化に気づかず過剰輸液になってしまっていたと考えられました。

さらに動物病院の診療体制からも、多くの獣医師による引き継ぎの中でプランが固定化されていたリスクも考えられました。当時の体重は4.5kgあったため、当初の計画は理解できましたが、その後の体重変化に応じた見直しが行われていなかったようです。

このような経緯を経て、ご家族のご希望に沿いながらロッキーくんの在宅緩和ケアがスタートしました。現在は1回60mlの皮下点滴を1日2回、ご自宅で行っていただきながら、月1回の往診と血液検査で状態を管理しています。

初期の在宅緩和ケアと症状改善

在宅緩和ケアに切り替えた直後のロッキーくんは、呼吸状態が悪く全身のだるさも顕著でした。まずは過剰輸液による循環負担を軽減するため、皮下点滴の量を標準量に合わせ、1回60mlを1日2回に分けて投与するプランを立てました。

この変更により、呼吸の速さや努力性呼吸(肩で息をする動き)が徐々に改善。胸水の貯留も少しずつ減少傾向となり、ロッキーくん自身の活動性もわずかに回復していきました。

加えて、腎機能の安定化と心負担軽減のために、内服薬やサプリメントの種類・量も細かく調整。血圧管理や利尿のバランスも慎重に見ながら治療を進め、ご家族には日々の観察ポイント(呼吸数・食欲・体重・排尿量など)を共有しました。

通院の負担から解放されたことはロッキーくんにとって非常に大きく、ご家族からも「以前より目に見えて落ち着いた」「呼吸も楽そうで安心して過ごせるようになった」とのお声をいただきました。

在宅ケア開始から約2週間後には、食欲・元気ともに安定。腎不全に対する治療を継続しながら、ストレスの少ない生活環境を整えることができました。

 

在宅管理のメリットと課題

在宅緩和ケアに切り替えたことで通院ストレスから解放され、診療のストレスも最小限にすることができ、また日々の変化についても二人三脚で歩んでいけることも大きなメリットのようでした。指示は口頭のこともあれば、基本はメールでの指示となるため、ご家族にとっても、どんな指示だったかのか、相談結果などを忘れてしまった時に、文書に戻れるという安心感があったとのことでした。

課題としては急変時の対応です。緩和ケア〜ターミナルケア、そして看取りといった後半のステージでは、急変はつきものです。その時に、1.救急を対応してくれる動物病院に飛び込むか、2.自宅でできる範囲の準備をしておき対処する、の2択となります。

まだ緩和ケアに切り替えたばかりの頃であれば、1を選ばれることがほとんどですが、病状の進行とともに、2を選ばれることが多くなり、ターミナルケアでは、みんなが2を選択されます。

もし1を選ぶ場合には、すでにかかりつけだった動物病院にお願いすることが多いですが、別の動物病院が関与しているのであればうちは診ない、とする動物病院も多く存在するのが現実です。

このように、在宅緩和ケアに切り替えることによるメリットもあれば、デメリットも存在します。

また、往診と救急は相性が悪いということをご理解ください。

急変時の判断はご家族に委ねられるため、日頃からの方針決定や、担当の先生との意思疎通はしっかりと行っておきましょう。

 

皮下点滴の調整と安全な管理

腎不全管理において皮下点滴は非常に重要な手段ですが、過剰輸液による副作用にも注意が必要です。ロッキーくんのケースでも、当初は過剰な点滴量が原因で胸水貯留を起こしてしまいました。在宅緩和ケアでは、安全な範囲での適正な投与量と頻度の調整が不可欠です。

過剰輸液のリスク
  • 胸水貯留や浮腫による呼吸苦
  • 心雑音の発現や循環負荷増加
  • 腎不全以外の合併症リスク
安全な皮下点滴管理のポイント
  • 体重1kgあたり10〜30ml/回を基準に設定
  • 猫の状態に応じて分割での投与を選択
  • 注射部位や針の選択、衛生管理を徹底
ご家族と二人三脚の治療
  • 初回は往診時に点滴方法を丁寧に指導
  • 不安があればオンライン相談やメールでフォロー
  • ご家族の精神的な負担を最小限にしつつ継続治療をサポート

現在ロッキーくんは1回60mlを1日2回という少量・高頻度投与で、腎臓への負担を抑えながら安定した管理が続けられています。

 

血液検査と病状モニタリング

腎不全の管理において、定期的な血液検査による病状の把握は不可欠です。在宅緩和ケアにおいても、月1回の血液検査で状態をモニタリングし、適切な治療調整を行っています。

主な検査項目
  • BUN(血中尿素窒素)・クレアチニン:腎機能の評価
  • SDMA:早期の腎障害検出
  • リン・カリウム・ナトリウムなど
検査データに基づく治療調整
  • 皮下点滴量や頻度の見直し
  • リン吸着剤を含めた投薬内容の調整
  • 食事療法やサプリメントの再評価
ご家族への説明とサポート
  • 検査結果は丁寧にご説明し、ご家族と今後の治療方針を相談
  • 体重や食欲の変化なども併せて総合的に判断
  • 常に最新の状態を共有し、ご家族と二人三脚のケア体制を継続

ロッキーくんのケースでも、月1回の血液検査によって過剰輸液の早期発見ができ、その後の適正管理につなげることができました。

 

 

在宅緩和ケアの進め方と注意点

在宅緩和ケアは、ご家族と獣医師が密に連携しながら進めていきます。ロッキーくんのケースでも、ご家族が主体となり、適切な医療サポートを受けながら在宅でのケアを続けています。

ご家族への情報提供と教育
  • 皮下点滴の手技や注意点を事前にしっかり指導
  • 症状の変化や異常サインの早期発見方法を説明
  • 日常的なモニタリング項目(体重、食欲、排尿量など)の確認
在宅医療の安全確保
  • 過剰輸液や低血圧などのリスクへの注意喚起
  • 感染予防のための衛生管理方法の徹底
  • 緊急時に備えた体制や対応方法の指導を提供
ご家族と獣医師の連携
  • 日常の様子を定期訪問時に報告
  • 月1回の往診および検査結果による治療計画の調整
  • 疑問点や不安を随時相談できる安心の体制づくり

このように在宅緩和ケアは、ご家族の協力と獣医師のサポートによって成り立ち、ロッキーくんも現在まで良好なコントロールが維持されています。

 

 

急変時の対応と準備

慢性腎臓病の在宅緩和ケアでは、急な体調変化にどう対応するかが非常に重要です。ロッキーくんのご家族も、事前にしっかりと準備を行い、不測の事態に備えていました。

事前に備えておくべきこと
  • 急変時の症状やサイン(ぐったり、食欲不振、呼吸異常など)を理解する
  • 急変時に緊急で対応してくれる動物病院の連絡先を調べておく
  • 皮下点滴や薬の量や種類、投与量、投与間隔などを再確認
  • 状態の悪化が続く場合、ご家族の意向に応じて看取りの準備を進める

 

 

わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

ロッキーくんのように、慢性腎臓病の在宅緩和ケアをご希望されるご家族のサポートを、わんにゃん保健室では積極的に行っています。

ご家族とのカウンセリング
  • 初診時に過去の治療歴や現在の状態を詳細にヒアリング
  • 今後の診療方針や目標を明確に設定
  • ご家族の意向を最大限尊重したプラン作成
在宅管理への具体的な支援
  • 皮下点滴や投薬のご家族への指導
  • 緊急時の判断のための家族会議のすすめ
  • メールを活用した継続的な相談体制
最期までのトータルサポート
  • 病状の変化に応じた診療内容の調整
  • ターミナルケアや看取りへの準備・支援
  • ご家族の不安や負担を軽減するための伴走支援

在宅緩和ケアでは、ご家族と動物病院の信頼関係と密な連携が最も重要です。わんにゃん保健室では、ロッキーくんのご家族のように、自宅で最期まで穏やかに過ごしていただけるよう全力でサポートしています。

 

まとめ

ロッキーくんは、慢性腎臓病という長い闘病を経ながらも、ご家族の愛情と努力によって、自宅で穏やかな時間を過ごすことができています。

  • 通院によるストレスから解放されることで、精神的・身体的な負担が軽減された
  • 適切な皮下点滴量と在宅モニタリングにより、病状のコントロールが可能になった
  • ご家族と獣医師が二人三脚で在宅ケアを継続できたことで、最期までの生活の質(QOL)が保たれた

慢性腎臓病は完全な治癒が難しい疾患ですが、ご家族の協力と在宅ケアの工夫次第で、ペットにとっての「穏やかな日常」を実現することができます。

わんにゃん保健室では、東京を中心に通院が困難となった猫ちゃん・わんちゃんのご家族のもとへ往診に伺い、在宅緩和ケアの選択肢をご提案しています。どんな小さなご不安でも、まずはお気軽にご相談ください。

猫の肺腫瘍と胸水の向き合い方(2025年5月)

猫の肺腫瘍は高齢猫に多く見られる疾患の一つであり、進行に伴って胸水貯留を引き起こすことがあります。胸水がたまると、猫は呼吸困難を訴えるようになり、食欲や活動性にも大きな影響を及ぼします。今回は、肺腫瘍による胸水貯留と向き合いながら、在宅での緩和ケアを選択された16歳の猫ちゃん、東京都江戸川区在住のキキちゃんのお話をご紹介します。

通院が困難となった今、どのような選択肢があり、胸水抜去は必須なのか、それとも他の方法で症状を緩和できるのか、ご家族様が取るべき行動と心構えをお伝えします。

目次

 

胸水がたまるということ

猫の肺腫瘍が進行すると、胸腔内に液体(胸水)が貯留することがあります。これは、腫瘍が肺や胸膜を圧迫・浸潤することで血液やリンパの流れが滞り、液体が溜まるためです。胸水の貯留が進行すると、肺が圧迫され、呼吸困難を引き起こすことがあります。

胸水がある時に見られる症状
  • 呼吸が速く浅くなる(呼吸促迫、尾翼呼吸、開口呼吸)
  • 安静時でも肩で息をするような動作
  • 食欲の低下、元気の消失
胸水がたまる原因
  • 肺腫瘍や胸膜腫瘍の進行
  • リンパの循環障害
  • 炎症による滲出液の産生増加
診断のために行う検査
  • 超音波検査(胸腔内の液体確認)
  • X線検査(肺の圧迫評価)
  • 血液検査(全身状態の把握)

猫の呼吸状態の異常に気づいたら、胸水の有無を含めた早急な評価が必要です。ご家族が気づく呼吸の変化が、命をつなぐきっかけになることもあります。

 

 

胸水抜去のメリットとリスク

胸水が貯留している場合、呼吸状態を改善するために胸水の抜去を検討することがあります。適切に胸水を抜去することで、肺の圧迫が軽減し、呼吸が楽になります。ただし、処置にはリスクも伴います。

胸水抜去のメリット
  • 肺が拡張し、呼吸が安定する
  • 食欲や元気の回復が期待できる
  • 苦しみを軽減できることで、ご家族の精神的負担も減少
胸水抜去のリスク
  • 抜去時の痛みと恐怖
  • 鎮静処置による呼吸抑制や循環不全
  • 大量の胸水を急速に抜去した場合の再膨張性肺水腫の可能性
在宅で抜去する場合の配慮
  • 状態の安定している時間帯に実施
  • 必要に応じた軽度鎮静を併用
  • 胸水抜去後の酸素管理を強化

胸水抜去は苦しみを取り除くための有効な処置である一方で、実施するかどうかはご家族の意向とその子の状態によって決まります。命をつなぐための選択肢の一つであると同時に、最期をどう過ごさせてあげるかを考える場面でもあります。

 

抜去しないという選択

胸水抜去は有効な対処法ではありますが、全ての症例において「必ず抜去すべき」とは限りません。猫の状態や性格、そしてご家族の希望によっては、抜去せずに緩和ケアを行うという選択肢もあります。

抜去を避ける理由
  • 重度の呼吸不全により鎮静のリスクが高い
  • 痛みによる強いストレスやトラウマ
  • 過去の経験から胸水抜去への強い拒否反応がある
代替手段としての治療
  • 利尿剤の増量(例:フロセミドなど)
  • ステロイドによる炎症抑制と腫瘍縮小の期待
  • 酸素濃度の管理強化(酸素発生装置・酸素ハウス)
在宅ケアに必要な準備
  • 高濃度酸素が維持できる環境整備
  • 状態の変化に応じた頓服薬の準備
  • こまめな呼吸数と様子のモニタリング

抜去を行わない場合でも、猫にとって「穏やかに過ごせる環境」を整えていくことは可能です。何がその子にとって最も苦痛の少ない道か、ご家族と共に考えることが在宅緩和ケアの本質です。

 

 

ご家族が選んだ緩和ケアとその工夫

ご家族は、「できるだけ苦しい処置を避けたい」「最後まで家で穏やかに過ごさせたい」という思いから、在宅緩和ケアという選択をされました。抜去を行わない代わりに、さまざまな工夫を重ねて呼吸状態の管理を行いました。

酸素環境の見直しと強化
  • 酸素濃度を高く保てるよう、酸素発生装置を1台追加
  • 密閉性の高い酸素ハウスの見直し
  • 猫が安心できる場所に酸素供給を集約(ベッドやお気に入りのスペース)
薬の調整による緩和ケア
  • 利尿剤の用量を調整し、胸水のさらなる貯留を抑制
  • ステロイドによる抗炎症作用と腫瘍の進行抑制
  • 鎮静や呼吸緩和を目的とした内服薬・注射薬のバランス調整
猫に寄り添った生活環境の整備
  • 酸素ハウスとトイレの距離を縮め、移動の負担を軽減
  • 床に滑り止めマットや低反発マットを敷き、動きやすくする
  • 好物の匂いを活用して、少しでも食欲を引き出す工夫

胸水抜去という選択をしない分、ご家族の工夫と努力で「穏やかな時間」を守っていく。その姿勢が、キキちゃんにとっての何よりの安心だったはずです。

 

 

最期の日の話

キキちゃんが旅立つ当日、ご家族はいつもと同じように朝のケアを行い、声をかけながら一日を過ごしました。呼吸は浅く早いものの、目を閉じて穏やかに横たわっていました。

酸素室の中で静かに寝ていたキキちゃんに、ご家族が「おはよう」と声をかけると尻尾と耳で反応を見せてくれ、お気に入りのウェットフードを鼻先に持っていくと、ほんの少しだけ舐めてくれたそうです。

午後に入り、呼吸がゆっくりになり、全身の動きも少なくなってきました。ご家族がそっと手を握っていたところ、一度だけお母さんの手をぎゅっと押し返してくれたとのことでした。

その後、軽くひきつけるような動きを数秒見せ、苦しむ様子もなく眠るように息を引き取ったとのことでした。

通院をやめると決めた時から、キキちゃんの表情が穏やかだったと話してくれました。きっとご家族の心が決まったことで、心の反応が穏やかになったことと、それがキキちゃんに伝わり、安心を与えられたんだと思っています。

動物も、そして人も、最後の時間をどう過ごせるかは、その一生を象徴する大切な時間です。キキちゃんのように、愛されながら、静かに、穏やかに過ごすこと。それが在宅緩和ケアの一つの理想です。

 

 

胸水抜去をしないという決断とその理由

キキちゃんの胸水貯留が確認された際、通常であれば胸水抜去を行うことで呼吸の改善が期待されます。しかし、胸水抜去には以下のようなリスクや負担が伴います。

  • 胸水抜去は肋骨の間に針を刺すため、大きな痛みを伴う
  • 鎮静処置が必要となるが、状態の悪い猫に対してはリスクが高い
  • 処置によるストレスやトラウマが残る可能性がある

これらの理由から、ご家族は胸水抜去を行わない選択をされました。代わりに、以下のような在宅での緩和ケアを進めました。

  • 利尿剤とステロイドの用量調整を行い、胸水の貯留を抑制
  • 酸素濃度を高めるために、酸素発生装置や酸素ボンベを追加設置
  • 内服薬を中止し、すべての薬剤を注射薬に切り替えて皮下点滴で投与

このようなケアにより、キキちゃんは呼吸状態が安定し、穏やかな日々を過ごすことができました。胸水抜去を行わないという決断は、ご家族とキキちゃんにとって最善の選択であったと考えられます。

 

 

在宅酸素療法の導入とその効果

呼吸状態が悪化したキキちゃんにとって、在宅酸素療法は重要な選択肢となりました。通院が難しい状態でも、自宅で酸素環境を整えることで、呼吸の補助が可能になります。

使用した酸素療法機器
  • 酸素発生装置(1〜2台)
  • 酸素ハウス
  • 必要に応じて酸素ボンベを追加導入

これらの機器を活用し、酸素濃度を安定的に維持することで、呼吸の苦しさを軽減しました。

設置と運用の工夫
  • 日の当たらない場所に酸素ハウスを設置し、温度が上がりすぎないようにする
  • 温度だけでなく湿度管理を併せて行い、快適な環境を維持
  • モニタリングにより、呼吸状態に合わせた酸素濃度の調整

ご家族と相談のうえ、無理のない運用方法を構築し、継続的なサポートを実現しました。

在宅酸素療法の効果
  • 呼吸促迫が改善し、落ち着いて横になる時間が増加
  • 食欲と元気が徐々に回復
  • ご家族が目の届く環境で見守れる安心感

キキちゃんにとって、在宅酸素療法は「安心して過ごせる時間」をもたらす大きな支えとなりました。

 

 

看取りを迎えるということ

キキちゃんの旅立ちは、ご家族にとって心に残る大切な時間となりました。通院という大きなストレスから解放され、自宅という安心できる場所で最期を迎えることは、猫にとってもご家族にとっても、穏やかな選択だったのだと思います。

在宅で看取るという決意
  • キキちゃんの呼吸が悪化したタイミングで、ご家族は通院を断念
  • 病院での処置を受けるよりも、自宅で寄り添いたいという強い思い
  • 在宅緩和ケアを選んだことへの後悔はなく、むしろ安心感があったとお話しされていました
最期の瞬間にできること
  • そばに寄り添い、優しく声をかける
  • 手を握ったり、背中を撫でたりといったスキンシップ
  • 呼吸が落ち着くよう酸素環境を保ち、静かな環境を整える

こうした「できること」を一つひとつ行っていただくことで、苦しさを最小限に抑え、穏やかな旅立ちへとつなげていくことが可能です。

在宅での看取りの意味
  • 病院という非日常ではなく、日常の延長にある時間で看取れる
  • 介護の時間を通じて、より深く絆を感じることができる
  • 最期の姿がトラウマになりにくく、後悔が少ない

キキちゃんの旅立ちが、悲しみだけではなく、「ちゃんとできた」という安堵と誇りに変わるよう、私たちは全力でサポートしています。

 

 

まとめ

キキちゃんは、肺腫瘍による胸水貯留や呼吸困難と向き合いながら、ご家族とともに在宅での時間を大切に過ごしてきました。

通院の限界を迎えたタイミングで在宅緩和ケアに切り替えたことで、治療の継続だけでなく、穏やかな生活と尊厳ある最期を実現することができました。

  • 肺腫瘍による胸水貯留には、在宅でも対応が可能なケースがある
  • 呼吸が苦しい状態でも、酸素療法や皮下点滴で負担を軽減できる
  • 通院が困難になっても、適切なケアと見守りで「穏やかな日々」を支えられる

呼吸の異変や日常の違和感を覚えた時、ご家族の気づきが命をつなぐきっかけになります。キキちゃんのように、ご家族に見守られながら、安心できる場所で穏やかに過ごすこと。

それが、私たちが目指す在宅緩和ケアのかたちです。

東京都江戸川区を中心に、通院が難しくなった猫ちゃん・わんちゃんのご家族のもとへお伺いしています。どんな小さな不安でも、どうか一度ご相談ください。

 

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〜犬猫の在宅緩和ケア専門〜
往診専門動物病院わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
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わんにゃん保健室の獣医療について

東京都内を中心に、ワンちゃん・猫ちゃんのペット往診を行っているわんにゃん保健室です。
往診専門動物病院として、飼い主様とペットの生活をサポートいたします。

特に犬・猫の緩和ケア・ターミナル期のケアについて特化しており、
ペットを含むご家族皆さんにとって、最良の選択となるよう
様々な面からお手伝いしております。

ご自宅でのペットの緩和ケア・ターミナルケアを行っている飼い主様で
お困りのことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。

最良の獣医療を提供するために必要なこと

コミュニケーションや報連相をしっかりと行うことで、結束力が高まります。
何故わんにゃん保健室がここまで『コミュニケーション』にこだわるかと言うと、
様々な情報共有や信頼の有無が、提供する医療のクオリティにも影響を与えると考えているからです。

勿論、情報共有や信頼を高めたからと言って、問答無用で良い獣医療を提供することができるわけではありません。
獣医療を提供する立場としてこれまで学んできたことや重ねた経験、そして弛まず学んでいく姿勢こそが 良い獣医療を提供する大前提となります。

ですが、飼い主様との信頼関係を築けなければ、
ペットにとって、そして飼い主様にとってベストとなる獣医療を提供することはできません。

ペットは言葉を話せません。鳴き声や表情などから、状況を察していく必要があります。
飼い主様から信頼を得られなければ、どのような治療方法を提案しても 受け入れてもらえるはずがありません。
お互いに信頼し合い、ペットの安らかな生活を第一に考えてこそはじめて 最良の獣医療が実現できます。

わんにゃん保健室では、飼い主様からのヒヤリングに重点を置き、
まずはお話を聞くところから始めています。
現状でお困りのことはもちろん、少し気になっていることや、今後の事で不安に思っていることなど、
すべてわんにゃん保健室にお話しください。

わんちゃん、猫ちゃんは皆様の大切な家族の一員ですが、全てを家族だけで背負う必要はありません。
獣医療のプロフェッショナルとして、これまでの経験をもとに、皆様ご家族がより良い方向に向かっていけるよう、全力でサポートいたします。

東京都内を中心に在宅緩和ケアに特化した往診専門で診療を行っている「わんにゃん保健室」です。
当院は、犬や猫などのペットに特化した動物病院として、
ご自宅にお伺いし、その子に合った緩和ケア・ターミナルケアを提供しています。

「病院に連れて行きたいけれど、ペットがストレスを感じてしまう...」
「高齢で通院が難しい...」
「急な体調不良、でも家を離れられない...」

そんな時にこそ、私たちの往診がお役に立てます。
わんにゃん保健室では、毎日さまざまなご家庭のご事情に寄り添いながら、
ペット一匹一匹の年齢や性格、生活環境、ご家族の思いに合わせて診療を行っています。

"ご自宅でできる最善の医療"を一緒に考えることが、私たちのスタイルです。

今回は、実際に当院をご利用いただいた飼い主さまから寄せられたお声をご紹介します。

飼い主さまからのお声

【M様】

高齢の猫が腎不全になり、病院に点滴で通っていましたが、ストレスなのか帰宅後元気がなくなるのでどうにかストレスがかからない方法はないかと探したところ、こちらの病院と出会いました。
とても親切に説明をしてくれ、こちらが納得し理解するまで話をしてくれました。
診察後も普段通りご飯も食べてくれてとても感謝しています。
往診て凄いなと思いました。お願いして本当に良かったです。

【U様】

我が家の犬は要介護で、これまでかかった動物病院も良い先生でしたが、こちらの先生は圧倒的に良い先生です。

ペットの健康状態、飼い主の生活スタイルに合わせた方針を提案していただけます。室内レイアウトや点滴の仕方など、飼い主の不安への対応策を丁寧にご提案してくださいます。

また、とても言いづらかったんですが、家蔵みんなにもう一度説明をしてほしいと相談したところ、快く承諾してくださり、家族が揃う日程を先生の方から伺ってくれて、とても安心しました。本当にこんな先生いらっしゃるんだ...と思うくらい、とても面倒見の良い先生です。

通院型の動物病院では、私自身も疲弊しきっていたと思いますが、先生のおかけで人間側も生活を保てています。1回の診察費は高額ですが、個人的にはなんとなくで流されてしまう動物病院の診察よりも、いっぱい相談に乗ってくれる江本先生にお願いして本当によかったです。
先生のお人柄も明るくとても優しい方だと思うので、ペットも人間も負担が少ないと思います。緩和ケアで悩んでいる方には、江本先生を推薦したいです。

【N様】

病院に行けなくても自宅で病院と同様に治療をしていただけることに、感謝しています。初めてお願いした時は、発作を起こして激しく苦しむ姿を見るだけで、どうすることもできず絶望していた時に家に来て貰え本当に救われました。

今は2代目がお世話になっていますが、獣医の先生、看護師さん、全員プロ意識が非常に高く本当に頼もしいです。
とても仲が良く、明るく元気でエネルギッシュな方たちで、私もいつも元気をいただいています。常に相談にのってくださり、まずは動物の状態をきちんと教えてくださり、治療も出来ることと出来ないことをちゃんと教えてくださいます。

その上で私達、飼い主がどうしたいか?を良く聞いてくださり、みんなが幸せになれる治療方法を提案してくださいます。
安心して任せられるので、これからもずっとお願いしたいと思っています。

わんにゃん保健室よりメッセージ

往診だからこそできる医療があります。
わんにゃん保健室では、単に治療を行うだけでなく、ペットと飼い主さんの"心に寄り添うケア"を大切にしています。
最期までその子らしく生きられるよう、QOL(生活の質)を尊重した緩和ケア・ターミナルケアを実践しています。

ご自宅という安心できる環境の中で、その子にとって本当に必要な医療を、一緒に考え、寄り添いながら提供いたします。
私たちは、最期のその時まで、飼い主さまとペットのそばにいる存在でありたいと願っています。

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猫の肥大型心筋症と在宅緩和ケア(2025年4月)

心臓病を抱える猫にとって、「通院による負担」は病状を大きく左右する重要な要素です。特に、肥大型心筋症は進行とともに胸水貯留や呼吸困難を引き起こす可能性があり、病気自体の重症度だけでなく、日々のケアの在り方が予後を左右します。

今回ご紹介するのは、東京都内に暮らす13歳の日本猫・キキちゃん。かかりつけで心臓病と診断され通院を続けていましたが、ある日を境に、通院後の疲弊がひどくなり、薬も飲ませられなくなってしまいます。

ご家族は、治療をあきらめたのではなく、「別の形でのケア」を模索し、在宅緩和ケアへと舵を切りました。

このブログでは、キキちゃんがどのように在宅緩和ケアへ移行し、どのようなサポートを受け、そして最期を迎えたのかを記録としてまとめています。通院が難しい猫と暮らすご家族に、ひとつの選択肢として届くことを願っています。

目次

 

キキちゃんの心臓病発覚とその経過

心臓病の診断と通院による管理

キキちゃんは2022年4月、かかりつけの猫専門動物病院にて肥大型心筋症と診断されました。当初は元気・食欲ともに安定していたため、3ヶ月に1回の通院で心臓の検査と内服薬の処方を受けながら経過観察を行っていました。

病状の悪化と通院の限界

2024年10月、急激な体調悪化が見られ、ぐったりとした様子にご家族も強い不安を抱かれました。どうにか通院したものの、胸水貯留が認められ胸水抜去を実施。その後、内服薬を継続するも、食欲がなく投薬が難しくなり、通院後もぐったりとした状態が続いたため、「通院が限界」と感じるようになったとのことでした。

在宅緩和ケアへの希望とご家族の決断

通院によるストレスや体調悪化のリスクを避けたいという思いから、ご家族は在宅での緩和ケアを希望されました。Web検索で当院を見つけてくださり、「この子にとって一番穏やかな選択を」と、往診での在宅ケアへの切り替えを決断されました。

 

呼吸の悪化と在宅ケアの開始

初診時の評価と胸水の状況

往診初診は、胸水抜去から10日後でした。キキちゃんは玄関まで迎えに来てくれるほどの体力は残っていましたが、超音波検査では少量の胸水が確認されました。呼吸の状態を鑑みて、この日は抜去は行わず、経過観察としました。

投薬方法の変更:皮下点滴への切り替え

ご家族からの「口を開けるだけで呼吸が乱れてしまう」という訴えを受け、すべての内服薬を中止し、注射薬を希釈した皮下点滴への変更を決定しました。これにより、投薬時のストレスを最小限にしながら治療を継続する体制を整えました。

在宅酸素環境の整備

初診時に酸素発生装置1台と酸素ハウスを導入し、呼吸補助を行いました。在宅酸素環境は、呼吸状態の安定に重要な要素であり、以後の診療でも環境強化を適宜行っていく方針としました。

 

在宅ケアでの安定期

内服中止後のキキちゃんの変化

皮下点滴への切り替え後、キキちゃんは徐々に食欲と元気を取り戻し、ご家族の目にもはっきりとした改善が見られました。内服のストレスが軽減されたことで、体への負担も大きく減ったと考えられます。

再診時の胸水減少と呼吸安定

初診から1週間後の再診では、胸水はほとんど認められず、呼吸状態も落ち着いていました。この結果を受け、診療間隔を2週間に1回とすることに決定しました。

穏やかな日常の再構築

この間、キキちゃんはお気に入りの窓辺のベッドで過ごし、ご家族とゆったりとした時間を取り戻していました。治療の効果と在宅環境の整備が、安定した時間を作る大きな要因となりました。

 

 

胸水再貯留とその対応

4ヶ月後の状態悪化

安定していた在宅ケアから4ヶ月が経過した頃、キキちゃんの呼吸状態が再び悪化。再診を前倒しで実施したところ、超音波検査で胸水の再貯留が確認されました。

在宅胸水抜去と鎮静処置

猫ちゃんは胸水抜去の際に強い不安やストレスを感じやすいため、軽度の鎮静をかけて処置を実施しました。こうすることで、処置へのトラウマを軽減し、次回以降のケアをスムーズに行うことが可能になります。

酸素環境の再構築

呼吸状態をさらに安定させるため、酸素発生装置を追加でもう1台設置し、酸素ボンベの併用も開始。必要に応じて酸素濃度を調整できるようにし、安心して過ごせる環境づくりを強化しました。

 

 

頻回な胸水抜去と症状の変化

1週間ごとの胸水抜去

キキちゃんはその後、1週間に1回のペースで胸水の抜去が必要となる状態が続きました。抜去後は一時的に呼吸が落ち着くものの、数日で再び呼吸促迫が見られるようになってきました。

呼吸の安定が得られない状況

4回目の胸水抜去後には、抜去後も呼吸状態がなかなか安定せず、これまでの経過とは異なる反応が見られました。この段階で、胸水以外の要因による呼吸不全の可能性を疑いました。

胸水がないのに呼吸困難

再度3日後に往診を実施し、超音波検査を行ったところ、胸水はほとんど貯留していませんでした。これは、末期の肥大型心筋症においてよく見られる症状であり、胸水がそんなに溜まっていなくても呼吸困難が継続する状態でした。

 

 

最期の夜と静かな旅立ち

お母さんとの最後のふれあい

その夜、キキちゃんはお母さんの手をペロペロと優しく舐めてくれました。それはまるで、「ありがとう」と伝えているような仕草だったとのことでした。その仕草に、お別れを感じ取ったとのことで、何も不安はなかったとのことでした。呼吸は浅くなりつつも、穏やかな表情を見せてくれていたそうです。

静かで穏やかな最期

明け方、キキちゃんは一瞬だけピクピクと痙攣のような動きを見せた後、大きくばたつくことなく、静かに眠るように旅立ちました。お母さんがそばにいてくれたことが、キキちゃんにとって何よりの安心だったことだと思っています。

最期を一緒に過ごせた

通院の負担を減らし、家で過ごす時間を大切にした選択は、キキちゃんにとっても、ご家族にとっても、かけがえのない時間だったのことでした。あの状態で通院させていたら、途中の車の中で、または病院で亡くなっていたかもしれないので、それだけは絶対避けたかったことだったとのことで、「家で見送れてよかった」というお母さんの言葉を受け、これが在宅緩和ケアの最大の意義であると、改めて思えました。

 

 

在宅緩和ケアでできること

通院に代わるケアの実現

通院が困難になったキキちゃんにとって、往診による在宅緩和ケアは大きな安心につながりました。検査・処方・処置をすべてご自宅で実施できるため、負担の少ない医療が実現できます。また、もう通院に伴うストレスをかけないでいいんだというご家族の精神的な安定が、キキちゃんの状態安定に繋がったんだと思います。ご家族の心の安定が、犬猫に及ぼす影響は、緩和ケアの時期にはかなり大きいと感じています。

酸素環境や注射薬での管理

酸素発生装置や酸素ハウスの設置、必要に応じた薬剤の皮下投与など、病院と同等の環境を自宅で整えることが可能です。特に心疾患を抱える猫にとって、呼吸をサポートする環境は今を少しでも楽に過ごさせてあげるための鍵になります。酸素環境を徹底することで、苦しいはずの時間を少しでも穏やかに過ごさせてあげることが可能であり、もしかすると、またご飯を食べてくれるかもしれないという期待を持てるかもしれません。

ご家族の心の準備を支える

在宅緩和ケアでは、医療面だけでなく、ご家族の心のサポートも大切にしています。今後の変化について丁寧に説明し、心構えを共有することで、急な変化にも落ち着いて対応できるよう支援しています。ご家族の病気への理解、そして家族としての方針決定などが、緩和ケアではとても大切です。

 

 

看取りからお別れまで

最期の時間をどう過ごすか

キキちゃんは、お母さんの見守るなか、静かに最期の時を迎えました。胸水貯留がないにもかかわらず呼吸状態が改善しないという状況は、心筋症の終末期のサインの一つです。苦しさを最小限に抑え、静かに息を引き取ることができるよう、医療と環境の両面からサポートしてきました。

家族にしかできないサポート

最期の瞬間にそっと手を舐めてくれたキキちゃん。その行動は、ご家族との絆の深さを物語っていました。ご家族の存在こそが、キキちゃんにとって何よりの安心であり、痛みを超えて心を癒す力となります。いつものように話しかけ、撫でてあげることで、愛犬、愛猫の不安が少しでも和らぎ、苦痛緩和につながるようです。これは、ご家族にしかできない、最後のケアです。

わんにゃん保健室ができること

当院では、症状に応じた医療サポートはもちろん、看取り後のご相談やご葬儀の案内など、最期のその先までを見据えたサポートを提供しています。「苦しませたくない」「穏やかに送り出したい」という想いに寄り添いながら、最期の時間を家族らしく過ごしていただけるよう尽力いたします。

 

愛犬、愛猫の穏やかな最期のために、在宅緩和ケアをご希望される場合には、当院までご連絡ください。

 

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肺腫瘍の犬の在宅胸水抜去(2025年4月)

肺腫瘍は犬にとって決して珍しい病気ではなく、特に高齢の大型犬では、徐々に進行する呼吸器の異常として現れることが多くあります。今回ご紹介するのは、ゴールデンレトリバーのマコトくん。肺腫瘍と診断されてから半年後、呼吸状態の悪化とともに胸水の貯留が見られ、在宅緩和ケアという選択肢に切り替えました。胸水抜去を通じて、苦しみを最小限に抑えながら、最期の時間をご家族と共に穏やかに過ごしたその記録をお届けします。

 

肺腫瘍と診断されたゴールデンレトリバーの最後の1ヶ月

マコトくんは、12歳のゴールデンレトリバーの男の子です。2024年9月、かかりつけの動物病院にて「肺腫瘍」と診断されました。はじめは特に目立った症状もなく、通院しながら内服薬を服用し、日常生活を続けていました。

性格は穏やかで、ご家族と一緒にいる時間が大好きな子でした。ご飯もモリモリ食べるタイプで、食欲が落ちることはほとんどなく、少し息が荒くなっても気にせずに過ごしていたそうです。

しかし、診断から半年が経った2025年3月、急に様子が変わり始めました。食欲が突然落ち、呼吸も早く浅くなってきたため、ご家族が再度病院へ連れて行くことを決意。その時、胸水が多量に貯留していることが判明しました。

 

通院での緩和ケアのはじまり

肺腫瘍の診断を受けた後、マコトくんはかかりつけの動物病院で通院しながらの緩和ケアを続けていました。幸いにも、診断直後の状態は安定しており、無理のない範囲での通院が可能でした。

食欲旺盛だったマコトくんは、内服薬もご飯に混ぜれば問題なく摂取できていました。ご家族も薬の管理をしっかりと行い、日々の体調を細かく観察することで、症状の進行にいち早く気づけるよう心がけていました。

当時のマコトくんは、息が少し荒くなることがあっても、お散歩を楽しみ、日常の生活を自分のペースで送っていました。肺腫瘍という厳しい診断を受けても、ご家族と一緒に過ごす日々が、穏やかに流れていたのです。

ただ、この時期から、少しずつ「呼吸の変化」に注意が必要となってきていました。肺腫瘍が進行する中で、胸腔内に水が貯まることは、よく起こることです。

 

呼吸状態の急変と胸水の貯留

肺腫瘍の進行に伴い、マコトくんの体調に大きな変化が現れたのは2025年2月下旬のことでした。元気や食欲があったにもかかわらず、急に呼吸が浅く、速くなり、見た目にも苦しそうな様子が目立つようになってきました。

ご家族は、すぐにかかりつけの動物病院を受診し、超音波検査(エコー検査)を実施。その結果、胸腔内に多量の胸水が貯留していることが判明しました。肺腫瘍が進行することで、肺から胸腔に滲出液が漏れ出し、呼吸機能を圧迫していたのです。

その場で胸水抜去を実施することになり、マコトくんはゴールデンレトリバーという犬種の特性もあって、鎮静処置を行わずに処置を受けることができました。この時、抜去された胸水は1500mlにも及び、処置後には呼吸がかなり楽になった様子が見られました。

しかし、ご家族にとって印象的だったのは、処置後の帰宅時のマコトくんの姿でした。行きよりも状態は改善していたとはいえ、大きな負担を抱えての移動であることは明らかでした。この経験を経て、ご家族は「今後は自宅でできる限りのケアを」と考えるようになり、在宅緩和ケアへの切り替えを検討し始めたのです。

 

在宅緩和ケアへの切り替えと準備

病院での胸水抜去の後、ご家族は移動中のマコトくんの苦しそうな様子に心を痛め、通院に限界を感じ始めました。「このまま通院を続けるのではなく、自宅で穏やかに過ごさせてあげたい」というお気持ちから、在宅緩和ケアが可能な動物病院を探され、当院へご連絡をいただきました。

初診は2025年3月3日。ご自宅の玄関まで尻尾を振って迎えてくれたマコトくんの姿は、まだまだしっかりとした力を感じさせてくれるものでした。身体検査とエコー検査を実施した結果、再び胸水の貯留を確認しましたが、すぐの抜去は行わず、あえて日程を調整し、最も苦しくなる直前で胸水抜去を実施するようにスケジュールを組むことにしました。

また、このタイミングで処方の見直しを行い、鎮咳薬や鎮痛薬を強めに加え、呼吸の快適さを保ちつつ、痛みや不快感をできる限り抑えることを目指しました。マコトくんの状態、性格、ご家族の希望をすべて踏まえて、在宅緩和ケアに向けた最初の一歩を踏み出したのです。

 

在宅での胸水抜去とマコトくんの反応

初診から4日後、予定通りマコトくんの2回目の胸水抜去を在宅で実施しました。ご自宅という安心した環境で、移動のストレスもなく落ち着いた様子で処置に臨むことができました。この時の抜去量は1380ml。抜去後、呼吸の速さが緩やかになり、ご家族の表情も少し和らぎました。

その後も約1週間おきに胸水の貯留が見られ、次の抜去では1520ml、さらにその次には1750mlと、貯留量は増加傾向にありました。ですが、抜去後は毎回、呼吸が楽になり、短いながらも穏やかな時間が戻ってきました。

胸水抜去は強い痛みを伴うため、処置の可否やタイミングには常に慎重な判断が求められます。痛みの負担と呼吸の苦しさ、そのどちらも極力減らしたいという思いの中で、ご家族と相談を重ねながら、その都度最善と思われる選択を重ねていきました。

 

最期の時間とご家族の思い

2025年4月7日。マコトくんは、その日も朝まではご飯を食べていたそうです。「ちょっと様子が違うな」と感じたとのことでしたが、その後は静かに、まるで眠るかのように旅立ったとのことでした。

最後まで内服薬もご飯と一緒に食べてくれて、処置のたびに呼吸が楽になり、ご家族とともに少しでも楽に過ごせる時間を作ることができました。苦しみが強くなる前にその時を迎えられたことに、ご家族様も「頑張ってくれたね」と静かに話されていました。

ゴールデンレトリバーのような大型犬では、腫瘍(がん)を抱えることは珍しくないです。呼吸を圧迫する胸水の貯留は命に関わる重大な状態ですが、その都度の丁寧なケアと、ご家族の見守りにより、マコトくんは穏やかに最後を迎えることができました。

 

胸水貯留の犬における在宅緩和ケアの考え方

胸水の貯留は、肺腫瘍や転移性腫瘍、心不全などさまざまな原因で起こることがあります。貯留した胸水は肺を圧迫し、呼吸を著しく妨げるため、犬にとって大きな苦痛となります。

在宅での胸水管理が重要な理由

- 通院の負担を減らすことで、呼吸状態の悪化リスクを下げられる

- ストレスによる呼吸促迫を避けることができる

- ご家族が側で寄り添いながらケアを行える

胸水抜去の実施タイミング

- 呼吸が速くなる、胸が上下に大きく動くといった症状が見られたとき

- ご飯を食べなくなったとき

- 横になって眠れなくなるとき(座ったまま寝ようとする

これらの兆候が見られた場合には、胸水の貯留が原因である可能性があり、抜去を検討すべきタイミングです。

胸水抜去時の注意点

- 大型犬では無鎮静で対応できるケースが多いが、痛みは強いということは忘れないこと

- 頻回に抜去を行うと、それ自体が負担になるため、呼吸状態や生活の質を見ながら判断

- 初回の抜去量に比べ、次第に貯留量が増えていくケースが多いため、次の処置のタイミングは柔軟に調整する

在宅で胸水を適切に管理することは、犬のQOL(生活の質)を守り、穏やかな時間を提供する上で非常に重要です。

次は、当院が行う在宅胸水抜去と継続的なケアの方針についてご紹介します。

 

当院が行う在宅胸水抜去と継続ケアの方針

当院では、大型犬や高齢の犬に対して、通院や入院によるストレスを避けるため、在宅での胸水抜去を積極的に取り入れています。診察は基本的に獣医師1名で行い、胸水抜去などの処置が必要な場合には、動物看護師が同行します。

在宅での胸水抜去の進め方

- 往診時に超音波検査で胸水の貯留量と状態を確認

- 鎮静なしでの抜去を基本とし、状態によって鎮静を使用

- 初回は処置の反応や量を慎重に観察し、次回以降のプランを立てる

抜去頻度とモニタリング

- 呼吸状態に応じて抜去頻度を調整(例:1〜2週間おき、必要に応じて週1回)

- ご家族からの日常の観察情報も重要な判断材料となる

継続的な在宅緩和ケアの内容

- 鎮痛薬や鎮咳薬など、内服薬の調整

- 酸素発生装置を活用した在宅酸素管理

このように、在宅緩和ケアでは単に胸水を抜くだけでなく、犬の体調やご家族のご希望を踏まえて、柔軟で丁寧な対応を行っていきます。

 

ご家族とともに過ごした最期の日々

マコトくんが旅立ったのは、2025年4月7日。ご家族に見守られながら、自宅のリビングで穏やかにその時を迎えました。胸水抜去の直後には、呼吸が楽になった様子を見せ、ご飯も少しずつ口にすることができていました。

旅立ちの直前まで見せた“いつもの姿”

- 朝には自分の足で立ち、少しだけお散歩にも行こうとする素振りを見せた

- ご飯の香りには反応し、少量ながら口にしてくれた

- 大好きな場所、リビングのソファー下でゆっくりと眠るように旅立った

ご家族の寄り添いと、安心感

- 胸水抜去の処置も含め、すべてのケアをご自宅で行えたことに、深い安心を感じていただけた

- 「いつもと変わらない日常」の中で過ごせた時間が、ご家族の心の支えに

- 苦しみを最小限にできたことが、ご家族にとって最大の救いだった

在宅緩和ケアの価値

- 病院に行くことなく、最後まで大好きな家族と自分の家で過ごせたこと

- ご家族と獣医師、動物看護師が一緒に歩んだ、最期の時間

- 「家で看取ってあげられて良かった」と語ってくださった言葉が印象的だった

在宅緩和ケアは、ご家族にとっても愛犬にとっても、心穏やかな選択肢となり得ます。

 

わんにゃん保健室が行う在宅緩和ケアの特徴

わんにゃん保健室は、東京都内および近隣エリアを中心に活動している往診専門動物病院です。ペットの在宅医療、特に緩和ケアやターミナルケアに特化し、「病院に行けない・行かせたくない」状況でも、できる限りの医療を提供することを目指しています。

在宅でできる医療を最大限に

- エコーや血液検査など、病院と同等レベルの検査を自宅で実施

- 症状に合わせた処方変更や、投薬内容の調整が可能

- 緩和ケア・ターミナルケアを熟知した獣医師による診療

ご家族の不安に寄り添う

- 初診では2時間近くかけて、じっくりと問診・カウンセリングを実施

- 状況の整理、選択肢の提示、判断サポートまでを一貫して提供

- 医療面だけでなく、精神面のケアにも重点を置いた対応

苦しまない最期のために

- 胸水や心嚢水の抜去など、症状の緩和に必要な処置も自宅で対応

- 鎮痛、鎮静、呼吸管理など、ペットのQOLを最優先に考えた医療設計

- 家で過ごすこと、家で旅立つことを選ぶご家族への全面的なサポート

マコトくんのように、最期まで“家で”を貫いた子たちの物語が、これからも増えていくよう、私たちはひとつひとつの命と真摯に向き合っていきます。

腎臓病や心臓病、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症、糖尿病などの慢性疾患で、定期検診での血液検査や超音波検査(エコー検査)のための通院が、愛犬、愛猫にとってストレスになっていると感じたとき、またはがん(腫瘍)や病末期で、もう余生を穏やかに過ごさせてあげたいと感じた時からは、私たち、在宅緩和ケアに特化した往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。

残された時間にどんなことを考え、準備していかなければいけないのかなど、1つ1つ生活環境やご家族の意思を確認しながら、緩和ケアプランを構築していきます。

 

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
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ターミナルケア・緩和ケアについて

東京23区を中心に往診を行っている「わんにゃん保健室」です。
当院では、ペットのいるお住まいへ直接診療に向かう『往診』を専門にしております。

往診のメリットは、何と言ってもペットが自宅でリラックスした状態で診療を受けられることです。 動物病院へ通院が難しいペットにも、快適な環境で適切な獣医療を提供できることが、わんにゃん保健室の強みです。 本日は、当院が特に力を入れている「ターミナルケア」と「緩和ケア」についてご紹介します。

ペットにとってのターミナルケア

犬や猫は人間よりも寿命が短いため、飼い主様より先に旅立つことが多くあります。
それは自然の摂理であり、避けられない現実です。
しかしその時が訪れる前に、ペットとどのように向き合っていくかを考えることが大切です。
ターミナル期を迎えたペットを前に、飼い主様は「いつまで治療を続けるか」 長い年月を共に過ごしてきた大切な家族を見守ることは、どんなに辛くてもその決断をしなければならない時が来ます。
しかし、「もう楽にしてあげたい」という想いが沸き上がるのも事実です。

飼い主様の想いに寄り添う

ペットが病に苦しんでいる姿を見守る飼い主様もまた、同じように心が痛むものです。
そのような中で、獣医師や愛玩動物看護師は飼い主様の決断に寄り添い、支える役割を担っています。
ターミナルケア」は単に病気を治療することではなく、ペットの最後の時期を穏やかに過ごさせ、飼い主様が納得のいく形で見送ることが目的です。 わんにゃん保健室では、飼い主様が抱える不安や疑問をしっかりと受け止め、最良の選択肢をご一緒に考えていきます。

長い時間をかけて向き合う

わんにゃん保健室では、通常の動物病院とは異なり、飼い主様とお話をする時間を大切にしています。
動物の診察だけでなく、そのペットの未来や最良の診療をしっかりと考えるために、時間をかけて寄り添っています。
そのため、ペットのターミナルケアに関しても、飼い主様の決断を支えるためにじっくりと時間をかけて向き合います。
飼い主様としっかり向き合い、ペットの最良の未来を考えたい」と当院では考えています。

わんにゃん保健室の思い

わんにゃん保健室は、飼い主様とペットの最も近くに寄り添い、支え合いながら診療を行っています。
ターミナルケア・緩和ケアにおいても、飼い主様とペットがより穏やかで安心できる時間を過ごせるようサポートしています。
もしもペットが辛い時期に差し掛かった際には、わんにゃん保健室のスタッフがしっかりとサポートいたします。
ペットと過ごす大切な時間を、できるだけ穏やかで意味のあるものにするために、私たちにお任せください。

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大型犬に多く見られる腹腔内腫瘍。診断された時にはすでに高齢で、手術や抗がん剤などの積極的な治療が選択肢に入らないケースも少なくありません。

そんなとき、ご家族ができることは何か——それが「在宅での緩和ケア」という選択肢です。

今回は、東京都渋谷区に暮らす大型犬が、突然の起立不能をきっかけに腹腔内腫瘍が見つかり、ご家族とともに過ごした穏やかな在宅緩和ケアの実例をご紹介します。

犬のがん、特に腹腔内腫瘍と向き合うなかで「何ができるのか」「どう見送るのか」を考えるきっかけになれば幸いです。

目次

 

大型犬の腹腔内腫瘍とは

今回ご紹介するのは、東京都渋谷区にお住まいのご家族と暮らす、12歳・去勢済のゴールデンレトリバー(38kg)、タロくんです。

2025年1月9日の散歩中、突然ふらつく様子が見られたことから緊急で帰宅。その日は特に大きな異常はなかったものの、翌朝には起立不能となり、ご家族だけでは病院への移動が困難だったため、当院へ往診のご相談をいただきました。

超音波検査の結果、タロくんの腹腔内には約8cmの腫瘤を認めました。現時点での画像所見だけでは腫瘍の確定診断はできませんが、年齢や症状から悪性腫瘍の可能性が高いと判断しました。

腫瘍の摘出や抗がん剤といった積極的な治療についてもご提案はしましたが、ご家族としては「手術や入院ではなく、できるだけ穏やかに家で過ごさせてあげたい」との強いご希望がありました。

このように、大型犬の腹腔内腫瘍に対しては、年齢・体力・性格・生活環境などを総合的に考慮した上で、在宅緩和ケアという選択肢をとるケースが増えています。

次は、急な体調変化により通院が難しくなったタロくんに、どのように往診で対応していったのかをご紹介します。

 

 

通院が困難な大型犬への往診の選択

大型犬であるゴールデンレトリバーのタロくんは、体調が急変し、翌朝には完全に起立不能な状態となりました。高齢かつ体重のある犬にとって、移動のための介助はご家族だけでは非常に困難であり、移動中の負担も大きなリスクになります。

特に、腫瘍によって出血や貧血が起こっている可能性がある状態では、ちょっとした移動の衝撃が容体をさらに悪化させることがあります。結果として腫瘍が見つかったのですが、この時点ではまだ何も発覚していなかった中での急な症状だったため頑張って通院させようと試みましたが難しく、自宅での診療を希望されました。

当院では、必要な医療機器を持参し、往診で腹部超音波検査・血液検査などの初期評価を実施しました。その結果、腫瘤の存在とともに、炎症マーカーの上昇、肝酵素・膵酵素の上昇、そして軽度の貧血を認め、腫瘍からの慢性的な出血や局所炎症が疑われました。

このように、大型犬で体調急変があった場合には、速やかに往診による評価と対応を行うことが、安全で現実的な選択肢となります。

次は、タロくんに対してどのように在宅緩和ケアを開始していったのか、その具体的な初期対応についてご紹介します。

 

 

在宅緩和ケアの初期対応

往診初日に、タロくんの身体検査と血液検査、腹部超音波検査を実施し、腹腔内に8cm大の腫瘤を確認しました。画像と血液検査から判断しても、悪性腫瘍の可能性が高く、また抗がん剤治療や外科手術は希望されないとのことでした。

そのため、タロくんには「在宅緩和ケア」によるサポートを選択しました。これは、残された時間を穏やかに過ごしてもらうことを目的としたケアであり、ご家族にとっても精神的・肉体的な負担を軽減できる方法です。

初診当日は、以下の対応を行いました。

  • 皮下点滴による輸液と薬剤投与(鎮痛剤、制吐剤、抗炎症薬)
  • 酸素飽和度などのバイタルチェックと全身状態の評価
  • 環境評価(タロくんが快適に過ごせる場所の整備)
  • ご家族への今後の流れの説明と不安のヒアリング

皮下点滴には、炎症や痛みに対する鎮痛薬、制吐薬、食欲刺激などを含め、その時点で可能な限りのケアを提供しました。

翌日の再診では、検査結果に基づいた今後の見通しと、どのように医薬品を用いながらケアを継続していくのかについて、丁寧に説明を行いました。

次は、定期的なモニタリングとケアの調整についてご紹介します。

 

定期モニタリングとケア内容の調整

タロくんの在宅緩和ケアでは、1週間ごとの往診を基本とし、状態の変化に応じて柔軟に対応していきました。大切なのは、“今の状態に合ったケア”を提供し続けることです。

定期往診で行った内容
  • 身体検査(体重、粘膜色、脱水、呼吸状態など)
  • 血液検査による肝酵素、炎症マーカー、貧血の進行評価
  • 腹部超音波検査による腫瘍サイズと周囲臓器への影響確認
  • ご自宅での皮下点滴内容の見直しと調整

モニタリングの目的は、腫瘍の進行具合だけでなく、症状(痛み、食欲、活動性)の緩和度を客観的に把握することにあります。

皮下点滴内容の調整

最初は皮下点滴を獣医師が対応していましたが、ご家族ができるようにトレーニングを行い、在宅での自立したケアが可能になるよう指導しました。

  • 利便性を考えた1回あたりの点滴量の調整(例:30〜40ml/kg)
  • 薬剤構成(鎮痛薬・抗炎症薬・制吐薬など)を状態に応じて変更
  • ご家族が管理しやすいよう、薬剤の希釈方法や保存方法の共有
症状に応じた細やかな対応

在宅緩和ケアでは、痛みの兆候、呼吸の変化、排泄状態など、細かな体調変化を敏感にキャッチし、対応策を即座に講じることが求められます。往診時だけでなく、LINEなどを用いた連絡体制で、必要に応じて助言や訪問を行いました。

次は、状態が大きく変化した際の対応と、ご家族へのサポート体制についてご紹介します。

 

 

お別れが近づいたときの準備と支え

病状が進行し、タロくんの体力が目に見えて落ちてきた頃、ご家族には「お別れが近いかもしれない」という現実をお伝えする必要がありました。これは決して冷たく突き放すものではなく、“最期まで一緒に過ごすための心と環境の準備”をする大切な時間です。

痙攣発作に備えた準備
  • 腫瘍からの炎症や毒素が神経に影響し、痙攣を引き起こす可能性を説明
  • 発作時の動画や資料を共有し、実際にどう対応するかを事前に練習
  • 発作止めの注射薬を準備し、使用手順をしっかり指導

予期せぬ急変に備えることは、ご家族の混乱を最小限にし、タロくんの苦痛を和らげる大きな支えとなります。

精神的な支えとしてのマインドセット

この時期は、ご家族の心の揺れもとても大きくなります。「これでよかったのか」「もう限界かもしれない」という葛藤が渦巻く中、私たちは“事実と感情を切り分ける”ことを意識的にお伝えします。

  • 「苦しいのは誰か」を常に考える
  • 客観的な指標(呼吸数、食欲、体温など)で状況を判断する
  • 冷静な判断が“穏やかだった”という記憶につながる
家族で過ごす最後の時間の整え方

最期の時間を家族でどう過ごすか。その準備を一緒に進めていきました。

  • リビングのソファーの下に寝床を設置し、家族全員の目が届く場所に
  • タロくんの大好きだったおもちゃや毛布をそばに置く
  • できるだけ一緒の時間を増やすために、仕事のスケジュールを調整

そして2025年3月18日、タロくんは玄関先から見える桜の木に花が咲き始めた頃、家族に見守られながら、自宅で穏やかに旅立ちました。

 

 

在宅緩和ケアがもたらした意義と学び

大型犬であるタロくんが腹腔内腫瘍を抱えながらも、自宅で穏やかに過ごし、家族に見守られて旅立つことができた背景には、在宅緩和ケアという選択の中で、日を追うごとに強まったご家族の覚悟があったからだと思っています。別れを受け入れることは決して単純なことでなければ簡単なことでもないです。

大型犬特有の在宅管理の難しさと工夫

  • 移動が困難なため、通院による負担が非常に大きい
  • 身体が大きいため、寝床の調整や介助が必要になる
  • 酸素管理や点滴量の設定も、小型犬・猫とは違う基準が求められる

これらの課題に対し、私たちは個別にプランを設計し、無理のない範囲での皮下点滴、酸素環境の構築、家族全員が協力できる診療体制を整えました。

ご家族の心の成長と準備の重要性

診断直後は混乱していたご家族も、診療を重ねていくうちに表情が変わっていきました。必要な情報を伝え、段階的に心構えをしていくことで、タロくんの最期に「やれることはやれた」と感じられたそうです。

  • 急変時に慌てないよう、シミュレーションを行った
  • 苦しみを和らげる投薬のタイミングを練習
  • お別れの時間を意識的に作るように指導
在宅緩和ケアは「医療」だけではない

点滴や投薬といった医療行為だけでなく、「最期をどこで迎えたいか」「誰と過ごしたいか」といった“生き方”に寄り添うケアこそが在宅緩和ケアの本質です。

タロくんが見せてくれた穏やかな最期と、ご家族が示してくれた愛情と覚悟は、これから同じような病と向き合う子たちへの大きなヒントになると確信しています。

 

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犬の腎臓腫瘍の在宅緩和ケア(2025年3月)

犬の腎臓腫瘍は、比較的まれではありますが進行が早く、発見時にはすでに他の臓器へ転移していることも多い疾患です。外科的な摘出や抗がん剤治療といった選択肢がある一方で、高齢や他の持病、性格的な問題、通院によるストレスを理由に、在宅での緩和ケアを選ばれるご家族も増えてきました。

このブログでは、犬の腎臓腫瘍において在宅医療という選択がどういったものか、どのようなケアが可能なのかをご紹介していきます。在宅でもしっかりとしたサポートが可能であることを、少しでも多くのご家族に知っていただけたら嬉しいです。

目次

 

犬の腎臓腫瘍とは?〜発見されにくい沈黙の病〜

犬の腎臓腫瘍は発生頻度としては決して高くはありませんが、発見が遅れることが多く、発見されたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。腎臓は沈黙の臓器とも言われ、腫瘍がかなり大きくなるまで明確な症状が出にくいのが特徴です。

腎臓に発生する腫瘍の種類

- 腎細胞癌:最も代表的な原発性腎腫瘍

- 腎リンパ腫:リンパ腫が腎臓に転移または原発する形

- 移行上皮癌:腎盂や尿管に関係する腫瘍

特に腎細胞癌は片側の腎臓に発生することが多く、外科手術によって摘出可能であることもありますが、発見されたときには肺や肝臓などへの転移が確認されていることもあります。

進行しても症状が出にくい理由

腎臓は二つある臓器であり、一方が障害されてももう一方が機能を補うことで、体の代謝が維持される場合が多いため、片側の腫瘍だけでは目立った症状が出ないまま進行してしまうことがあります。

在宅ケアを検討するケースとは

- 高齢で全身麻酔のリスクが高い

- すでに転移が認められており、根治が望めない

- 性格的に通院や入院が著しいストレスになる

こうした理由から、腎臓腫瘍の犬においては、在宅でできるだけ穏やかに過ごさせてあげたいと考え、緩和ケアを選択されるご家族も増えてきています。

 

診断のきっかけと代表的な症状

犬の腎臓腫瘍は進行するまで明確な症状が出ないことも多いですが、ある程度腫瘍が拡大したり、腎機能が落ちたり、または他の臓器に転移したことによる症状から発見されることがあります。

腎臓腫瘍でよく見られる症状

- 食欲不振や体重減少

- 元気の低下や動きの鈍さ

- 持続的な嘔吐

- 血尿や頻尿などの泌尿器症状

- 腹部の膨満感やしこりを触れる

検査で発見されるケースも

症状があまり出ていない場合でも、定期的な健康診断での血液検査や腹部超音波検査で偶発的に腫瘍が見つかることもあります。特に高齢犬では、腎機能マーカー(BUN、クレアチニンなど)の上昇が見られた際に画像検査を併用することで、腫瘍性病変が判明する場合もあります。

当院の往診(在宅緩和ケア)では、検査の時に検査項目を絞らずに決まった項目は必ず検査することをスクリーニング検査として実施しています。費用面では項目を絞った方がいいとされる考え方もありますが、結果として見落としがあった場合に、あの時検査していればと後悔しないためです。追加検査で再度採血などのストレスをかけるくらいであれば、1度の検査で、かつストレスが限定されている範囲で、得られる所見は集めることを推奨しています。

診断後の選択肢

- 外科手術による腎摘出(片側のみの場合)

- 抗がん剤治療(腫瘍の種類によっては適応あり)

- 積極的治療が難しい場合は在宅での緩和ケアの選択

ご家族の意向や年齢、性格、基礎疾患の有無を踏まえたうえで、治療方針を決めていく必要があります。

 

在宅ケアで注意したいこと

犬の腎臓腫瘍に対する在宅緩和ケアを行う際には、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。これらを適切に管理することで、愛犬が少しでも快適に過ごせるようサポートできます。

定期的な健康状態のモニタリング

- 毎日の食欲、飲水量、排尿・排便の状態を観察し、変化があれば記録する。

- 体重測定を定期的に行い、体重減少がないか確認する。

- 呼吸状態や粘膜の色(歯茎など)をチェックし、異常がないか観察する。

異常時の対応策の準備

- 急な体調不良や症状の悪化に備え、かかりつけの獣医師と連絡を取れる体制を整える。

- 緊急時に使用できる薬剤や処置方法について、事前に指導を受けておく。

- 夜間や休日でも対応可能な動物病院の連絡先を把握しておく。

犬猫も人と同じく、終末期に向かって歩んでいく道のりは、決して平坦ではないです。そのため、急変はつきものであり、その時にどうするのかという具体的なアクションプランを、ご家族で決めておきましょう。

ご家族の精神的・身体的負担の軽減

- 在宅ケアは決して楽ではなく、ご家族にも負担が大きいため、無理のない範囲で行うことが重要。

- 必要に応じて、訪問看護サービスやペットシッターなどの外部サポートを検討する。

- ご家族自身の休息やリフレッシュの時間を確保し、心身の健康を維持する。

在宅緩和ケアを行う際には、これらのポイントを踏まえ、愛犬とご家族双方のQOLを維持することが大切です。

 

在宅緩和ケアを選択するタイミング

腎臓腫瘍の犬において、在宅での緩和ケアを選ぶべきタイミングにはいくつかの目安があります。体調の変化や治療の限界を迎えたとき、ご家族と愛犬が一緒にいられる時間を大切にするための選択肢となります。

治療の限界が見えたとき

- 外科手術や化学療法などの根治治療が難しいと判断されたとき。

- 腫瘍の進行により、症状が再発・悪化し続けているとき。

- これ以上の積極的治療が犬にとって苦痛を伴うと判断されたとき。

通院や入院が犬にとって大きな負担になるとき

- 移動に伴うストレスや興奮で体調が悪化するリスクがある場合。

- 入院が長期化し、愛犬が精神的に不安定になっているとき。

- 通院後にぐったりする、食欲が落ちるなどの反応が見られる場合。

ご家族が「自宅で過ごさせたい」と感じたとき

- 最期は病院よりも住み慣れた自宅で迎えさせてあげたいと考えたとき。

- ご家族が在宅でのケアを希望し、覚悟を持って支えていく意志を持ったとき。

- 愛犬が家族のそばで安心して過ごす姿が望ましいと感じたとき。

在宅緩和ケアへの切り替えは、診断名や病期だけで判断するものではありません。犬の状態、ご家族の想いと覚悟、生活スタイルなど、すべてを総合的に考慮した上で決定することが大切です。

ここまでで、愛犬が腎臓腫瘍を抱えたことを知った後のことを書かせていただきました。

最後に、わんにゃん保健室が提供する在宅ケアのサポート体制についてご紹介します。

 

わんにゃん保健室の在宅ケアサポート体制

わんにゃん保健室では、腎臓腫瘍を含む終末期の疾患に対して、ご家族とペットが安心して在宅で過ごせるよう、きめ細やかなサポート体制を整えています。

初診時の丁寧なカウンセリング

- 初診では獣医師が訪問し、最大2時間かけて病歴やご家族の希望を丁寧にヒアリング。

- 動物看護師の同行は、必要に応じて検査や処置の際に対応。

- 在宅で可能な処置の範囲や、今後の経過予測についても具体的に説明。

緩和ケアプランの個別設計

- 診察や検査結果に基づき、症状のコントロールを目的とした投薬プランを作成。

- 皮下点滴や注射薬など、ご家族でも管理可能な方法をご提案。

- 酸素環境の構築や床の工夫など、生活環境の最適化も併せてアドバイス。

ご家族への細やかなフォローアップ

- 緊急時に備えた対応や頓服薬を準備。

- 状態が変化しやすい子には、必要に応じて週1回以上の定期訪問。

在宅ケアにおいて、最も大切なのは「この子の最期は、どこでどんな風に過ごさせてあげたいのか」という視点です。

病気と闘うのではなく、病気を受け入れ、共に穏やかな時間を生きていく。

わんにゃん保健室は、ご家族と愛犬、愛猫の最後の時間に寄り添った在宅緩和ケアを最後まで提供します。

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わんにゃん保健室での一日の診療の流れ

東京台東区を中心に、往診専門で犬・猫の診療/緩和ケアを行っておりますわんにゃん保健室です。
当ブログでは、当院が提供する獣医療について、より詳しくご紹介してまいります。

本日は、当院での業務の一日の流れについてご紹介します。
普段往診で診察を受けている方は、どういった流れでわんにゃん保健室が訪問するのかを参考にしてみてください。

わんにゃん保健室が行っている業務について

獣医師の主な業務は、

  • 往診での診察:実際にご自宅にお伺いし、診察いたします
  • 症例の報告:受け持った症例をチームに共有します
  • 電話対応:飼い主様からの相談にお電話で対応

となります。

獣医師は「診療」のみを行っていると思われがちですが、

わんにゃん保健室では「獣医師」と「愛玩動物看護師」がチームとなり
飼い主様、ペットをサポートします。

そのため、どういった病状なのか? どういった症例なのか?
といった内容を、院内で共有、チームがより適切な対応をできるよう努めております。

また、一度診察した飼い主様から入電があることも。
急遽病状が変化したり、困ったことがあった際などにお電話をいただくことがあります。

ペットの往診で出ている時間帯や、別のペットの診療中は通話に出ることが難しいこともあります。
そのため、時間を作って折り返しのお電話となることも。
留守電にメッセージを残していただけると、折り返しの際もスムーズに対応できますので、ご協力をお願いいたします。

わんにゃん保健室の一日の様子

1、往診の予約が入ったら、まずはカルテのチェックを行います。

同時にメール等のチェックも行い、飼い主様からの連絡がないかを確認します。

2、お客様のご自宅にお伺いし、診察します。

診察に必要な器具はわんにゃん保健室から持参します。
往診は車での移動がほとんどのため、車の中に必要な機器を揃えたら、そのまま飼い主様のご自宅に運び込みます。

3、カルテの内容や、飼い主様へのヒヤリングをもとに、診察を進めていきます。
4、予約がなければ待機・もしくは事務所へ戻り、次の予約が入っていれば直行します。

次の予約までの時間が長くある場合は、ここで休憩をとります。

5、全ての往診が完了しましたら事務所へ戻り、検査や翌日の往診の準備を行います。

往診は事前準備が肝となります。
必要な器具を揃える・どういった診察が予想されるかを考える、といった面でも飼い主様、
ペットが安心して受けられる獣医療を提供したいと考えています。

お問い合わせを頂く際も、なるべく詳細にご要望や現状の記載をいただきますと、
ご予約についてもスムーズにご案内が可能です。
病状やご状況によって必要な診療時間が異なります。
お問い合わせ時にその状況が確認できますと、より確実な予約枠の確保が可能です。

安心して診察を受けていただくために

わんにゃん保健室では様々な状況に対応できるよう、診療器具を揃えています。 ご予約優先とはなりますが、急ぎでの対応も可能な場合がありますので、 ペットの様子がおかしい・普段と違う・病状が急に悪化した等の場合は 迷わずお電話でお問い合わせください。

普段は動物病院に通っている子も、休診日等で診療が受けられないなどの理由で往診を利用する場合もあります。
わんにゃん保健室はいつでも皆様に寄り添う動物病院として、これからも心を込めた診察を心がけてまいります。

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診療日・受付時間

診療時間 10:00~19:00
休診:不定休

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