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猫に胸水が貯留すると、胸腔内の圧迫により呼吸困難が生じ、非常に苦しい状態になります。

 

特に猫ちゃんや小型犬などの場合、胸水抜去は強い痛みを伴い、ストレスがかかりやすいため、繰り返し抜去が必要な場合には、鎮静下での実施が望ましいです。

 

そのため、可能な限り負担を軽減する処置を行うことを推奨しています。

 

胸水抜去の頻度は猫ちゃんの状態次第で変動し、数か月に一度で済むこともあれば、連日抜去を要することもあります。

 

また、胸水貯留を伴う猫の日常生活の質を向上させるために、在宅酸素の設置も有効です。

 

酸素室内では呼吸が楽になるため、呼吸圧迫があっても比較的快適に過ごせる空間を提供できます。以下に、胸水貯留に対する在宅緩和ケアの実践として、往診による2つのケースレポートを紹介します。

 

猫の心筋症による胸水貯留

 

背景

12歳の日本猫で、心筋症の治療を2年半にわたって通院で行っていました。

 

しかし、心筋症が進行し、胸水が貯留し始めたため、動物病院での胸水抜去を試みましたが、3日後には再び胸水が溜まってしまいました。

 

通院頻度が増すことで猫にかかる負担が大きくなり、飼い主様の意向で在宅緩和ケアへ切り替えることとなりました。

 

在宅緩和ケアの内容

1. 酸素室の導入と環境整備

まず、猫ちゃんが穏やかに過ごせるように在宅酸素環境を整え、日常生活での負担を減らすことから図ります。

 

ご家族様の生活環境も把握したうえで、安静が保たれるスペースを確保しました。

 

2.投薬内容と方法の変更

心筋症治療の内服薬は、次第に経口投与が難しくなり、薬を与えるたびに開口呼吸が見られていました。

 

そのため、薬剤の投与経路を可能な限り経口から皮下投与に切り替えることで、呼吸悪化のきっかけの減少と、投薬成功率を向上することができました。

 

3. 定期的な往診とモニタリング

週1回の往診で胸水貯留の状況を超音波検査で確認し、薬剤の効果や体調の変化を把握しました。

 

また、状態に合わせて1〜2週間に1回の血液検査で体調をチェックしました。

 

投与経路の変更後、胸水の貯留は大きく改善し、6か月間ほど胸水抜去を必要としない期間が続きました。

 

胸水の再発と最期までのケア

在宅ケア開始から6か月後、再度胸水貯留が見られるようになりました。

 

週1回で胸水抜去を行っていたものの、貯留頻度が上がり、最終的には連日での抜去が必要になりました。

 

緩和ケア開始107日目、猫は家族に見守られながら旅立ちました。

 

 

ケース②:猫の心臓血管肉腫による胸水貯留

 

背景

次の症例は、急激な体調悪化で動物病院を受診した14歳の猫ちゃんです。

 

胸水が貯留していることが確認され、胸水を抜去したところ呼吸が安定しましたが、胸水の細胞診で腫瘍が疑われました。

 

抜去後の呼吸は改善したものの、帰宅後に猫ちゃんが横になれず唸り声を上げて隠れてしまったため、通院での継続治療が困難となり、在宅緩和ケアに切り替えました。

 

在宅緩和ケア内容

1. 環境整備と飼い主様のサポート

緩和ケアにあたっては、まず家庭環境を整備し、飼い主様が病気と向き合う準備ができるようサポートを行いました。特に腫瘍性胸水は医薬品によるコントロールが難しいため、在宅ケアの方針をあらかじめ共有しました。

 

2. 投薬の工夫

この猫ちゃんも内服薬の服用が難しかったため、早い段階で全ての医薬品を皮下投与に切り替えました。

 

この時期の猫ちゃんにとって、内服薬の負担はかなり大きくなることが予想されるため、無理に負担をかけず、確実に薬剤を投与するための措置です。

 

鎮静下での胸水抜去とその後

往診時に鎮静をかけたうえで胸水を抜去すると、呼吸が楽になり、通院後には食べられなかったドライフードを再び食べる様子が見られました。

 

24日間の在宅緩和ケアの間に4回胸水抜去を実施しましたが、全ての抜去後も、通院後の異様な興奮行動は認められませんでした。

 

この猫ちゃんは緩和ケア開始から24日目に、家族に見守られながら眠るように旅立ってとのことでした。

 

 

まとめ

 

猫で胸水が貯留し、呼吸が圧迫される場合、胸水を抜去することで呼吸が改善し、生活の質が向上する可能性があります。

 

胸水抜去には強い痛みが伴うため、全身状態次第ではありますが、可能な限り鎮静下で行うことが望ましいです。

 

在宅緩和ケアのステージにいる猫ちゃんのほとんどが良くない状態です。

 

そのため、胸水抜去の時は軽度〜中等度まで鎮静量を調整し、猫ちゃんの体だけでなく精神的な面にもできる限り負担をかけずにケアすることを心がけています。

 

胸水抜去は1回で終わることはほとんどなく、繰り返し必要になる場合が多いため、その都度の痛みやストレスを最小限に抑える工夫が不可欠です。

 

また、胸水による呼吸困難が続く猫に対しては、酸素室の設置も有効です。

 

酸素室の使い方や設定方法については、担当の獣医師に相談し、猫の症状や状態に応じて適切なケアを行っていきましょう。

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ペットはただの動物ではなく、ご自宅で一緒に過ごしてきた家族であり、日々の生活の中で積み重ねた「家族の時間」は、かけがえのないものです。

 

今回ご紹介するのは、12歳6ヶ月の女の子の猫ちゃん。

 

とても優しく、飼い主様に甘えん坊な性格の猫ちゃんですが、外出や通院が極端に苦手で、キャリーに入れるだけで呼吸が乱れ、パニックを起こしてしまうほどでした。

 

この子に消化器型リンパ腫が見つかったのは、突然のことでした。

 

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診断後の決断。通院治療か、それとも在宅でのケアか

最初に症状が出始めたのは2024年8月。

 

少しずつ食欲が落ち、元気がなくなっていく猫ちゃんを見て、ご家族様はどこか「ただの食欲不振だろう」と楽観的に考えようとしていました。

 

しかし、その様子が日を追うごとに悪化し、体重も急激に減ってきたことで、意を決して近くの動物病院を受診。

 

そこで告げられたのは「消化器型リンパ腫」という病名でした。

 

通院を勧められたものの、移動が大きなストレスになる猫ちゃんにとって、抗がん剤治療を続けることは苦痛以外の何物でもないとすぐに判断されたそうです。

 

大好きな家族と一緒にいられることが、この子にとって何よりも大事だと考えたご家族様は、在宅でできる緩和ケアを探し、当院にたどり着きました。

 

初めてお会いしたとき、ご家族様は明るく振舞おうとしていましたが、心の内には深い不安が渦巻いているのを感じました。

 

「本当にこれでいいのだろうか」

 

「もっと積極的な治療を受けさせるべきでは?」

 

という葛藤。

 

そして何より、「この子の最期を、どう見守ってあげるべきか」という問いを胸に秘めているのが伝わってきました。

 

初診時に見えたご家族様の愛情と、私たちの責任

初診時、約1時間半の問診を行いました。

 

猫ちゃんの病状の変化を辿るのはもちろんのこと、ただその時間のほとんどは、ご家族様の想いを伺うことに費やされました。

 

診察室ではなく、自宅のリビングで、猫ちゃんがいつものベッドの上で丸まっている様子を見ながら、ご家族様はこれまでの日々の出来事や、診断を受けたときのショック、そして「どこまで治療すべきか」という迷いを、涙ながらに語られました。

 

「この子に負担をかけたくない。大好きな家で、できるだけ苦痛のないようにしてあげたい。でも、私たちの選択が、この子にとって正しいのかどうか……わからないんです。」

 

その言葉に、私たちも胸が締め付けられる思いでした。

 

病気と闘うか、それとも穏やかな時間を優先するか。

 

どちらを選んでもご家族様にとっては苦しい選択です。

 

それでも、最後にご家族様が出した結論は「自宅で見守りながら、できる限り穏やかな時間を過ごさせてあげたい」というものでした。

 

日々の診療を通して変わるご家族様の気持ち

初診時の検査結果に基づき、緩和ケアを中心に診療方針を立てました。治療計画には、通院を避けるための皮下点滴や自宅での注射投与が含まれ、ご家族様も積極的にケアに取り組まれました。

 

特に、注射の指導をする際は、最初は恐る恐るだったご家族様が、少しずつ自信をつけていかれるのを目の当たりにし、「この子のために私たちも頑張らなければ」と覚悟を決められた姿を見て、家族って本当にすごいなと思いました。

 

しかし、診療が進むにつれ、病状は日々変化していきました。

 

状態が落ち着いている日もあれば、急に呼吸が乱れ、不安な日々を過ごさなければならないこともありました。

 

その度に、ご連絡をいただいたり、往診の頻度を変動させ、注射薬の内容を調整し、ご家族様の不安を少しでも減らせるようにサポートを続けました。

 

中でも、特に印象に残っているのは、呼吸困難の兆候が強まったときのことです。

 

酸素室の設置を提案した際、ご家族様は一瞬だけ「ここまでしても、この子は喜ぶだろうか」と迷われました。

 

けれども、酸素室の中で眠る猫ちゃんの姿を見て、「これで、この子が少しでも楽になっているなら」と安堵された表情を見たとき、この診療方針が正しかったと強く感じました。

 

最期の瞬間、穏やかに眠りについた猫ちゃん

初診から18日が経った時の再診の際、ご家族様には「残された時間がもうわずかであること」をお伝えしました。

 

どこかで覚悟はされていたものの、やはりそれを直接伝えられると、ご家族様の表情には悲しみが色濃くにじみました。

 

それでも、「家でこの子を見守ってあげたい」という想いに変わりはなく、最後まで家族と一緒に過ごせるよう、ご家族様は決意を新たにされたようでした。

 

「もし発作が起きたときのために」とお渡しした頓服薬を手にしたとき、ご家族様は静かに頷きながら「何があっても、しっかりと受け止めます」とおっしゃったのが忘れられません。

 

最期の時が訪れたのは、それから2日後の夜でした。

 

家族に見守られながら、穏やかに息を引き取ったというご報告をメールでいただきました。

 

最後に少しの痙攣は見られたものの、それ以外は本当に安らかで、まるで「今までありがとう」と伝えるように、静かに目を閉じたとのことでした。

 

自宅でできるケアの意義

在宅医療は、時として通院治療よりも飼い主様にとって大きな決断を伴います。

 

目の前で愛するペットが苦しむ姿を見るのは、ご家族様にとっても辛いことです。

 

それでも、自宅での診療が持つ意味は、ペットにとっても、ご家族様にとっても、かけがえのないものです。

 

今回のケースでは、ご家族様が一歩ずつ決断を重ね、ご自身の手で猫ちゃんを支える覚悟を決めたことが、最期の穏やかな時間につながったのだと思います。

 

私たちは、その過程を支え、ご家族様が少しでも安心して最期の時間を迎えられるようサポートできたことを心から誇りに思います。

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肥大型心筋症(HCM)は、猫の心臓病の中でも非常に一般的な病気です。

 

特に高齢猫に発症することが多く、症状が進行すると呼吸困難や倦怠感、食欲不振といった症状が現れます。

 

この記事では、12歳の猫とともに過ごすご家族様の事例をもとに、猫ちゃんが最期を迎えるまでの緩和ケアについてご紹介します。

 

飼い主の皆さんが、猫にできるだけストレスをかけず、心穏やかな時間を過ごせるようなケアを中心に解説します。

 

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ご家族様と猫ちゃんの状況

今回登場する猫ちゃんは、9歳で肥大型心筋症と診断を受け、内服薬でずっとコントロールできていました。

 

しかし、12歳になって時から呼吸状態の悪化が著しくなり、かかりつけの動物病院にて胸水貯留を確認し、かかりつけの動物病院までタクシーで向かい、抜去してもらいました。

 

これで安心かと思っていたのですが、またすぐ3日後には貯留を認め、高い頻度での胸水抜去が必要とされた今、通常でも通院が苦手な性格の猫ちゃんでしたので、さらに強い痛みを伴う胸水抜去を通院で繰り返すのは難しいと判断され、在宅での治療を希望されました。

 

家族構成は、お母さん、お父さんの2人で、積極的な治療は望まないが、ただ苦しさだけは軽減させてあげたい、残された時間を家で過ごさせルコとを希望されました。

 

お父さんはカレンダー通りのお仕事で、かつ出張を伴うことから、在宅ワークをされているお母さんを中心に、1人でもできる範囲で最適な環境構築をしていく方針で進めました。

 

環境を整えることで、薬や処置以外の面でも猫ちゃんの負担をできるだけ軽減できるよう、在宅緩和ケアで幅広く見ていきます。

 

1. 在宅ケアの基本方針

在宅緩和ケアでは、猫ちゃんのQOL(生活の質)を最大限に尊重しつつ、その上で猫ちゃんの隣で戦うご家族様のQOLも大切にしていきます。

 

治療ではなく、症状のコントロールや痛みの緩和、快適な環境の提供が主な目的です。

 

ここでは、以下のポイントを重視していくことが多いです。

 

a. 痛みと不快感の管理

肥大型心筋症は、進行すると呼吸困難や胸水貯留などで猫が非常に苦しむことがあります。

 

呼吸困難を和らげるため、酸素療法の導入が考えられます。

 

往診の際に、酸素濃縮器や酸素ボックス、時には酸素ボンベの自宅設置における使用方法について説明し、ご家庭で安心して運用できるサポートを行います。

 

また、呼吸困難時に使用できる利尿剤や、呼吸を楽にするための鎮静剤、鎮咳薬(咳止め)などの処方も検討します。

 

b. 食欲の維持と栄養管理

どのステージにいるのかで、栄養に対する考え方は異なってきます。

 

緩和ケアに入りたての頃であれば、栄養管理は頑張ってあげたいものですが、ターミナルケアのステージであれば、話は変わります。

 

もしご家族様が強制給餌の実施をご希望されるのであれば、実施する時の猫ちゃんの姿勢や保定方法、使用するご飯について、また1口の量や1回の食事に許容できる容量、頻度など、状態と環境に合わせて徹底的に指導させていただきます。

 

そしてターミナルケアに入った時には、もう何も食べられないことが多いため、それでも食べさせたいのか、それとも無理に食べさせないことを選択したいのかを、客観的な所見や私たちの在宅緩和ケアの経験を交えてご説明し、ご家族様に選択していただきます。

 

c. ストレスの軽減

猫ちゃんはストレスにとても敏感な動物です。

 

環境を変えるだけでも体調が悪くなるともあるほどです。

 

そして、この緩和ケアのステージでは、多くの場合には病気を抱えており、常時ストレス下に晒されています。

 

検査や必要に応じた処置、処方などもまた、ストレスの一因であると思われます。

 

ただ、苦痛を緩和するために必要なもののため、他の箇所でいかにしてストレスを減らしてあげられるかが大切です。

 

家の中に、猫ちゃんが落ち着けるスペースはあるのでかなど、そのスペースをもっと豊かにすることは可能なのかなどを模索していきます。

 

2. 往診専門動物病院でのサポート内容

在宅緩和ケアをサポートするために、定期的な訪問による検査、処置、処方や指導が行われます。往診では、肥大型心筋症の猫ちゃんについては、次のような検査や処置が行われます。

 

a. バイタルサインのチェック

猫ちゃんの呼吸状態や心拍、歩様や食事などの変化などを定期的にモニタリングし、症状の進行具合を把握します。

 

これにより、状態が急変した場合の早期対応が可能になります。

 

b. 薬の処方と投与指導

緩和ケアの一環として、肥大型心筋症を抱えた猫ちゃんの場合には、利尿剤や鎮痛剤、酸素療法を行う場合の薬剤の使用方法を飼い主に丁寧に指導します。

 

自宅での薬の投与に関する不安を軽減するため、実際に飼い主の目の前で投薬方法を示し、実践してもらうことも大切です。

 

なお、内服薬が苦手な猫ちゃんが多いため、皮下点滴の指導を行い、ご自宅で皮下点滴という手法を用いて投薬をしてもらうことも可能です。

 

c. 胸水の管理

肥大型心筋症に伴う胸水貯留が見られる場合は、必要に応じて往診時に胸水を抜くことが可能です。

 

胸水を抜くことで、肺の拡張が担保誰、猫ちゃんの呼吸困難を一時的に改善させることが期待されます。

 

また、胸水抜去の時には、猫ちゃんの場合、軽度な鎮静処置をしてあげることを推奨しています。

 

胸水抜去の時は、肋骨の間から針を刺して胸腔内にアプローチをかけるため、腹水抜去や採血、皮下点滴などと比べると、強い痛みを伴います。

 

また、胸水は1回抜けば大丈夫なのではなく、またすぐに溜まってくることも予想されます。

 

痛かった思い出が積み重ならないように、状態に応じて、できれば少しでも鎮静をかけてあげることを検討してあげましょう。

 

3. 在宅でのケア方法

ご家族様が自宅で行うケアには、以下のようなものがあります。

 

a. 猫のコンディションモニタリング

呼吸困難の兆候(呼吸が荒い、口を開けて呼吸する)や、食欲の低下、活動量の減少を毎日確認します。

 

特に呼吸状態の悪化は、写真や動画などを合わせてご連絡いただくなど、注意深く観察することが重要です。

 

食欲などを含めた全身状態が一気に悪化したのか、それともゆっくりと悪化してきたいるのかなど、診察時にゆっくりとお伺いさせていただきます。

 

b. 快適な環境作り

温度や湿度の管理は肥大婦型心筋症を抱えた猫ちゃんにとって、とても重要です。

 

猫ちゃんの呼吸状態に合わせて、適切な室温を適宜お伝えさせていただきます。

 

多くの場合、ご家族様が涼しい〜寒いと感じるくらいの温度指定になることが多いです。

 

また、猫ちゃん自身で温度管理ができるように、暖かい場所の設置など、環境に合わせて考案させていただきます。

 

湿度は不快ではないくらいの50〜60%に維持することが推奨されます。

 

なお、心臓に負担をかけないために、過度な温度変化は避けましょう。

 

c. 投薬のサポート

毎日の投薬は、猫ちゃんにとって負担になりやすい部分です。

 

できるだけ猫ちゃんがリラックスできる方法で行うことがポイントです。

 

錠剤をピルポケットやおやつに包んで与えるなど、工夫をすることも役立ちます。

 

また、私たちの経験から、この薬ならこうすれば飲めるかもしれない、などの知識提供を都度させていただき、できる限り内服薬で投薬できるように、一緒に考えていきます。

 

もしどうしても内服薬が難しい場合には、皮下点滴などの手法を用いた方法で、注射薬で代替できる医薬品は代替していくことも検討します。

 

4. ご家族様への精神的なサポート

猫ちゃんの看護や看病は、ご家族様にとって体力的な負担だけでなく、精神的な負担になります。

 

これから起こりうるであろう症状や事象について先にご説明させていただき、その時にどう捉えて、何ができるのかなどのアクションプランを決定することで、先に起こる混乱に対して事前準備を徹底的に進めておきましょう。

 

精神的なサポートは、事実と感情を分けることで見えてきます。

 

まずは診察でしっかりとお話をお伺いさせていただき、何にどれだけの不安を抱えているのかを探っていき、その事象が起きた時、何をどうしたらいいのかなどを事前に対策を練っておきます。

 

多くの症状の変化は、事前に状態を把握していればある程度想定できます。

 

準備を整えておくことで、何もできない不安を払拭し、その猫ちゃん専用の動物看護師になっていただき、最後まで一緒に戦うマインド形成をお手伝いさせていただきます。

 

ここからは必ず状態は悪くなり、そしてお別れの日がやってきます。

 

少しでも後悔のない最期を迎えられるよう、在宅緩和ケアに特化した私たちが、最後まで伴走させていただきます。

 

まとめ

肥大型心筋症の猫ちゃんに対する在宅緩和ケアは、治療ではなく、猫ちゃんができるだけ快適に過ごせるようにすることを重視しながら、ご家族様が希望する最後の時間の構築を目指します。

 

痛みの管理、環境の整備、ご家族様のケアを含む全体的なサポートが、猫ちゃんとその家族にとって最良の結果をもたらせるように、最後までサポートさせていただきます。

 

東京を中心に、千葉、埼玉、神奈川などの近隣地区までは、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室が対応可能です。

 

ご家族様が猫ちゃんとともに穏やかな時間を過ごせるよう、往診を活用しつつ、適切な在宅緩和ケアを提供してあげましょう。

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「血管肉腫」

 

この病気は、発覚してから本当に進行速度が早い病気に分類されます。

 

例えば月初に健康診断を行っていても、月半ばくらいに違和感を覚え、再度検査したところ脾臓に疑わしいものがあったり、胸水や腹水が貯留していたりすることがあります。

 

そのくらい、進行速度は早いんです。

 

大型犬の血管肉腫における在宅緩和ケアでは、主にかかりつけの動物病院である程度診断がついてからの在宅切り替え相談が多いです。

 

大型犬の場合、通院できるうちは通院で頑張るものの、抗がん剤を断念して治療ではない緩和ケアを希望したいと感じた頃、かかりつけの動物病院では在宅相談が難しいとされて、切り替えに踏み切るようです。

 

猫ちゃんの場合には、もともと通院ができない子が多いために早期からの在宅緩和ケアを希望される傾向が多い中で、わんちゃんだとかなり病末期からのターミナルケアで、在宅緩和ケアに切り替えられることが多いです。

 

では、大型犬ではどうでしょうか。

 

大型犬の場合には、まだ歩けるうちから在宅緩和ケアに切り替えることをお勧めしています。

 

なぜかというと、歩行が難しくなってきた段階で、通院を断念せざるを得ないタイミングが突然来てしまうからです。

 

事前にご連絡をいただいていれば、その時のことを想定したインフォームが可能であり、さらには対策を打つこともでき、いきなり始まる愛犬の介護、看病に対しても事前準備しておくことができます。

 

今回書かせていただく内容は、ラブラドールの陸くん12歳の初診です。

 

摘出した脾臓の病理検査結果から「血管肉腫」と診断を受け、2024年4月17日から在宅緩和ケアに切り替えました。

 

初診(診察1日目)

陸くんの家は、猫ちゃんもワンちゃんも一緒に暮らす、大家族でした。

 

大型犬もたくさんいて、先に天国にお引越ししたラブラドールの子達も、最後は腫瘍でした。

 

1頭は趾端メラノーマで、もう1頭は陸くんと同じ骨肉腫でした。

 

かかりつけの動物病院の担当獣医師は、本当に親身になって説明をしてくれたそうですが、最終的には抗がん剤をしないで、緩和ケアを選択されました。

 

腫瘍と診断された場合には、外科手術や放射線治療、抗がん剤や分子標的薬の説明を、まずは受けることと思います。

 

ただ、その説明を受けた後すぐに決断するのではなく、確かな知識を持ってから、改めてご家族様で話し合われることをお勧めします。

 

ご家族様として、愛犬、愛猫に残された時間を、どこで、どんな風に過ごさせてあげたいのか。

 

抗がん剤と一言で言っても、その効果や副反応は異なっており、うまくいっている時は劇的な回復を認めることもありますが、副反応のダメージを目にしたことがある方であれば、抗がん剤の怖さを知っていることと思います。

 

抗がん剤ではなく、もう痛みや吐き気など、生活している上での苦痛を少しでも軽減させながら、もう延命は望まないと考えたのであれば、緩和ケアに切り替えることも、また1つの選択です。

 

緩和ケアは決して逃げではなく、ペットにとって最良であると判断した、勇気ある覚悟の形です。

 

また、緩和ケアの中にも通院医療と往診医療(在宅医療)で、考え方やプランの組み立て方、指導の仕方なども異なってくると思われます。

 

例えば、当院の場合は在宅緩和ケアに特化した獣医療チームを編成しているため、家族の関係性や連携具合、実際の生活環境や家族の日常スケジュールなど、事細かにお伺いして、実施可能な在宅緩和プランを提案していきます。

 

最後までご家族様を1人にしない。

 

私たちが心がけている大切な信条です。

 

陸くんの初診時問診では、10日ほど前から運動量の低下はあるものの、もともとおっとりしている性格なこともあり、あまり変わらない印象とのことでした。

 

食欲は旺盛で、1日4回のご飯タイムも、毎回完食してくれるとのことでした。

 

体重が40kg以上ということもあり、薬もかなりの量になりました。

 

人間でも、これだけでお腹いっぱいになっちゃいそうな量です。

 

陸くんの場合には、1日4回のご飯タイムがあるので、そのタイミングを利用して、投薬タイミングを4回に分散させることで、1回の薬剤量を減らすことをご提案させていただきました。

 

この時実施した血液検査では、貧血はあるものの、1ヶ月前にかかりつけの動物病院で実施した結果よりもやや改善しており、超音波検査で腹水や胸水を認めなかったことから、出血自体が安定していることが伺えました。

 

今後のことのご説明

病気はいつか必ず進行し、身体機能がある時を境に、うまく働かなくなってきます。

 

食べても消化がうまくいかなくなったり、そもそも食べなくなったり。

 

立ち上がりたいのに、立ち上がれなくなったり。

 

そんな時に考えなければいけないのが、「介護」です。

 

介護問題は人間社会だけではなく、ペットの介護についても同様かそれ以上に、社会が目を当ててくれないという側面を加えれば、辛い悩みが出てきているかもしれません。

 

しかし、この「介護」、そして投薬などの「看護」にもやり方があります。

 

全部をオリジナルでこなせるのであれば、それはすごいことです。

 

でももし、心が苦しくなってきた時や、介護をしていて悩み事が出た時には、専門家に相談することは何も恥ずかしいことではないです。

 

向き合い方さえわかって仕舞えば、あとはそれを生活環境にどんな形で組み込んでいくか、ただそれだけです。

 

全部ができないことで自身を責めることが多くなるこの時期ですが、決して100点を目指さず、60点でもやり続けてあげることが大切です。

 

在宅緩和ケアのことでご不安がございましたら、家まで来てくれる往診専門動物病院に連絡をするか、東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室がお伺いさせていただきます。

 

次は、陸くんの再診のご様子を書かせていただきます

猫のさぶちゃんの続きです。

 

前回まではさぶちゃんの在宅緩和ケア(初診から3日目まで)からどうぞ^^

 

もしかすると、インスタグラムでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

 

まだ見たことがないという方は、インスタグラムで@koheiemotoを検索してください。

 

さぶちゃんの動画を載せてありますので、口腔内扁平上皮癌の猫ちゃんの在宅緩和ケアの雰囲気が伝わればと思います。

 

また、【ペットの緩和ケア】というテーマで、BS朝日の「ネコいぬワイドショー」で取り上げていただきました。

 

  • BS朝日「ネコいぬワイドショー」
  • 2024年4月12日22:00〜 「ペットの在宅緩和ケアを知る」

 

今回、猫の口腔内扁平上皮癌の在宅緩和ケア(さぶちゃん)腎臓病の猫の緩和ケア(タロウちゃん)がメインで出ています。

 

もしかすると、まだTverなどで視聴できるかもしれませんので、今後ペットの在宅緩和ケアをご検討されるご家族様は、この機会に是非一度見ていただければと思います。

 

今回のブログは、東京江東区在住のさぶちゃん(猫の口腔内扁平上皮癌)の、前回からの続きです。

 

2024年2月13日から始まった在宅緩和ケア。

 

一度は上がってきたものの、病気は必ず進行していきます。

 

そして、2024年4月24日の朝、お母さんと一緒に眠る枕元で永い眠りにつきました。

 

その姿は、寝た時のままであり、苦しむ素振りの一切を見せずに、生涯に幕を閉じました。

 

再診(診察7日目)  2024年2月20日 3.5kg

前回の診察時よりは元気さが減っていたものの、この日はまだまだ元気さもあり、ベッドやキッチンに飛び乗ることもできていました。

 

ずっと便秘だったので心配でしたが、その後下痢になり、そしてこの日は良便になっていました。

 

医薬品の開始、特に抗生剤や吐き気を抑える薬などでは軟便傾向になることがあります。

 

状態にもよりますが、最初のうちは都度ご連絡をいただき、医薬品をカットするか、その状態であれば継続するかをお伝えさせていただいております。

 

そして、口腔内腫瘍からの出血は、食べるたびにポタポタ垂れてしまう状況に変わりはありませんでした。

 

それでも力強くおもちゃで遊ぶし、ご飯もしっかりと食べられていました。

 

この時から、近い将来の酸素環境の構築を見据えて、酸素ハウスの設置を相談させていただきました。

 

元気なうちから、酸素ハウスに慣れておくことで、本当に必要になった時に抵抗なく使ってくれるかもしれないためです。

 

酸素発生装置の設置はまだ先ですが、早期から酸素ハウスを設置して、日常の中に溶け込ませておくことをお勧めします。

 

さぶちゃん2.png

 

再診(診察17日目)  2024年3月1日 3.2kg

徐々に腫瘍のある左顎下あたりが膨らんできました。

 

元気食欲は少しだけ下がってきて、昨日からぼーっとしている時間が長くなってきたとのことでした。

 

この日からステロイドの増量を行い、状態が少しでも上がってくるのを期待しました。

 

状態低下に伴い実施した血液検査では、肝臓の数値が少し高くなっていること、軽度の貧血になっていることがわかりました。

 

この病気の出血に対しては、効果の薄い止血剤を使用するまでしか対処できないため、徐々に貧血になっていくことが予想されていました。

 

また、食べるたびに出血してしまうため、食べさせない方がいいのかというご質問を受けることがありますが、私たちとしては、本人に任せてあげてほしいと考えています。

 

さぶちゃんの場合、出血はするものの食べたがるため、食べられるうちはあげてもらうようにお伝えさせていただきました。

 

さぶちゃん4.png

 

再診(診察31日目)  2024年3月15日 2.6kg

体重も徐々に減ってきて、ご飯もほとんど食べられなくなってきました。

 

血液検査では、貧血の値が大幅に減少し、前回値よりも10%くらい低い13.4%を認めたことから、酸素発生装置の手配を行い、在宅緩和ケアでの酸素環境構築を行いました。

 

酸素発生装置は2台体制とすることで、酸素濃度の上昇速度を早めることができ、酸素ハウス内が汚れてしまった時に掃除をしても、すぐに必要な酸素濃度まで上昇させてあげられるようにしました。

 

また、さぶちゃんは酸素室の中でずっと過ごすことを嫌がっていたため、貧血になっても酸素ハウスの外での生活を希望していました。

 

この場合には、酸素ハウスの一部を開放してあげることで、自由に出入りができる空間を実現し、また垂れ流される酸素からの酸素供給が可能となります。(少量ですがないよりはマシです)

 

呼吸状態が悪い時は、酸素ハウス内に入れ、安定したら自由にさせてあげるような流れで使用していただくようにしました。

 

 

 

再診(診察42日目)  2024年3月26日 2.3kg

いよいよウェットのおやつを少し舐める程度までに、食欲が下がってきました。

 

ぼーっとしている時間が長くなったため、ぼーっとしているときは苦しいのかなと思い、酸素室に入れると、30分くらいで出せっていうので出す、というのを繰り返しているとのことでした。

 

 

再診(診察45日目)  2024年3月29日 2.2kg

まだこの時は、ベッドやキッチンには飛び乗れていました。

 

ずっと便が出ていなかったので心配だったが、2日前に大量のうんちをしてくれたとのことで、写真で見せてくれました^^

 

写真を見せてくれた時のお母さんの表情はとても明るく、本当に嬉しそうなご様子でした

 

ただ、その時にかなり体力を消費してしまったのか、ぐったりしてしまったとのことでした。

 

食欲増進剤の軟膏を使用するも食欲増加を認めないことから、軟膏はここで使用中止としました。

 

食欲増進剤の軟膏は、求めたい効果である食欲増進だけでなく、一定数は興奮してしまう作用があります。

 

最初に使用する時は半量で挑戦し、メリットとデメリットを評価してあげ、メリットの方が高い場合のみ、通常量を使用することをお勧めします。

 

もうトイレは間に合わないため、寝ているカーペットの上で漏らしているとのことでした。

 

猫ちゃんは本当に綺麗好きで、最後の最後までトイレまで行っておしっこやうんちをしようとします。

 

これは本能なのか、プライドなのか。

 

体力的に難しいからと、トイレを近くに持ってくるのではなく、トイレの数を増やすなどして対処してあげましょう。

 

再診(診察49日目)  2024年4月2日 2.2kg

前回の排便から出ないままで6日間が経過しました。

 

良かったことは、ウェットフードを右側からあげると出血を起こすが、腫瘍のある左側からあげると出血を起こさないことを見つけたとのこと。

 

もう目は見えていなさそうでしたが、それでも呼びかけにはちゃんと反応するし、たまに立ち上がって歩く姿も見せてくれました。

 

再診(診察52日目)  2024年4月5日 2.2kg

前日に小指の先程度の排便を認めたとのことでした。

 

もう何も食べないし、水も飲めていないとのことでした。

 

飲水ができないと脱水が一気に進行しそうなイメージですが、さぶちゃんの場合には腎機能はほぼ正常だったため、毎日の皮下点滴だけで十分にカバーできていたと考えています。

 

 

再診(診察64日目)  2024年4月16日 1.9kg

もうほとんど動けなくなっていました。

 

それなのに、大好きな猫じゃらしを前にしたら、体を起こして追いかけようとしてくれたんです。

 

遊んでいるのか、遊んでくれているのか。

 

私たちが来たことを、ちゃんと認識してくれていました。

 

さぶちゃん1.png

 

 

再診(診察67日目)  2024年4月19日 1.9kg

音はまだ聞こえていました。

 

音のする方に耳を少しだけ向けてくれました。

 

目もは見えないし、きっと鼻も効かないけど、すごく穏やかな表情で毎日を過ごしているとのことでした。

 

 

再診(診察69日目)  2024年4月21日 1.9kg

もうすぐお別れかなと思い、手のところに指を持っていくと、グイッと握ってくれたとのこと。

 

お母さんの温もりを、しっかりと感じているんだなと思えたお話でした。

 

最後の診察から3日後の2024年4月24日、さぶちゃんは永い眠りにつきました。

 

いつものようにベッドに連れていき、いつもの場所で一緒に寝て、いつもの朝を起きると、昨日の夜の姿で眠っていたとのことでした。

 

お母さんに気づかれないように、安らかな表情のまま眠るように旅立ったんだろうなと思いました。

 

さぶちゃんの73日間に及んだ在宅緩和ケアは、この日幕を閉じました。

 

さぶちゃんのご冥福をお祈り申し上げます。

 

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腫瘍というと、犬、特に大型犬という印象がありますが、猫ちゃんにも多く見られます。

 

猫ちゃんの腫瘍(がん)というと、最も多いのが皮膚腫瘍と言われており、次いで乳腺腫瘍、リンパ腫、と続いています。

 

猫ちゃんの皮膚腫瘍のほとんどが悪性の可能性が高く、肥満細胞腫や扁平上皮癌、繊維肉腫などその種類は様々です。

 

今回は、猫ちゃんが抱えうる腫瘍疾患(がん)の中で、最近よく在宅緩和ケアを実施している、「リンパ腫」について書かせていただきます。

 

「最近なんだか軟便気味だな」

食欲が少しだけ下がったような気がする

元気が少しだけないような気がする

体重が減ってきた感じがする

 

これらの症状は、もしかしたらリンパ腫が潜んでいるかもしれません。

 

往診専門動物病院での在宅緩和ケアにおける、実際の問診内容、検査プラン、処方プラン、生活環境へのアドバイスなどを中心に書かせていただきます。

 

 

予約時の問合せ内容

13歳の猫ちゃん(みー)で、1週間ほど前から元気食欲がなくなったとのことでした。

 

それ以外は至って普通だが、キャリーを見せるとよだれをこぼしながら興奮して隠れてしまい、頑張って動物病院に通院させようとしたが異常興奮したので、往診を希望したとのことでした。

 

通院歴はほぼなく、0歳の時に避妊手術とワクチンで動物病院に連れて行って以来、通院ができなくなってしまったとのことでした。

 

家の中なら、抱っこもできるし、落ち着いていると思うので、在宅でできる範囲で見てあげてほしいとのことでした。

 

初診時

ご家族様の印象通り、初対面の獣医師や看護師に対してもスリスリしてくれるような性格の猫ちゃんでした。

 

パッと見はそこまで体調が悪そうではないように見えるとのことでしたが、猫ちゃんの呼吸数はやや早めな印象を受けました。

 

往診専門動物病院では、通常の動物病院での問診と比べて長く時間を取り、深く伺うことが多いです。

 

当院では、初回問診は1時間〜2時間ほどかけています。

 

お伺いする内容は、元気、食欲、排便、排尿、飲水、発咳などの状況、今食べているご飯の種類や、猫ちゃんの好みのテイスト、ご飯の形状やあげ方、お水の位置や数、トイレについてなどです。

 

これらは基本的な内容ですが、生活環境や家族構成なども重要となる場合が多いので、そのあたりも深くお伺いすることもあります。

 

誰がどのくらい、この猫ちゃんの看護、介護に協力してくれるのか、どの時間帯に処置、処方のプランを組み込めば実施可能なのかなど、ご家族様ごとに組み立てさせていただきます。

 

この猫ちゃんの場合、まずは現状を把握するため、血液検査、超音波検査(エコー検査)を実施することとしました。

 

状態に応じて検査項目や検査種類を変えますが、かなり重篤な状態で、ストレスによってぐったりしてしまう可能性が高いと判断された場合には、まずは検査よりも臨床所見を持ってある程度診断を下し、処置のみを先行することもあります。

 

この猫ちゃんの場合には、初診時の状態がそこまで歩くなかったこともあり、検査が可能であると判断しました。

 

検査結果

往診では、ご自宅にて血液検査や超音波検査(エコー検査)、尿検査などを行うことが可能です。

 

中にはその場で結果がわかる検査もございますが、血液検査などの場合には、血液を持ち帰って検査を行いますので、次回診察時に結果のご説明をさせていただいています。

 

この猫ちゃん場合にも、血液は持ち帰っての検査となりましたが、その場で結果を一緒に見ることができる超音波検査(エコー検査)にて、お腹の中(腹腔内)にボコボコした腫瘤病変が、複数個確認されました。

 

初めて画像検査であったこともあるので、もしかすると昔から、または体質としてリンパ節が腫れやすい猫ちゃんも経験しているため断定はできませんが、画像の所見上で最も疑わしい病気として、リンパ腫の可能性をお伝えしました。

 

猫ちゃんのリンパ腫の余命は、抗がん剤などの積極的な治療を図らない場合には、おおよそ2ヶ月程度です。

 

また、経験上最初の6週間は元気なことが多いですが、そこから一気に体調が崩れていく印象です。

 

今回の猫ちゃんの場合も、この説明をさせていただき処置を行い、翌日も診察を組むこととしました。

 

その後のプラン

翌日には血液検査結果がある程度出揃い、数値には何も異常を認めないという、腫瘍疾患らしい結果が出ました。

 

こちらも主観的ではありますが、部位によって異なりますが、猫のリンパ腫の多くで、肝臓や腎臓などの数値が大きく崩れていることは少ないと受け取っています。

 

そのため、猫ちゃんで多い皮下点滴に関しても、輸液量を極端に少なくすることが可能であり、実際に投薬に要する時間は5秒ほどで完了しました。

 

そこに医薬品を混ぜることで、苦い薬を口から飲むことなく背中に入れてしまうことができるため、投薬後に口をくちゃくちゃしたり、泡を吹いてしまったりということが起きないようにすることができます。

 

ただ、皮下点滴ですので、実施にあたって誰が協力してくれるのかを明確にすることがとても大切であり、最終的にはご家族様の覚悟の問題になる場合が多いです。

 

病気の初期では、猫ちゃんも元気さが残っているため嫌がることが予想されます。

 

ここでは、皮下点滴時の保定の仕方が、皮下点滴成功への鍵となります。

 

ほとんどのご家族様で、みんな在宅での皮下点滴を実施できていますが、どうしても難しい場合には、別のプランを常に準備していますので、1つの方法に固執することなく、ご家族様が諦めなければ都度ご提案させていただいています。

 

2024年1月21日から始まった、この猫ちゃんが抱えたリンパ腫に対する在宅緩和ケアは順調に進み、最初の2週間は元気さを取り戻すことができました。

 

しかし、3週目からはだんだんと弱々しさが見えてきて、医薬品の量と頻度の変更が必要となりました。

 

そして2024年2月21日、いつもは入らないリビングにあるこたつの中に朝から入ったので、中を覗いたところ、そこで眠りについていたとの事でした。

 

お母さんはずっと付きっきりで看病してくれていましたが、きっと最後の姿を見せたくなく、最後の場所として、こたつの中を選んだと思います。

 

みーちゃんのご冥福、心からお祈り申し上げます。

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最近、腫瘍を抱えた犬猫の在宅緩和ケアのご依頼をいただくことが多くなりました。

 

「緩和ケア」と聞くと、「がん(癌)」というイメージが強いですが、犬猫においては、慢性疾患に該当する心臓病、肝臓病、腎臓病などにも、適応すると考えています。

 

慢性疾患は、いかにして進行を抑止して行くのかが大切です。

 

早期発見早期治療といっても、治療ができない場合がほとんどであり、そのため、症状をできるだけ緩和させながら、定期的な血液検査や尿検査、画像検査などを実施して、医薬品の種類であったり用法用量、ご飯の話などを行います。

 

おそらく、これらの疾患を抱えた場合に、動物病院に通院ができる犬猫の場合でも、上記の内容を逸脱することはないかと思われます。

 

「いつまで通院で頑張るべきなのか」というご質問をよくいただき、その回答としては、「愛犬、愛猫のストレス状況を見て判断する」とよくお伝えしています。

 

しかしながら、本来であれば、血液検査や画像検査などで診断が下された時点で、緩和ケアに自然と移行されています。

 

腫瘍であれば、根治治療を目的に腫瘍外科や化学療法(抗がん剤)、分子標的薬や放射線治療などの選択肢が提示されますが、年齢的なもの、体力的なもの、そして、ご家族様としてどこまで頑張らせたいのかによって、選択は異なってきます。

 

そして、もう根治治療ではなく、腎臓病に対する点滴や、心臓病、肝臓病に対する内服薬でのコントロールを含めた緩和的な治療を選択されるのであれば、次に考えるべきなのは、動物病院への通院医療なのか、訪問での在宅医療なのか、です。

 

どちらを選択しても間違いではないです。

 

費用面を考えると、通院の方が安いです。

 

しかし、犬猫のストレスを考慮すれば、答えは異なることが多いです。

 

最終的な判断はご家族様に委ねられるため、家族内で話し合っていきましょうね。

 

ここからは、実際の緩和ケア症例についてです。

 

今回は、緩和ケア症例の中でも、「腫瘍(がん)」を抱えた猫ちゃんの在宅緩和ケアについて書かせていただきます。

 

現在、動物病院への通院で抗がん剤をされている方、また、もう抗がん剤はやめて内服や注射などの緩和治療に切り替えられている方は、是非ここで、在宅緩和ケアついて知っていただければと思います。

 

扁平上皮癌の猫

2022年12月10日に動物病院への通院ではなく、往診での在宅医療に切り替えた症例です。

 

2022年9月頃に顔が腫れていることを主訴に、かかりつけの動物病院に通院したところ、歯槽膿漏を疑われ、抜歯を行うことで経過観察となったとのことでした。

 

しかし、そこからさらに顔の腫れがひどくなったことで、病理検査を行ったところ、扁平上皮癌の診断を受けたとのことでした。

 

この日から通院で痛み止めを処方されていましたが、だんだんと内服薬を飲ませるのが辛くなり、食欲もなくなり、ふらつきが目立ってきたため、在宅緩和ケアに切り替えました。

 

かかりつけの動物病院から紹介状をいただけたこともあり、そのデータを元に在宅緩和ケアプランを作成していきました。

 

ご家族様はお父さん、お母さん共に基本的には在宅とのことでしたので、1日3回の処置が可能であると判断しました。

 

痛み止めを1日3回、また、朝と夜分は、その他医薬品と一緒に皮下点滴に混ぜることで投与してもらいました。

 

なお、血液検査結果では肝臓や腎臓などの数値が正常であることが多いのが、腫瘍疾患の犬猫の特徴でもあります。

 

なるべく少量の皮下点滴、そして、なるべく細い針で実施してあげることを選択することができます。

 

この猫ちゃんの場合には、輸液剤は3mlだけで十分であると判断しましたので、実際の皮下点滴に要する時間はほんの数秒程度です。

 

苦い薬を口に無理やり入れられることもないため、投薬後の口腔内の違和感もなく、また必要な医薬品を必要な分だけ的確に投与できるため、食欲は回復し、動きも良くなりました。

 

このプランをベースとし、都度容態に合わせて変更させながら在宅緩和ケアを進めていき、2023年1月22日に旅立ちました。

 

この猫ちゃんの場合には、かかりつけの動物病院からの紹介状もあったことから、事前情報がある程度まとまった状態で訪問させていただけたことによって、即日の在宅緩和ケアプラン作成を行うことができました。

 

お母さん、そして担当していた獣医師の早期判断により、診断を持って在宅での緩和ケアに切り替えられた症例でした。

 

獣医師の中には最後まで通院を進めたい先生もいますが、そこはご家族様の意思次第になると思われます。

 

また、途中から薬だけをもらうために、ご家族様だけ通院し、写真や動画で説明して状況を伝えるというのも、状況次第ではやめた方がいいです。

 

状況が安定している犬猫の場合であれば、ある程度はそのレベルで判断できるとは思います。

 

しかし、今回のような緩和ケアの症例では、日々状態が変化するため、獣医師としても、犬猫を実際に見てみなければ判断できません。

 

そのため、動物病院の休診時間に往診にきてくれないのであれば、早々に在宅緩和ケアを得意とする往診専門動物病院を探したほうがいいです。

 

在宅緩和ケアに特化した往診専門動物病院は希少ですが、東京、埼玉、千葉、神奈川であれば、私たちがお力になれます。

 

愛犬、愛猫で腎不全、心臓病、肝臓病、腫瘍(がん)、また甲状腺機能亢進症や低下症などの慢性疾患を含め、完治を見込めず、医薬品を使って症状を抑え込んでいくことが求められた場合には、早々から在宅に切り替えてあげることを推奨します。

 

当院のような、犬猫の在宅緩和ケアに特化した往診専門動物病院では、獣医師だけでなく、在宅に特化した愛玩動物看護師が一緒にお伺いさせていただきます。

 

医療面だけでなく、床の種類、ご飯の種類やその子その子に応じたご飯のあげ方、ものの配置やトイレの相談など、生活面の全てをご相談いただけます。

 

近い将来、私たちのような在宅医療に特化した往診専門獣医療チームが全国に広がっていくことを信じています。

 

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犬猫を迎えた時から、いつか来るお別れに備えて、常に心の準備が必要です。

 

とはいえ、いざその時になってみなければ、覚悟なんてできないものです。

 

今回は、ゴールデンレトリバーのはるくん、11歳の元気でやんちゃな男の子のお話です。

 

2023年12月17日の夕方に急なふらつきを認め、かかりつけ動物病院、夜間救急の動物病院と通院し、肝臓腫瘍が見つかりました。

 

積極的な治療ではなく、余生を穏やかに過ごさせてあげるために、在宅医療に特化した当院の往診を希望され、2024年3月1日から在宅緩和ケアを開始し、3月7日の朝、リビングでそっと眠りにつきました。

 

はるちゃん①.jpg

 

既往歴

ガクッと状態が悪くなった2023年12月17日の朝までは、いつも通りお散歩にも行けたし、ご飯だってモリモリ食べられていたとのことでした。

 

夕方になるとなんとなく体調が悪そうになりふらつきも認め、夜になると、起き上がるのもギリギリなほどだったとのことでした。

 

翌日にかかりつけの動物病院(江戸川区)に連れて行ったところ、血腹を認め、そこでは精査できないとのことから、精査できる動物病院の紹介受診か様子見の2つからの選択を迫られ、頑張らせるのはもう可哀想だと判断し、内服薬で様子をみてあげることにしました。

 

2、3日すると元気さが戻り始め、1週間ほどで普段通りまで回復したとのことでした。

 

そのまま状態が安定した日々を過ごせていましたが、2ヶ月後の2月22日の夕方また突然立ち上がれなくなり、夜間救急受け入れが可能な動物病院に通院したところ、肝臓がんが発覚しました。

 

中高齢の大型犬で、急な体調不良を見せた時は、常に「がん」の可能性を疑ってあげましょう。

 

また、大型犬で立ち上がれない場合に、持ち上げて連れて行くことが難しい場合もあり、様子見してしまうことが多いと思います。

 

しかし、急激な変化は怖い場合が多いので、すぐに獣医師に診てもらうようにすることを推奨します。

 

もう十分頑張って幸せをくれたはるちゃんに無理させたくないと考え、攻めた治療ではなく、緩和ケアを選択されたとのことでした。

 

処方された内服薬を飲ませながらの緩和ケアが開始され、このまま家で看取る覚悟をされたとのことでした。

 

しかし、内服薬が徐々に飲ませづらくなってきて、体調の低下も著しくなり、今の状態を少しでも楽にさせてあげる方法はないかと考え、当院までご連絡をいただきました。

 

食欲廃絶、立ち上がれないということもあり、スケジュール調整ができたため、当日のうちにお伺いさせていただきました。

 

初診(往診1日目)

お伺いすると、玄関まで、なんと迎えにきてくれました。

 

人がとても好きだということもあり、血圧が上がってくれたのかもしれません。

 

一通り挨拶が終わると、ご飯まで食べてくれました。

 

食べてる姿を見せたかったのかもしれません。

 

お話をお伺いすると、徐々に元気さを取り戻してきて、散歩に行けるほどまでにも回復をするが、急にまたガクッと下がる、ということを繰り返しているようでした。

 

病態から考えて、おそらくガクッとしたタイミングで腹腔内出血を起こして貧血になっていると推測しました。

 

内服薬を飲ませられない可能性が高いこともあり、この日から、投薬を目的とした皮下点滴プランを作成しました。

 

大型犬で、体重も37kgくらいと大きいこともあり、内服薬にすると10粒以上は飲ませないといけません。

 

これがもし、注射薬への変更が可能なもので代用できるのなら、短時間の皮下点滴によるストレスだけで、何種類あってもほぼ100%投与することができます。

 

実際に皮下点滴で投与してもらうと、さすがの大型犬です。

 

全く動じずに受け入れてくれました。

 

朝夜2回の皮下点滴で、医薬品も複数種類使用しますが、これで状態が安定するならばと願い、この日の診察を終了しました。

 

血液検査も実施しましたが、全く動じずに受け入れてくれていました。

 

抱っこして体重測定を行うのですが、抱っこが一番嫌がっていましたね。

 

再診(往診2日目)

初診に続き、翌日も訪問させていただきました。

 

前日は夕方の訪問だったこともあり、朝分の皮下点滴が実施できたかどうか、もし難しかったのであれば、何が、どんな風に難しかったのかなどをヒアリングさせてもらいました。

 

朝分の皮下点滴、何事もなく実施できたとのことでした。

 

通常であれば、安定していることを確認すれば、この次の診察を数日あけてお伺いするのですが、はるちゃんの場合には鎮痛薬を微量に使用していることもあり、ふらつきや意識レベルの変化などを観察するために、また翌日の診察を組みました。

 

腹部に軽度の液体貯留、胸部に微量の液体貯留を認めましたが、特別穿刺などはしないこととしました。

 

再診(往診3日目)

症状もなく、安定して元気とのことでした。

 

この病気が発覚してから、毎日体調が悪そうだったのに対し、在宅医療を始めてからは元気さを取り戻し、お散歩に行ってトイレをしっかりするまでに戻れたとのことでした。

 

肝臓腫瘍からの出血が落ち着いていることと通院から在宅医療への切り替えは直線では繋がることはありませんが、穏やかな余生を過ごせていることと、在宅医療への切り替えは、あながちたまたまではないと感じています。

 

注射薬を用いた皮下点滴プランも無事にこなせるようになり、2日分をお渡しし、次回は2日後としました。

 

この日の超音波検査では、腹部の液体貯留がやや減少していることに対し、胸部の微量だった液体貯留が少し増加を認めました。

 

はるちゃん③.jpg

 

再診(往診5日目)

前日の夜から急に立てなくなってしまったとのことでした。

 

エコーを当てると、腹部の液体貯留が重度であることが認められました。

 

肝臓腫瘍からの出血による血腹です。

 

往診では、腹腔内出血を止めることはできません。

 

腹腔内出血の原因や、その時の状態、病気の種類や犬猫の年齢などによっては、開腹して出血点を探し出し、止血処置を施します。

 

しかし、在宅緩和ケアの現場では、血腹していても、それによってこれ以上出血が出づらくなっているのであれば、抜去処置は行わないこともあります。

 

ただ、今回の場合は、一部抜去してあげることで胃の圧迫や重さを軽くできることを期待し、腹水抜去を実施しました。

 

獣医師1人と愛玩動物看護師3人の全員体制で訪問できたこともあり、2人が保定、1人が酸素管理、1人が抜去の役割を担うことができました。

 

結果、1.3Lもの腹水を抜去するまでにとどめ、その性状はほぼ血液で間違いありませんでした。

 

緩和を目的とした抜去後、はるちゃんは立ち上がることができ、いつものお皿のところで身を飲む姿を見せてくれました。

 

3日後に診察を組み、この日の往診は終了としました。

 

はるちゃん②.JPG

 

この日から安定した時間が続き、ご飯もしっかりと食べてくれたとの事でした。

 

3月6日の朝までは元気さを取り戻しつつある姿を見せてくれていましたが、お父さんが帰宅される夕方にはガクッと下がっていたとの事でした。

 

そして翌日、の2024年3月7日の朝、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

たまたまお父さんがお休みで、一緒にいられる時間を選んだのかもしれません。

 

はるちゃん④.jpg

 

まとめ

 

大型犬を迎える以上、大型犬には腫瘍が多いこと、そして立ち上がれなくなった時には力が必要になることを想定していなければいけません。

 

もし人手がなく、立ち上がれなくなった場合にどうしようもできないと、今のうちから予想される場合には、早い段階で往診専門動物病院、または往診可能な動物病院で、一度診察を受けておくことをお勧めします。

 

この子たちの時間の最後が、当たり前の日常の中で過ごせるよう、ペットの在宅医療、在宅緩和ケアが広く普及されて行くことを願っています。

 

東京、千葉、埼玉、神奈川にお住まいの場合には、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご自宅まで訪問させていただきます。

 

最後の時間を少しでも快適に過ごさせてあげられるように、一緒に頑張りましょう。

 

はるちゃん⑤.jpg

 

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猫ちゃんの多くは動物病院への通院が難しく、その中でも頑張って通院されるご家族様はたくさんいます。

 

ただ、もう治らない病気を抱えたり、体力的にキツくなった時には、在宅医療に切り替えてあげることも一つの手段です。

 

犬猫の在宅医療は発展途上であるのは確かであり、今後普及してくれるかどうかは、まだまだ不確かな状況です。

 

それでもかかりつけの動物病院に往診してくれるかどうかを確認し、難しいようであれば往診ができる動物病院を早々に探しておくことをお勧めします。

 

今回は、重度の黄疸を抱えた猫のはなちゃんの3回目です。

 

初診でぐったりしており、検査にて甲状腺機能亢進症が見つかり、その治療を実施したところ元気さを取り戻してきたことで、もしかしたらこのまま回復してくれるかもしれないと期待した矢先、状態が暗転しました。

 

2024年3月11日、お母さんの見守る中、眠るように旅立ちました。

 

はなちゃんの診療日誌、最終章を始めます。

 

はなちゃん①.jpg

 

再診(診察24日目)

前日から調子が悪かったこともあり、夜中にご連絡をいただきました。

 

折り返しができたのはこの日の朝で、調子が悪く、吐いてしまったというものでした。

 

日中はお仕事があるため、夕方のお時間で調整したところ、夜間の時間で予約をお受けすることができました。

 

その日の夜に往診で訪問すると、少し元気のないはなちゃんがいました。

 

お話をお伺いすると、前日からなんとなく体調の変化に気づいていたが、運動量としてはそこまで変わっていなかったとのことでした。

 

しかし、今朝になるとじっとして動かなくなり、朝2:00に少量のドライフードを多部田ことを最後に、食べたそうになくが食べられないという状況だったとのことでした。

 

排便も前日が最後で、尿量も減り、また濃い黄色のおしっこになったとのことでした。

 

飲水量も減っているということもあったので、利尿剤をカットしたこともあり、もしかすると尿量が減った原因は単純に利尿剤をカットしたからと考えたかったですが、黄疸尿を見たことがあるお母さんからのお話でしたので、また黄疸が始まったことを瞬時に悟りました。

 

また、制吐剤が入っているにもかかわらず、嘔吐を認めました。

 

超音波検査にて胃から十二指腸にかけて、内容物の鬱滞を確認し、腸管の動きが悪くなってきたことを考え、一部制吐関連の医薬品を変更し、腸管の動きが良くなることを期待しました。

 

同時にステロイドの用量を増やし、下がってしまった状態が、また安定を取り戻してくれるように祈りました。

 

翌日の朝までに1口も食べなかった場合には、翌日の夜間にお伺いすることとしたのですが、翌朝少しだけ食べてくれたことを認めたため、少し様子見としました。

 

再診(診察26日目)

前回の結果で、腎数値が大幅下がって参考基準値内に入っていました。

 

そして、肝数値が一気に上昇し、黄疸が出始めました。

 

超音波検査にて胃から十二指腸にかけての鬱滞に、変化はありませんでした。

 

ここまで急激に腎数値が改善するのは珍しいことであり、違和感を覚えました。

 

当初考えていた、甲状腺機能亢進症によって肝負荷が上がり肝障害を発症し、黄疸発症を起こした。また、慢性腎臓病はマスクされた状態だったこともあり、甲状腺機能亢進症のコントロールによって、慢性腎臓病が表に見えるようになった、というストーリーは否定的であると考えました。

 

血栓によって肝臓が障害され黄疸が発症し、次に腎臓が障害されて腎数値が一気に上がってきた、というストーリー変更が起こりました。

 

他の血液検査結果を踏まえ、腫瘍が隠れていることを考えました。

 

甲状腺機能亢進症は、別途発症していたにすぎなかったと結論づけました。

 

過去症例からの経験則から、肥満細胞腫とリンパ腫が挙げられますが、その両方ともに得られるはずの画像所見は認めませんでした。

 

ただ、精査が叶わないのが在宅医療であり、もう麻酔をかけた精査を求めないのが、ペットの終末期です。

 

状態が下がっていることから、無理に内服させなくてもいいサプリは休薬とし、ステロイドを増やして、回復してくれることを祈りました。

 

再診(診察29日目)

肝数値がさらに悪化していること、黄疸もさらに強くなっていることが発覚しました。

 

昨日から元気がなく、ご飯の催促も昨日少しだけであり、今日は全くないとのことでした。

 

前日の排便が最後で、少量のだけで出ていました。

 

2日前に嘔吐があり、エコーに写っていた胃の内容物が出てきたのだと思われました。

 

その分だけ胃に空間ができ、ご飯を食べられていたのだと考えました。

 

消化管の通過障害を伴う疾患はたくさんあります。

 

病気にもよりますが、完全閉塞を伴った場合でもう治る見込みがない場合、ご飯に対する考え方は異なります。

 

おそらく、多くの獣医師の意見は、食べても吐くだけであり、吐くのは辛いから、もう食べさせないであげましょう、というものです。

 

食べても吐くだけだとは思います。

 

それでも、食べたいという本人の意思を尊重してあげたいです。

 

在宅緩和ケアでは、動物たちがどうしたいのかに委ねるように伝えています。

 

強制給餌はしないほうがいいです。

 

ただ、食べたいのであれば、食べさせてあげてください。そのように伝えています。

 

はなちゃんも例外ではなく、食べられそうであれば食べさせてあげてくださいとし、この日の診察を終了しました。

 

再診(診察32日目)

 

2024年3月9日の土曜日の11時に訪問して、はなちゃんの様子を診させていただいました。

 

そこにいたのは、ぐったりしたはなちゃんでした。

 

はなちゃん3-①.png

 

こたつの中にいつも隠れているのに、この日はこたつから頭だけ出して、僕らの訪問を待っていてくれました。

 

もう何も食べなくなり、血圧も下がっていることを認め、検査をやめることとしました。

 

平日は朝から夜までお仕事のお母さんでしたが、翌週の月曜日はたまたまお休みが取れていたとのこともあり、今日から3日間は一緒にいられるとことでした。

 

次回の診察はその翌日の火曜とし、診察を終了しました。

 

 

2024年3月11日(月)の早朝

お母さんが見守る中、はなちゃんは眠りにつきました。

 

本当であればお仕事に向かわれてしまうはずだった月曜日。

 

きっとはなちゃんがこの日を選んで、お母さんがお休みを取れるように仕向けてくれたのかもしれません。

はなちゃん2-③.png

 

 

犬猫と暮らすご家族様へ

どんな命でも、いつかはお別れを迎えます。

 

そして、そこには旅立つ命以外に、置いて行かれた存在ができます。

 

食い止めることは不可能であることから、最後にどこまで、その子と向き合えたのかが大切だと思っています。

 

最後はどこで、どんな風に看取ってあげたいのか。

 

考えるのはいつからでもいいですが、早いに越したことはありません。

 

いつまで通院させるのか。

 

いつまで治療をするのか。

 

いつまで薬を飲ませるのか。

 

いつまでご飯を食べさせるのか。

 

誰がどこまで看病にあたれるのか。

 

いつも診察の時に、お母さんの目を見ています。

 

きっとみんな寝てないんだろうなという目をしていて、大丈夫ですか?、という問いかけに、みんな、大丈夫です。と言います。

 

簡単な最後なんてありません。

 

通院が難しくなることを想定し、近くにある往診可能な動物病院、または往診専門動物病院で、早めに一度診察を受けておくことをお勧めします。

 

通院から在宅に切り替えるタイミング、それは余生を楽に過ごさせてあげたいと考えた時からなのかもしれません。

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犬猫の往診専門動物病院
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前回のブログでは、重度の黄疸を抱えた日本猫のはなちゃんに、甲状腺機能亢進症が見つかり、その治療を行うことで肝数値の改善と黄疸の消失までを認めることができたところまでを書かせていただきました。

 

前回のブログはこちら

 

状態も改善し、元気さを取り戻していた最中、今度は腎数値が徐々に上がってきて、その後急激に腎数値が改善したと思えば、同時にまた肝数値が一気に上がり、黄疸も進み、拡張した胃と十二指腸を確認しました。

 

そして、2024年3月11日、お母さんの見守る中、眠るように旅立ちました。

 

元気な姿をまた見られてからの状態悪化。

 

緩和ケアの現場では、1日1日の変化が大きく、また日内変動を見ても、とても大きいことが多々あります。

 

はなちゃんの最後の日までを描かせていただきます。

 

はなちゃんのご冥福を心から祈ります。

 

はなちゃん2-①.jpg

 

再診(診察8日目)

この日のはなちゃんは、前回よりも元気さが戻っており、キャットタワーやダイニングテーブルにも飛び乗れるようになっていたとのことでした。

 

食欲も旺盛であり、排便もやや軟便ではありましたが、ちゃんと出ていました。

 

おしっこの色も、黄色みが強かった(黄疸色)頃と比べ、だいぶ元の色に戻ってきているとのことでした。

 

前回の診察時、体重が急激に増加と、検査時に下側の前肢に浮腫あることを確認しました。

 

調子よく進んでいたものの、全身的にも浮腫があると判断されました。

 

追加した利尿剤の効果もあり、今日まで尿量は多かったとのことでしたが、お水もちゃんと飲めており、前回認めた浮腫も取れていることを確認しました。

 

在宅緩和ケアで実施している1日2回の皮下点滴の中に、利尿効果のある医薬品を使用することで、浮腫の改善を図ることに成功しました。

 

この浮腫改善対策が功を奏し、四肢のむくみもなく、また体重も通常の幅での増加となっており、体がちゃんと栄養吸収できていると判断しました。

 

ちなみに、初診時が2.1kg、4日後に2.6kgと急激な増加を認めなり、利尿効果を追加したこの日は2.4kgでした。

 

超音波エコー検査所見は、特別な変化なく、経過良好でした。

 

はなちゃん2-②.png

 

再診(診察12日目)

この日も大きな変化ななく、元気食欲も安定したはなちゃんに会えました。

 

前回行った血液検査では、肝数値は徐々に改善してきていましたが、腎数値が徐々に上がってきたことを認めました。

 

甲状腺機能亢進症がある場合には、甲状腺機能亢進症の薬を飲むことで、甲状腺ホルモンの生成を抑制します。

 

甲状腺ホルモンが高すぎたことで、異常な代謝が起こり、心臓への負荷、肝臓やその他臓器への負荷が上がることがネガティブ側面ですが、高齢の猫ちゃん、特に10歳以上の猫ちゃんでは、この病気によって活力をサポートしてもらっている、という雰囲気をよく見受けます。

 

そして、甲状腺機能亢進症が隠れている場合には、腎数値がそこまで悪くなく見えてしまうという現象を起こします。

 

今回、甲状腺機能亢進症のコントロールを始めていたこともあり、最初から腎臓の数値が上がってくることを想定し、内服薬や皮下点滴などによって、先に対策は打ててはいました。

 

ここで認めた腎数値の上昇は、かなり高かったものの、状態も安定していることから、大きく1回の皮下点滴量を増やすことなく、現状維持としました。

 

また、利尿剤は、腎臓病を悪化させる可能性があります。

 

ただ、はなちゃんのように、全身の浮腫を疑う症例では、すぐにカットすることは危険であると判断し、この日から半量まで下げることで、浮腫の再発が起こるかの様子を見つつも、腎数値悪化に対しての対策としました。

 

なお、腎臓のサプリとして2種類処方しました。

 

詳しくは書きませんが、1つはBUNを下げることが目的であり、もう2つはリンを下げることが目的です。

 

食べられるうちは頑張ってもらい、無理に飲ませないでいいので、ということで処方しています。

 

早期であれば、療法食だけでもコントロールが効きますが、緩和ケアの時は食欲の維持が何よりも大切なところだったりしますので、できれば療法食、でも無理は絶対にしないで、好きなもので食欲を刺激してあげます。

 

超音波検査所見は、特別な変化なく、経過良好でした。

 

はなちゃん2-③.png

 

再診(診察19日目)

この日のはなちゃんは、さらに元気さが増しており、高い棚の方までジャンプして登れていたとのことでした。

 

食欲も旺盛で、排便、排尿も問題ないとのことでした。

 

サプリメントも頑張って飲んでくれたこともあり、腎数値がやや改善してくれたことを受け、このまま安定してくれることを期待していました。

 

肝数値、黄疸数値ともに改善傾向でした。

 

この日から、利尿剤は頓服とし、常用から外すこととしました。

 

はなちゃんの場合、頓服使用としての利尿剤は、①浮腫を認めたとき、②急げきな体増加を認めた時、の2つの事象としました。

 

また、ステロイドの種類も変更し、カットできるようになることを目指して漸減していくこととしました。

 

超音波検査所見でも特別な変化なく、経過良好でした。

 

しかし、体調の変化が訪れたのは、この診察から4日後の2024年2月28日でした。

 

 

ここまでのまとめ

医薬品は選び方や使い方で期待される効果に大きな変化を起こします。

 

人であれば飲んでくださいと言えば、理性のある方であれば、飲んでくれるものです。

 

しかし、犬猫は違います。

 

特に猫ちゃんでは、内服薬のほとんどを受け付けてくれないものです。

 

少量であればおやつなどに混ぜて飲ませられるかもしれませんが、緩和ケア、特に終末期を見据えた時には、体から発せられる強いサインを押さえ込むのに、複数の医薬品を使わなければいけません。

 

体調の変化に合わせて、医薬品の種類や剤形などを選択するために、その時体調が安定していなければ、診察の間隔は短いものとなります。

 

また、ペットのことだけでなく、その横で必死に看病してくれるご家族様のメンタル面を支えなければいけません。

 

それが、私たちが目指す在宅緩和ケアです。

 

次回のブログで、診察24日目から最後の日までです。

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猫ちゃんの病気として有名なものに、甲状腺機能亢進症があります。

 

☑︎ご飯をよく食べる割には、痩せたような気がする。

 

☑︎毛並みが粗造になった気がする。

 

☑︎気が立ってるような気がする。

 

など、わかりやすい所見はいくつかありますが、中にはほとんど症状を表さないのに、甲状腺機能亢進症を発症している猫が一定数いる印象を受けています。

 

通常の動物病院では、血液検査項目をギリギリまで絞って検査されることが多いですが、これは診療費を抑え込むために、獣医師が必死に考えて項目を減らしてくれているからだと考えられます。

 

しかし、その分見落としが出るかもしれないことを理解していなければいけません。

 

追加検査が必要にあれば、また通院しなければいけないし、また針刺しという侵襲性のある行為を行わなければいけないので、できれば1回で広く検査してあげたいという方と、とはいえ金額の安さを重視する方と、二分されると思います。

 

通院頻度が高くなり、針刺し頻度も高くなることは、犬猫にとってストレスであることに間違い無いと考えています。

 

もし検査項目をもっと広く見てもらいたい場合には、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

 

今回書かせていただく症例は、重度の肝障害と黄疸を伴い、かかりつけの動物病院からは何もできないのでこのまま旅立つのを待つしかないとされた猫のハナちゃん、14歳の女の子の緩和ケアについてです。

 

はなちゃん①.jpg

 

当院での在宅緩和ケアでは、最初に広く検査をさせていただきデータを集め、データに基づいて、在宅緩和ケアプランを構築していきます。

 

検査結果から、隠れていた病気が見つかり、毎日の点滴によって、状態が調子の良かった頃のように戻ってきてくれています。

 

検査項目を絞ることだけが正義じゃないかもしれません。

 

既往歴

2021年に腎臓の数値が悪いとされ、血管拡張薬の内服を開始と、2週間に1回の通院で、ビタミン剤などを入れた皮下補液を実施するように指示されていたとのことでした。

 

2024年1月20日の段階では2.6kgあった体重が、2月2日から急に食べなくなってしまったことを機にガクッと下がり、2月4日時点では2.1kgまで減っていました。

 

また、この日は検診日だったこともあり動物病院に通院させて検査したところ、肝臓の数値が著しく悪化していることを指摘され、余命1週間とされたとのことでした。

 

今まで肝臓について何も指摘されてなかったこともありましたが、今回も特別今後の方針を示してくれず、ただ余命だけを言われてしまったことから、もし厳しいのであれば、もう苦手な通院はさせないで、在宅緩和ケアに切り替えたいという想いで、当院までご連絡をいただきました。

 

初診(診察1日)

見るからにぐったりしていたこともありましたが、血圧がしっかりしていることから、採血、そして超音波検査を実施することを踏み切りました。

 

猫のはなちゃんは、特別大きく嫌がることなく終始検査に協力してくれたこともあり、検査にかかる時間は、おおよそ15分ほどで完了することができました。

 

検査後も、好きなお部屋にトコトコと歩いて行き、そこでくつろいでいてくれましたので、現在予想している内容と、今後の流れ、今後起こりうることやその時はどうすべきなのかなど、幅広くお話しすることができました。

 

また、すでに苦い内服薬を飲ませるには厳しい状況だったこともあり、苦味のほぼない内服薬のみで作成したシロップ剤を1種類、朝晩の投薬と補水を目的とした皮下点滴としました。

 

皮下点滴トレーニングも問題なく完了し、医薬品もお渡し、この日から猫のはなちゃんの在宅緩和ケアが開始されました。

 

はなちゃん②.jpg

 

再診(診察5日目)

状態がかなり安定しており、以前のはなちゃんとは別の猫ちゃんのような毛並みにまで回復している姿を見せてくれていました。

 

3日間も食べられなかったご飯を食べてくれ、お水も飲め、ジャンプまでできるほどまでに改善してくれたとのことでした。

 

初診時に実施した血液検査結果では、肝臓の数値がかなり高く、黄疸も強く出ていることがわかりました。

 

心臓の数値も高かったのですが、甲状腺の数値がかなり高いことが検出されました。

 

この日から、甲状腺の薬、心臓の薬を開始して、更なる安定を図ることとしました。

 

 

はなちゃんの在宅緩和ケア

 

もう治らない、余命1週間と言われて家に帰った後も、苦しい時間は続きます。

 

今どんな状態で、最後の日までの間にどんな変化が起こり、どんな症状を出すのか。

 

その時どう捉えて、何をしてあげられるのか。

 

治療が叶う状態であれば、ある程度の診療時点での説明で十分かもしれませんが、緩和ケア、時に終末期ケアの段階では、未来に起こり得る変化までをお伝えしておく必要があります。

 

本当に今の準備だけしかできないのか。

 

不安は募る一方であり、その不安は自然に減少することはないです。

 

猫のはなちゃんの場合には、たまたま東京世田谷区だったこともあって、私たちがお伺いすることができ、在宅緩和ケアプランを組むことができました。

 

もしお伺いできないエリアにお住まいの場合には、お薬だけを受け取って帰るのではなく、不安な気持ちを少しでも払拭できるように、かかりつけの獣医師に全部聞いてもらうようにしましょう。

 

きっとご家族様のお力になってくれるはずです。

 

最後まで粘り強く、少しでも緩和できるよう、方法を追求してあげましょう。

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猫の心臓病といえば、肥大型心筋症です。

 

と言い切ると語弊がありますが、犬だと僧帽弁閉鎖不全症が多い中で、猫ちゃんは心筋の病気が多い印象があります。

 

そもそもが動物病院への通院を苦手とする猫ちゃんにとって、心臓病で苦しい中、ストレスを加えられながら通院して、検査を受けることが、果たしていつまで続けられるのかという課題は常に抱えているのが、動物病院として心苦しいところではあります。

 

しかし、通院してもらえなければ、心臓の精査は叶わないため、可能な限り、動物病院としても通院を促すしかないのが現状です。

 

ご自宅にいながらも、血圧や心電図などの補助的な検査であれば、猫ちゃんの性格にもよりますが、ご家族様だけで実施可能です。

 

心筋症を発症すると、肺水腫を起こすこともありますが、胸水貯留を起こすこともあります。

 

肺水腫を発症した場合には、その苦しさから救急的な処置が必要であり、また帰宅後も酸素ハウス内での集中管理を余儀なくすることが多いです。

 

完全に回復するまでは動物病院の酸素室内で集中的に管理してもらい、安定して酸素室から離脱できるようになってから帰宅させてあげたい気持ちも山々ですが、実際のところ、入院中は慣れない環境ということもあり、ご飯を全く食べてくれない、という猫ちゃんが多くいます。

 

その場合には、安定する前に帰宅せざるを得ないため、在宅での集中的な酸素管理が求められます。

 

今回は、通院で肥大型心筋症の検査と治療を行っていましたが、もう入院が難しいとされ、在宅での緩和ケアを実施した猫のミーちゃんのお話です。

 

東京足立区に住む、穏やかで人が大好きな日本猫、15歳の女の子です。

 

胸水抜去を繰り返しながらも、調子がいい時は酸素室の外でゆったりと過ごせていました。

 

内服薬の量が増えてしまって大変ですが、それ以上に動物病院での入院が辛かったのか、全部理解したようにちゃんとウェットフードと一緒に食べてくれていました。

 

最後は家族が揃った団欒の時間、2023年11月15日、リビングで眠るように旅立って行きました。

 

家族の力って、本当にすごいなと思う症例です。

ミーちゃん①.jpg

 

既往歴

2018年10月に、呼吸が変だなという感じから、かかりつけの動物病院に通院したところ、肺水腫を発症していたことから、緊急入院し、3日間入院した後に安定した頃から退院となったとのことでした。

 

ただ、8月にも健康診断で診てもらっていたのに、なぜ今になって急に心臓病が発症したのかということに不信感を得たことから、他院後は別の動物病院にて、心臓病の治療を進めていたとのことでした。

 

なお、最初の動物病院に今までの経過を伺ったところ、教えてくれなかったとのことから、新しいかかりつけとなる動物病院では、過去のデータがないままの初診となりましたが、特別問題なく受け入れてくれたとのことでした。

 

こちらの動物病院では、月に1回だけ、循環器専門医が来てくれたとのことで、その日に通院して心臓の精査をしてもらっていたとのことでした。

 

最初の動物病院で出された内服薬を確認すると、別の医薬品の方がミーちゃんの容態には合うかもしれないとことから変更を加えてくれたとのことでした。

 

その後も何度か肺水腫を繰り返し、入退院を繰り返しましたが、2022年9月に胸水が溜まってしまい、動物病院で抜去してもらったところ、それ以降キャリーを見ると異常に興奮してしまうことから、もう通院は難しいと判断し、かかりつけの動物病院と相談し、往診専門動物病院で緩和ケアを受けるように指示されたとのことでした。

 

経過報告書を作成していただけていたので、猫のミーちゃんの経過を把握することができ、どの抗生物質がミーちゃんと相性が悪く、またどの心臓薬を使ったらどんな反応が出たので、今の処方内容になっているのかという投薬歴も明記されていました。

 

ミーちゃんのことを真剣に診ていてくださったことが、書面から感じ取ることができるものでした。

 

ミーちゃんの在宅緩和ケアプラン

2022年10月3日に初診で訪問させていただきました。

 

知らない人が来ても、特別興奮することなく、逆に酸素ハウスから出してと言って、出てきてはスリスリしてくれました。

 

初診時には、すでに酸素ハウスが設置されており、酸素流量8L/min、酸素濃度60%で、酸素室内の酸素濃度が35%〜45%で管理されていました。

 

投薬内容も継続処方とさせていただき、内容によっては苦味の少ないもので代用できると判断し、できるかぎり飲みづらさを緩和させてあげました。

 

最初のうちは、月1回程度の訪問と継続処方、エコー検査、3ヶ月に1回の血液検査でコントロールしていました。

 

2023年1月9日から、呼吸状態が悪化してきたため、酸素管理方法を変更し、最初の頃の酸素発生装置1台体制だったのに対して、酸素発生装置2台での管理に変更しました。

 

また、胸水貯留を確認したため、処方されていた1日1回の利尿剤の用量を増加させることで、胸水の消失を認めることができ、そのまま管理としました。

 

しかし、3月7日に胸水が中等度まで貯留していることを確認し、胸水抜去に踏み込みました。

 

胸水抜去は、肋骨と肋骨の間を針で貫く必要があるため、腹水抜去と比較にならないほどの痛みを伴います。

 

そのため、往診では鎮静処置をしてから実施するようにしていますが、我慢強い場合や、状態から鎮静状態にある場合、すでに鎮静処置に耐えられない状態などの場合には、そのまま抜去してあげています。

 

胸水抜去は、通常の動物病院で実施するのと、往診にてご自宅の中で抜去するのでは、リスクが異なります。

 

そのため、十分にご理解いただき、事前にご家族様の同意を得ることが必要となります。

 

ミーちゃんの場合には、鎮静処置をせずに戦うこととし、見事耐えてくれました。

 

抜去する、ものの数分で呼吸が安定し、酸素室内であれば立ち上がって鳴いてる姿まで見せてくれました。

 

失神を起こす可能性や、急にチアノーゼを起こす可能性などを説明させていただき、その時にどんなアクションが取れるのか、事前準備を徹底的にさせていただきました。

 

往診は救急車ではないこと、そして救急症例には対応しかねるため、急変時は救急が対応できる動物病院に飛び込むか、そのまま看取ってあげるかの2択です。

 

ただ、そのまま看取るとしても、その時ご自宅でできることを理解しておけば、最後まで病状と戦うことができます。

 

気づけば家族みんなが、立派な動物看護師となり、ミーちゃんの容態をしっかりと管理してくれるまでに成長していました。

 

旅立つ前日に1回だけ発作を起こしましたが、最後の時は、本当に眠るように静かだったとのことでした。

 

2023年11月15日、家族が見守る中、大好きなリビングで静かに旅立ちました。

 

ミーちゃん②.jpg

 

動物と暮らす全ての方へ

最初に通院した動物病院は、おそらく家から近かった、その地域で人気があった、診療費が安かったのでいい先生だと思った、などの理由で、その動物病院をかかりつけとしたかと思います。

 

しかし、動物病院で働く獣医師も人であり、それぞれに得意、不得意があります

 

予防に力を入れる獣医師もいれば、先進医療に尽力し、新たな病気を発見したり、治療方法を提唱したりなど、獣医師によって様々です。

 

本当に、今のかかりつけの動物病院だけで大丈夫でしょうか。

 

現在の動物病院のスタンダードは、ある程度の医療機器や設備は整っているものであり、またネットワークとしては、外部の専門医による診療日を設けている動物病院も少なくありません。

 

経過報告書の作成や紹介状の作成などは、日常診療業務の中で当たり前のように舞い込んできます。

 

今の時代は1次診療と2次診療が手を組み、紹介医療の確立がある程度成されてきていると考えています

 

そんな中、もし専門医への紹介を拒まれた場合には、その理由に納得できるかどうか、まずはかかりつけの動物病院にお尋ねください。

 

しっかり理由を伺った上で、それでも納得できなければ、かかりつけの動物病院を変えることをお勧めします。

 

その選択が正しかったかどうかは、最後にわかることと思われますが、その決断をするかどうかは、全てご家族様次第です。

 

覚悟して行動するのも一つ、またかかりつけの動物病院を信じて最後まで愛犬、愛猫の命を付けて行くのも一つです。

 

そして、もし通院が難しいとなった場合には、病気を受け入れ、余生をできるかぎりストレスなく過ごさせるために、在宅緩和ケアに切り替えることも、また一つだと覚えておいてください。

 

何をどこまでするのが正しいのか、には答えはないです。

 

早期からご家族様で相談し、少しでも後悔ない選択ができるよう祈っています。

 

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猫の口腔内腫瘍で最も多いとされるのが、扁平上皮癌です。

 

扁平上皮癌を抱えると、口の動きに合わせて痛みや出血を伴う印象があり、ご飯を食べなくなり、動かなくなるという経過をよく見受けます。

 

また、発生場所にもよりますが、頬が腫れてくるように見えることから、歯の病気に分類される根尖部膿瘍を疑われ、根尖部膿瘍の治療に入ってしまう場合があります。

 

この場合にも、基本的には麻酔下での処置となるため、口腔内をしっかりと観察することができ、その違和感から細胞診などの実施を踏み切り、扁平上皮癌が発見されるというケースもあります。

 

また、初期であれば腫脹も軽度なため、もしその時に鼻風邪や鼻炎のような症状を伴っていた場合には、猫風邪などで様子見とされてしまうことが多いです。

 

猫風邪の治療に、もしプレドニゾロンなどのステロイドを使用されていた場合には、少し状態が改善してしまうということが起こってしまうかもしれません。

 

そのため、細胞診などの麻酔をかけた検査への踏み込みが遅れてしまい、猫風邪にしては症状が長く、改善したのに徐々に悪化してきておかしいとされ、ようやく麻酔に踏み切り口腔内を精査すると明らかな違和感を認め、検査、診断とつながるという、少し回り道をしてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

 

この病気は、明らかな変化(頬の腫脹や鼻の形状変化など)を伴っていなければ、検査に麻酔が必要となることから踏み込まれづらいところがありますが、もし見つかれば腫瘍性疾患となり、可能であれば腫瘍を専門とする動物病院でがん治療に踏み込みましょう。

 

また、現状は慢性の猫風邪だと思い長期間の服薬をしている猫ちゃんの場合にも、一度セカンドオピニオンとして、腫瘍専門の動物病院で、がん専門医の診察を受けることをお勧めします。

 

今回書かせていただく症例は、東京江東区にお住まいのさぶちゃん、12歳の日本猫の男の子です。

 

現在も継続中の在宅緩和ケアについて書かせていただきます。

さぶちゃん1.png

 

今までの経緯

2023年12月に左頬からの排膿を認めてかかりつけの動物病院に通院したところ、その違和感から検査に踏み込み、扁平上皮癌と診断されました。

 

その状況から、内服薬での緩和治療とされていましたが、2024年2月を迎えると徐々に食欲が下がり、内服薬を受け付けてくれなくなりました。

 

もともとドライフードを好んでいましたが、この時はすでにチュールしか食べてもらえず、それの量も減ってしまっていました。

 

もう通院させるのは厳しいと判断され、2024年2月13日に当院までご連絡をいただきました。

 

 

初診(診察1日目)

お伺いすると、猫のさぶちゃんはリビングで伏せており、手をぴんと伸ばしたまま、終始じっとしていて動きませんでした。

 

目が開かないほどの左頬の腫脹もあり、毛並みもパサパサ、脱水も著しい状況でした。

 

過去の血液検査結果、かかりつけ動物病院での処方歴など、お母さんがお持ちだった全てのデータを見させていただき、現在までにどんなことがあり、何をされていたのかなどについて整理させていただきました。

 

血液検査結果では、腎臓や肝臓などに異常所見はなく、栄養状態なども含めて特記すべき所見は認めませんでした。

 

腫瘍疾患を抱えていて、特に肝臓転移や腹腔内腫瘤による障害などを伴わない場合には、血液検査結果がキレイなことが多いです。

 

そのため、肝臓や腎臓の機能は正常に残っていることから、現在の状態をサポートしてあげ、自力でご飯を食べたり、お水を飲んだりできるようになれれば、体を維持できることが期待できます。

 

お母さんのお話によると、まだ歩いて水を飲みに行っているが、全然飲めていないように感じるとのことがあり、おそらく扁平上皮癌によって、舌をうまく動かせていない可能性を疑いました。

 

食欲がないのも、痛みと口を動かすことが辛いのではないかと疑いました。

 

排便も、食欲の低下とともに徐々に少なくなり、ころっとした硬いものが少しでた程度とのことでした。

 

おしっこは出ていないとのことで、腎臓の問題で尿の生成ができていない、いわゆる腎不全の最終段階にある無尿期ではなく、単純に水が飲めていないことで、体内にある少量の水分をうまく運用して生命維持をしている可能性を疑いました。

 

そして、診察開始の少し前に吐血のような症状があり、結構な量の血が出ていたこともあってか、舌色はかなり白く、出血性の貧血を伴っている様子でした。

 

今の状態に出血が重なったこともあり、さぶちゃんはぐったりしていたと考えました。

 

状態から、同日に検査で負担をかけることは避けた方がいいと考え、今までのデータを持って在宅緩和ケアプランを組み立てていくこととし、脱水補正ではなく投薬を目的とした皮下点滴を1日2回実施してもらうこととしました。

 

在宅緩和ケアプランを組む上で大切なことは、病状だけでなく、この犬猫と暮らすご家族様の環境などをすることです。

 

具体的には、生活環境や家族構成、誰がペットの看護や介護に協力してくれるのか、その人たちの日常のスケジュールなどです。

 

猫のさぶちゃんでは、まずは皮下点滴をご自宅で実施していただくために、皮下点滴のトレーニングをしていただきました。

 

1つ1つの手順を一緒に、ゆっくりと指導させていただきますので、初めての方でもご自宅で、家族内で皮下点滴を実施できるようになります。

 

道具をお渡しし、次回診察を3日後としました。

 

薬の効果がどこまで出るかにもよりますが、状態が悪くなってから内服薬がうまく飲ませられていなかったことを考慮すれば、少し状態が上がってくることが期待できると考えました。

 

再診(診察4日目)

 

そこには、元気さを取り戻したさぶちゃんがいました。

 

さぶちゃん2.png

 

本当にびっくりするくらいまで状態が上がっており、遊んでって言わんばかりに猫じゃらしのおもちゃを持ってきては、戯れてくれていました。

 

ふらつきも強く、お水も飲めていなさそうだった初診の時とは打って変わり、動きも俊敏にあり、ジャンプまでするようになったとのことでした。

 

水もちゃんと飲めているようで、体重も増え、毛並みもだいぶ改善しており、もう見た目が別の猫ちゃんのようでした。

 

ご飯もチュールだけでなくウェットフードを食べてくれるようにあり、少し軟便が出ましたが、その後良便に戻りました。

 

さぶちゃん3.png

 

在宅緩和ケアの可能性

私たちが得意とする「犬猫の在宅緩和ケア」では、末期症状だった犬猫の状態を少しでも楽にしてあげることで、体の不自由左から諦めていた行動を、犬猫たちの意思によってまた時間を与えられる可能性があります。

 

また、緩和ケアは治療ではないため、延命かどうかの問いには答えられません。

 

しかし、少しでも楽に余生を過ごさせてあげたいと考えた場合、緩和ケアは最良の選択肢になりうると考えています。

 

犬猫は言葉を話せないため、送られてくるサインをどう受け取り、どう判断していくかの全ては、ご家族様次第です。

 

最後の時間を、できる限り家の中で過ごさせてあげたいとお考えの場合には、在宅緩和ケアをお勧めします。

 

ご自宅の地域まで往診で来てもらえる動物病院、または往診専門動物病院があるかどうかを、事前に調べておきましょう。

 

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腎臓病にはステージがあります。

 

時間と共に、徐々に進んでいく病気に分類されるのが腎臓病であり、早期発見が大切であり、早期からご飯の選定やケア、投薬することで、進行を遅らせることが期待されています。

 

多くの猫ちゃんが動物病院への通院を苦手としているため、わんちゃんのように毎月のように動物病院に通院して状態を診てもらうことが叶わないのも事実です。

 

そのため、日常の中での変化を、ご家族様がしっかりと観察しておく必要があります。

 

「少し水を飲む量が増えたかな?」

「ご飯を残すようになった?」

「痩せてきた?」

 

そのほかにも、毛並みはどうなのか、ふらつきはあるのかなど、日常に潜む違和感に、目を光らせてあげましょう。

 

今回書かせていただくのは、腎臓病末期の猫ちゃん、ソマリの稟ちゃんのお話です。

 

最後の1週間を動物病院への通院ではなく、往診(在宅医療)に切り替え、できる限り負担のない時間をご自宅で過ごしたお話です。

 

2024年2月9日に出逢い、在宅医療プランを組み、負担のない範囲で、毎日の皮下点滴を頑張ってもらいました。

 

少しだけ元気さを取り戻すことができましたが、やはりステージは末期。

 

5日後の2024年2月14日、家族の見守る中、静かに眠りにつきました。

 

①.jpg

 

 

往診までの経緯

かかりつけの動物病院までは徒歩1分ほど近かったこともあり、年1回の予防接種には行くことが出来ていました。

 

腎臓病を指摘されたのは去年のことで、その日から3ヶ月に1回の通院検査の指示を出されたとのことでした。

 

2024年1月に入ると、食欲がだんだんと下がってきました。

 

2024年2月4日の通院時には、すでに食欲がほとんどなく、普段好きだったドライフードは全く食べられず、ウェットフードをなんとか食べてくれていました。

 

この日の検査結果で、腎臓の数値が大きく悪くなっていることを受け、入院管理とされました。

 

腎臓病の入院点滴では、多くの場合で3日間ほどの集中管理を行なった上で数値に改善が見られるか否かで、予後判断となります。

 

今回、3日間入院するも改善を認めないことから、余命宣告を受けたとのことでした。

 

かかりつけの動物病院からは、週2回の通院を促されましたが、もう動かすだけでも辛そうな姿を見ていて、往診に切り替えたいと希望されました。

 

 

初診(1日目)

お伺いすると、ソファーの下で寝転がっている稟ちゃんがいました。

 

状態は日々下がっているとのことで、数日前まではまだ普通に歩けていたものの、後肢の踏ん張りが効かないのか、ふらつきが強く出てきたとのことでした。

 

食欲もこの時点でガクッと下がっており、ウェットを1、2回舐め、リーナルリキッド(腎臓病用の液体ご飯)を強制給餌(10ml/回)で3回くらい、チュールを2本ほどやっと食べてくれたとのことでした。

 

おしっこの量も少し減った印象とのことだが、飲水量は多くなったような印象とのことでした。

 

最後の検査から数日しか経っていませんでしたが、急性変化の中にいることを考慮し、また当日の状態を加味した上で、検査を実施しました。

 

また、過去の検査結果から、すでに腎数値がかなり高くなっていることから、1日2回の皮下点滴が必要であると考え、同日、皮下点滴指導を実施し、無事打てるようになっていただけました。

 

1日2回の皮下点滴が実施できるようになると、在宅医療プランを組む上で選択肢が多くなります。

 

今回の稟ちゃんのケースでは、ご家族様が基本在宅していただけることを踏まえ、1日2回の投薬を踏まえた皮下点滴と、苦くない薬だけで組んだ医薬品シロップを1日1回の投与として、在宅医療プランを組ませていただきました。

 

そして、腎臓病の終末期では、多くの確率で発作が出ます。

 

この日の最後は、頓服薬の指導を行い、今後どんなことが起こりうるのか、その時何ができるのか、どんな選択肢があるのか、などをゆっくりとご説明させていただきました。

 

初日は2時間半ほどのお時間をいただき、綿密なプラン構築を行い、再診は翌日としました。

 

明日の朝の皮下点滴が、ご家族様だけで実施する最初の在宅皮下点滴です。

 

うまく行くことを祈って、この日は診察終了です。

 

 

再診(2日目)

前日とは打って変わり、一回だけでしたがダイニングテーブルまで飛び乗ったとのことでした。

 

食欲も上がってきたのか、割と食べた印象とのことで、チュール2本、ウェットフードをすりつぶしてペーストにしたものを20gほど、リーナルリキッドを少々、カツオのおやつにはがっつくほどだったとのことでした。

 

お尻がいつもおしっこで濡れているとのことを受け、介護用のお尻洗浄液をお渡しさせていただき、少しでも稟ちゃんに負担なく綺麗にしてあげられるような準備をさせていただきました。

 

再診(5日目)

3日前とは打って変わり、もうほとんど動けない様子でした。

 

1日中ずっとソファーの下で寝ており、あまり外に出てくることはなかったとのことでした。

 

食欲もなく、もうご飯も食べてくれなくなったとのことでした。

 

ここから強制給餌をするかどうかに分かれますが、状態とステージを考慮すると、もう無理して食べさせることで、逆に嫌な思い出ばかり作ってしまうことが懸念されることもあり、強制級はお勧めしませんでした。

 

お水を飲む量もガクッと減り、いよいよお別れの準備に入ったような印象を受けました。

 

いつまで点滴を続けるのかという質問を受けることがあります。

 

これには状態を把握していないと、一概にお伝えできませんが、何のためにその処置を行なっているのか、によって答えは異なります。

 

使用する医薬品、その用量、用法、愛犬、愛猫の病気または病状などをしっかりとかかりつけの動物病院、獣医師から説明を受けておくことで、その判断につながります。

 

稟ちゃんのケースでは、最後まで実施するようにお伝えさせていただきました。

 

四肢浮腫も、胸水や腹水の貯留も認めず、ちゃんと水を代謝できている状態であれば、そこまで点滴を絞る必要はありません。

 

ただ、もう皮下点滴を吸収できなくなってきた頃からは、輸液量をギリギリまで絞るという方法を取ることもありますので、当院では適宜お伝えさせていただいております。

 

次回の診察は4日後としましたが、もうその日が来る可能性は低いことも、同時にお伝えさせていただきました。

 

②.jpg

 

お別れ(6日目)

翌日の昼間に、稟ちゃんは眠りにつきました。

 

最後に1回だけ発作を起こしましたが、すぐにご家族様による鎮静処置を実施していただくことができました。

 

急変時に何もできないわけではなく、事前準備さえできていれば、ご家族様だけで対応できることはあります。

 

終末期の動物たちと過ごすのであれば、事前の準備と今後起こりうること、その時何をどうすればいいのかなどを、きちんとかかりつけ動物病院と、獣医師と、話し合っておくことが大切です。

 

最後まで本当に力強い子でした。

 

稟ちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

スタッフ一同

 

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病気は同時に、別々のものが発症しないと思ってます。

 

とはいえ、立証できないことや、もちろんそういった事例もあるとも思います。

 

ただ、大体のケースで、ストーリー性に病気が発症し、どれが原疾患だったのかを追求することが、完治であったり、緩和ケアだったりの初手につながると考えています。

 

今回お話しする「猫ちゃんの扁平上皮癌」の終末期ケアですが、もともとはかかりつけの動物病院で治療を受けていました。

 

徐々にご飯を食べられなくなり、ふらつきも見え始める中、それでも通院するたびに普段出さない鳴き声を出すことから、在宅での終末期ケアに切り替えた症例のお話です。

 

緩和ケアプランは、犬猫の病気だけでなく、性格や取り巻く環境、ご家族様が何を求めるのかによって異なってきます。

 

扁平上皮癌の猫.jpg

 

予約時の電話内容

2ヶ月ほど前に、口を気にすることを主訴にかかりつけの動物病院へ通院したところ、扁平上皮癌の可能性があると言われ、すぐに2次医療施設を紹介受診し、確定診断を受けたとのことでした。

 

年齢は12歳であり、抗がん剤などの説明を受けましたが、入院や高頻度での通院には向かない性格だったことから断念したとのことでした。

 

かかりつけの動物病院の獣医師と相談し、緩和ケアに切り替えることで進めていましたが、最初は頑張れていた内服薬の投与も、食欲の低下とともに、徐々に難しくなり、もう内服は厳しいいと思い動物病院に相談したところ、往診専門動物病院があることを教えてもらい、当院を紹介されたとのことでした。

 

すぐに予約を確定し、翌日訪問することとなりました。

 

当院は、東京23区を中心に、23区外、千葉、埼玉、神奈川を含む近隣エリアまで往診対応しております。

 

最近では、動物病院からの紹介が増えておりますが、まだまだご家族様自身で探し当ててご連絡をいただくことのほうが多いです。

 

今回のケースでは、経過報告書もいただけるとのことから、現在までにどんな治療をしてきたのかなどがわかるため、スムーズに診察に入れました。

 

初診時

ふらつきながらも、悠々自適に家の中を歩いており、初対面の私たちに擦り寄ってきてくれるほど人懐っこい性格の猫ちゃんでした。

 

食事は猫ちゃん自身でお皿から食べることは難しく、ご家族様が口の奥の方にペースト状のご飯を入れてあげると飲み込んでくれるという状態でした。

 

排便は3日前が最後でころっとしたものを1粒、排尿は普段と変わらずできているとのことでした

 

飲水はできているが、お皿の水が目立って減っているような印象はないとのことでした。

 

咳もなく、呼吸状態も安定していました。

 

家族構成はお父さん、お母さんの二人暮らし。

 

お父さんはカレンダー通りのお休みで、お母さんはこの病気の発覚を機に、お仕事を辞めて常に在宅されているとのことでした。

 

環境としては、猫ちゃんの看護、介護ができる大人が2人以上いるため、大体のプランを組むことが可能であると判断しました。

 

いただいた紹介状にもあったように、扁平上皮癌の終末期ケアを中心とした緩和ケアプランを作成することで、診療を進めます。

 

今までの血液検査結果を拝見すると、至って正常であることが、こういった病気の特徴だったりもします。

 

肝臓腫瘍などの場合には肝数値と言われる項目に変化が見えるのですが、扁平上皮癌やリンパ腫などで、臓器に浸潤していないものの場合には、体調不良を主訴に血液検査を時失したが特別異常所見がなく、画像検査をしたら見つかったというケースが多いです。

 

そのため、検査は負担のかかりすぎない範囲で、できる限り広く実施してあげることが、私としては重要だと考えています。

 

金額面で許容することが難しい場合には、必ず実施前に獣医師から説明があるかと思いますので、そこで相談するようにしましょう。

 

検査は検査であり、処置は処置。

 

検査して、治療を続ける費用が難しくならないように、包み隠さず相談するようにしましょう。

 

この日から在宅緩和ケアプランを実施していただくこととしました。

 

この猫ちゃんの場合、肝臓や腎臓、膵臓に問題がないことから1日2回の注射薬を用いた皮下点滴、痛み止めは1日3回の皮下投与をお願いしました。

 

液量もかなり少なく設定できるため、猫ちゃんに刺す針の太さも一番細い、子猫用の針としいて選択されるもので実施していただきます。

 

これから毎日刺すことから、針の太さはとても大切な選択ポイントです。

 

ただ、細ければいいっていうこともなく、長くじっとしていられないタイプの犬猫の場合には針を少し太くしたり、液量をたくさん入れなければいけない場合には、一番太いものを選択することもあります。

 

皮下点滴1つをとっても、何のために実施するのか、実施環境はどこまで整っているのかなどを明確にすれば、自ずとどんな道具選択が一番いいのかを導き出すことができます。

 

食事は好きなものをあげるようにお伝えしました。

 

口の痛みは、医薬品の力である程度緩和できます。

 

少しでも、最後に食べたいものを探してあげるようにお伝えしました。

 

その後の流れ

初診時に、すでに皮下点滴指導が完了し、そのほかにも頓服薬指導なども完了したため、以降は週1回の往診としました。

 

毎週の往診では、超音波検査による胸水や腹水の貯留がないかを評価し、状態にあった医薬品を調整してお渡ししていました。

 

初診後すぐに食欲がグッと上がり、ご飯を久しぶりに猫ちゃん自身で食べてくれたとのことでした。

 

ジャンプもできるようになり、大好きだったソファーの上に、猫ちゃん自身で飛び乗ることができたとのことでした。

 

初診から4 週間、安定した終末期を過ごせていましたが、5週間目には徐々にまたふらつきが出始め、同時に食欲がグッと下がってきました。

 

食欲増進を期待する軟膏も処方しましたが、効果は認めませんでした。

 

初診から6週間目、呼吸が荒くなってきたことを受け、酸素環境を構築することとなりました。

 

酸素濃度は45%でも呼吸が荒く、55%でようやく落ち着きました。

 

酸素室内で久しぶりに立ち上がり、ゴロゴロいっている姿を見ることができました。

 

酸素室設置から6日後、お父さんの帰宅を待っていたかのように、そのタイミングで旅立ちました。

 

猫の扁平上皮癌の在宅終末期ケア

 

今回の症例では、皮下点滴を1日2回+痛み止め注射を1日3回で組ませていただきました。

 

そして、呼吸状態に合わせて酸素室を設置し、酸素環境を整えることができました。

 

何をどこまでしてあげたいのかは、全てご家族様次第であり、その意向に沿って診療プランであったり、処方内容や在宅での処置プランを組んでいきます。

 

動物病院では何もできないとされ、家で看取ってくださいとされた時から、初めて往診専門動物病院を探すご家族様がほとんどの中、このように動物病院から紹介をしていただくことが叶えば、スムーズに診療に入ることができます。

 

少しでも広く、動物病院に往診専門動物病院の存在を認知していただき、命のバトンを途絶えることなく受け渡せる社会がくることを願っています。

 

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猫の腎臓病を疑うサイン(東京/猫/往診)

猫ちゃんは言葉を話すことができないため、猫ちゃんが発するサインをご家族様が受け取らなければいけません。

 

また、そのサインをどう解釈するかによって、次の行動が大きく変わることと思います。

 

動物病院への通院が苦手ながらも定期的にできているご家族様であれば、その違和感について、すぐにかかりつけの動物病院に問い合わせることで、通院を促してもらえることと思います。

 

しかし、猫ちゃんの多くがかかりつけと言えるほどの動物病院を持っていません。

 

通院が苦手であり、昔行っていた近所の動物病院で暴れてしまったことをきっかけに、もう来ないでくださいなど辛辣な言葉を受けたご家族様も少なくありません。

 

ただ、多くのご家族様が通院をやめるきっかけが、「キャリーに入れたら発狂した」「通院させた後に、逆にぐったりさせてしまった」などのネガティブな経験、そして、「体調が悪そうだったけど放っておいたら3日くらいで治った」というある種の成功体験をきっかけに、通院しないでも大丈夫という意識付けがなされているように思われます。

 

若い時であれば、それでもいいかもしれません。

 

免疫力も高く、栄養状態も万全の頃であれば、大病でなければ自力で回復させることができると思います。

 

でも、10歳以上の高齢だった場合には、受け取って違和感のサインを見逃すことで、致命的な結果となってしまうかもしれません。

 

緊急のサインはたくさんありますが、在宅緩和ケアの観点から、診察をしてあげたほうがいいと思われるサインをいくつかご紹介させていただこうと思います。

 

動物病院への通院が苦手な猫ちゃんと暮らしているご家族様は、是非ご一読いただければと思います。

 

ご飯の減りが悪い(食欲低下、食欲廃絶)

このサインは、もっとも見逃されやすいサインと言っても過言ではないと感じています。

 

ここでいう食欲低下は、こんなストーリー性を持っています。

 

a.1週間以上前から、食欲が50%ほどまで下がっているような気がしていた。

b.ここ1週間はほとんど食べなくなっていた。

c.2日前からは、チュールを舐める程度しかできていない。

 

往診のご依頼をいただくのは、大体cになってからが多く、10歳以上の猫ちゃんにおいて高い確率で腎臓病がヒットしています。

 

aの段階で往診のご予約をいただけるケースは稀となっている理由は、上記のとおりです。

 

3-③ 食欲が下がった.JPG

 

このケースでの往診では、1つの例として以下のような流れで取り組んでいきます。

・Day1 初診時にフル検査(血液検査、超音波検査)と処置

・Day2 翌日までに院内検査結果が出るので、結果に沿って処置内容を変動させ実施

・Day3 外注検査結果が出てくるので、その内容を元にさらに処置内容を変動させ、短期処方プラン決定

・Day7 経過確認と必要に応じての再検査。

 

このプランは、猫ちゃんの在宅緩和ケアプラン作成が必要な症例の多くで実施している内容です。

 

これから往診専門動物病院での在宅緩和ケアの実施をご検討中のご家族様にとって、1つの参考になればと思います。

 

よく吐くようになった(嘔吐、頻回嘔吐)

主訴で嘔吐が関与してくることはかなり多いです。

 

猫ちゃんの場合には、週1回程度であれば生理的嘔吐と呼ばれる現象かもしれないので様子見とされることが多いです。

 

しかし、以下のような場合には見逃してはいけません。

 

・嘔吐後に食欲減退、ぐったりなどの一般状態の変化を伴った場合

・頻回嘔吐(当院では1日に3回以上吐いたら該当するとお伝えしています)

 

また、上記以外でも、吐瀉物が白(胃液)ではなく茶色だった場合には、フードの色や未消化物の影響しているかもしれませんが、急いだほうがいいかもしれないので、必ずご連絡いただくようにお伝えしています。

 

高齢猫において、嘔吐は状態を大きく加工させる現象の1つですので、在宅緩和ケアでは注視してあげたいポイントになっています。

3-⑨ 吐く頻度が増えた猫 .jpg

 

 

痩せた気がする(削痩)

いつも一緒にいると、体重や体型の変化に気付きづらいものです。

 

毎日のように体重測定してあげていれば別ですが、おざなりにされやすい指標評価の1つが、体重の変化です。

 

痩せてきたなと感じた時には、すでに最盛期から半分近くまで減っているということも少なくありません。

 

年齢のせいで痩せてきたと解釈されているご家族様も多いですが、もちろんそういった場合もありますが、やはり基礎疾患によって体重減少を伴ってしまったと考える方が自然だと考えます。

 

もしかしたら、今苦しくてご飯を十分に食べられないのかもしれません。

 

基礎疾患がなければ老化現象だったと受け取ってあげるとして、まずは基礎疾患を調べであげましょう。

 

また検査は万能ではないので、原因は突き止められないかもしれません。

 

その場合でも、今ある症状に対して緩和処置を施してあげることは可能ですので、まずは獣医師に相談するようお勧めします。

 

3-⑦ 痩せてきた猫.png

 

まとめ

このほかにも、ふらつきが出始めた、飲水量が増えた、おしっこの量が増えた、口が痛そう、臭いが変わった、などまだ挙げればたくさんありますが、今回はよく往診の初診で伺う主訴の中から抜粋させて記載させていただきました。

 

猫ちゃんは通院が苦手な生き物です。

 

だからこそ、日常の中で彼らが発するサインを、ご家族様が的確に捉えなければいけません。

 

もし通院ができない猫ちゃんと暮らしている場合には、まずは家まできてくれる往診専門動物病院があるのかを検索しておきましょう。

 

また、もし可能であれば、大きく体調が下がってしまう(急変)前に、事前にその往診専門動物病院で健診を受けておくことをお勧めします。

 

東京23区とその近郊(都下、千葉、埼玉、神奈川)までであれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室が訪問させていただきます。

 

ご家族様がではさわれなくても大丈夫です。

 

在宅医療専門スタッフがお伺いさせていただきますので、診察時に、ご家族様に保定をお願いすることも、捕獲をお願いすることもございません。

 

猫ちゃん、特に10歳以上の猫ちゃんと暮らしている場合には、健診を踏まえて、一度ご相談ください。

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年末年始の休診情報

●往診受付最終:2023年12月26日

●往診休診:2023年12月27日〜2024年1月3日

●往診受付開始:2024年1月4日

 

 

初診の方へ

当院は、在宅医療に特化した往診専門の獣医療をご提供させていただいております。

愛犬、愛猫を、積極的な治療ではなく、苦痛をできるだけ減らしてあげ、家でゆっくりと余生を過ごさせてあげたいとお考えの場合には、在宅での緩和ケアを選択することができます。

体調が著しく低下し、もう何も食べない、動けないなど、ぐったりしてしまう前に、まずはご連絡ください。

事前に状況を把握させていただくことで、「急変時にどうしたらいいのか」をお手伝いさせていただきます。

 

もし年末年始の休診期間に入ってしまったとしても、そのタイミングぐったりしてしまいましたら、慌てず、まずはご連絡ください。

 

緊急のみに対応できる特別診療として、お受けできる場合がございます。

 

その場合には、年末年始特別診療費として、別途30,000円がかかります。

 

ご了承くださいますよう、お願い申し上げます。

 

 

当院での処方管理期間中のご家族様

休診期間中にぐったりした場合には、まずはご連絡ください。

 

スタッフが待機しておりますので、お電話にて状況を詳しくお伺いさせていただきます。

 

なお、緩和ケア、終末期ケアに向けて、在宅での皮下点滴トレーニングがお済みの場合には、内服ができない状況でも、注射薬の処方にてご自宅で対応していただくことが可能です。

 

生活環境を踏まえた診療プランを組ませていただいておりますので、安心して年末年始をお過ごしいただければと思います。

 

また、もし緊急での往診が必要と判断した場合には、対応できる場合もございます。

 

諦めず、まずはお電話にてご相談ください。

 

2023年も残すところあと僅か。

 

心穏やかに過ごせることを祈りましょう。

 

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「心臓血管肉腫」という病気をご存知でしょうか。

 

血管肉腫は血管内皮由来の細胞が腫瘍化することで発生する悪性腫瘍です。

 

心臓にできる腫瘍の多くが血管肉腫であり、「運動量が減った」「呼吸が苦しそう」「顔色が白っぽい」「急に立てなくなった」「失神した」などの所見から発覚することが多いです。

 

この病気になると、心臓と心臓を覆う膜(心嚢膜)の間に液体が貯留し、心臓を外からギュッと握られたような、胸部を強く圧迫されたような感覚になる「心タンポナーデ」を発症することがあります。

 

解除する方法は、この貯まってしまった液体を抜去しなければいけません。

 

そして、この抜去には胸郭に針を刺さなければいかないため痛みを伴い、そして胸水抜去と比べて危険度は高くなります。

 

心臓の血管肉腫を抱えた場合には、外科手術をしても生存率はかなり低いことから、貯留した場合に繰り返し抜去するという選択肢を選ばれる方が多い印象があります。

 

今回ご紹介する症例は、心臓血管肉腫を抱えたゴールデンレトリバーのGENちゃんです。

 

2023年11月2日に急に立てなくなってしまったことを主訴に頑張って通院したところ、心嚢水の貯留と心臓腫瘍が見つかり、在宅終末期ケアに切り替え、11月24日の朝、お母さんの腕の中で眠りにつきました。

 

GENちゃんの在宅終末期ケアについて、お話させていただきます。

①.jpg

 

 

今までの経緯

人が大好きなゴールデンレトリバーのGENちゃんは、毎月お母さんと一緒に動物病院へ通院していました。

 

倒れるほんの数日前の2023年10月29日は、河川敷を自由に走り回って遊んでいたほど元気でした。

 

11月1日の夕方もいつも通り散歩に行くことができていました。しかし、この日の夕食時から異変が起きました。

 

食欲旺盛なGENちゃんが、ご飯皿を前に、一瞬だけ固まったとのことでした。ただ、その後普通に平らげてくれたので、安心していましたが、その夜寝ようと横になった時に明らかにぐったりしたため、夜間救急で動物病院に飛び込みました。

 

動物病院での検査で、心臓腫瘍心嚢水貯留が確認され、心タンポナーデに伴う症状と考えられ、心嚢水抜去を行いました。

 

この時、心嚢水が60mlほど抜けたとのことでした。

 

年齢や病気、生活環境など考慮し、抗がん剤を攻めていくよりも、在宅で緩和ケアをしてあげることを望まれ、当院までご連絡いただきました。

 

初診(ペットの在宅終末期ケア1日目)

動物病院での心嚢水抜去後、元気ないまま過ごしていたGENちゃんでしたが、徐々に元気を取り戻してきて、この日は15分ほどですがお散歩にもいけたとのことでした。

 

食欲も上がってきて、この日は遂に完食するほどまでに回復していました。

 

少し軟便気味だったので下痢止めを継続的に飲ませていただき、先日の抜去以降、やや頻尿気味とのことでした。

 

呼吸状態も安定しており、全身状態としては良好でした。

 

超音波検査のみを実施し、液体の貯留がないことを確認し、医薬品8種類の内服薬でのコントロールとしました。

 

余命は2週間といわれており、11月17日がその日です。

 

この残された時間を、いかにGENちゃんにとって、そしてご家族様にとって心穏やかに過ごせるように、在宅終末期ケアのプランを組んでいきます。

②.png

 

急変時のアクションプラン

終末期に急変はつきものであり、今状態が安定していたとしても、数分後はわかりません。

 

そして、その時すぐ駆けつけることができる救急車は動物医療には存在せず、また私たちが駆けつけることができる保証もありません。

 

ペットの在宅終末期ケアは、いわゆる「在宅医療」であることから、救急でのお伺いは叶わないことが多いです。

 

診療時間外では電話も繋がらないため、その時には目の前で起きている事象に対して、ご家族様自身で判断し、行動しなければいけません。

 

選択肢は大きく分けて2つ。

 

1つは「動物病院に飛び込む」、そしてもう一つは「家でそのまま看取る」です。

 

前者の場合には、通院中に、到着して待ち時間に、検査・処置中に、帰宅中に旅立ってしまうかもしれません。

 

また、安定して帰宅できたとしても、また同じ状態を繰り返します。

 

・元気だったのに急に...

・持病がわかっており急変した

・事故

 

回復後、また日常が戻ってくることを期待できるのであれば、緊急で通院させると思います。

 

ただ終末期では、緊急での通院の真逆に存在する、家で看取るという選択肢が多く選ばれている印象です。

 

これは決して諦めたというわけではなく、もう十分頑張ったと賞賛する気持ちで、強い覚悟を持って、家で看取る選択を選ばれています。

 

そして、「通院しない」=「何もできない」ではない、ということも覚えておいてください。

 

GENちゃんの場合には、ガクッと下がった時に医薬品を飲ませられなくなること、呼吸が苦しくなることが想定されました。

 

事前準備として酸素発生装置を準備し、大型犬であることもあり、直接吹きかけによる酸素運用を提案させていただきました。

 

なお、未使用であるうちは1台のみとし、使用開始と同時に追加1台とすることとしました。

 

酸素環境の構築は、犬猫の在宅終末期ケアにとって重要項目の1つです。

 

GENちゃんの最後の時間を、少しでも苦しくないように過ごせるように、これで酸素環境の完成です。

 

内服ができない時に使用できる皮下点滴セットも組んでいき、ガクッと下がっても医薬品を投与できる準備は完了です。

 

2023年11月5日、GENちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。

 

急変:ペットの在宅終末期ケア6日目

診察の度に、心嚢水、胸水などの貯留があるのかを評価していました。

 

前日の診察まで貯留はなく、一般状態と言われる元気、食欲、排便、排尿の全てにおいて経過良好でした。

 

なんなら、ご飯をガツガツ食べる姿まで見せてくれ、本当に強い子ですと話していました。

 

しかし、翌日の11月10日に急変しました。

 

直前までキッチンでご飯を食べていたのに、違和感を感じたと思ったら、急に倒れてしまい、そのまま立てなくなりました。

 

診察にて心嚢水が溜まっていることを確認し、抜去することになりました。

 

往診での心嚢水抜去は腹水や胸水と比べ危険性が高く、往診で実施してもらうことは通常の往診専門動物病院では難しいかもしれません。

 

実施する獣医師と、保定、外回りを担当する愛玩動物看護師が必要になるため、少なくても2人以上の愛玩動物看護師の存在が求められると考えています。

 

この心嚢水抜去は、胸郭に針を刺すため、腹水抜去と比べて痛いんです。

 

通常であれば、鎮静処置を施すレベルなのに、GENちゃんはじっと耐えてくれました。

 

刺す瞬間だけピクッとしますが、取り乱すこともなく、横になったまま受け入れてくれていました。

 

この日は190ml抜去することができました。徐々に増えてきました。

 

抜去後にリビングで「もう立てないかもしれない」と話していたところ、キッチンから元気を取り戻したGENちゃんがスタスタ歩いてきました!

 

心嚢水が貯留すると、心臓を握られるような痛みと苦しさがあり、血流が阻害されるので顔色は真っ白に、そして苦しくなります。

 

抜去してこの圧迫を解除すると、見る見るうちに可視粘膜と言われる歯茎や舌の赤みが戻ってきます。

 

この日から13日間、安定しながら過ごすことができ、11月17日を超えることができ、この時点ではすごい食欲と元気で、散歩にも行ける、いつものGENちゃんでした。

 

③.png

 

急変:ペットの在宅終末期ケア18日目

また急に、ばたっと倒れてしまい、立ち上がれなくなりました。

 

この日も同じように心嚢水が貯留しており、抜去することで回復すると思っていました。

 

しかし、予想は違っていました。

 

抜去しても抜去しても、どんどん溜まっていくのを確認しました。

 

300mlを超えた段階で、「もうやめましょう」とお話しさせていただき、針を抜きました。

 

今夜お別れがやってくる可能性が高いため、最後に会わせて上げたい方を集めていただくようお願いします。

 

もし呼吸があれば、翌早朝にお伺い予定としました。

 

④.png

 

最後の日:ペットの在宅終末期ケア19日目

朝になり、連絡がなかったのでまだ頑張ってくれていると思い、みんなで訪問しました。

 

すると、頑張って全身で呼吸をするGENちゃんと、そんなGENちゃんをずっとそばで見守ってくれたお母さんがいました。

 

昨日の診察終了後からきっと今の今まで、酸素マスクで酸素を嗅がせてあげていたのだと感じました。

 

エコーで心嚢水を確認すると、今まで以上に溜まっており、顔面蒼白、意識も薄くなっていました。

 

実施するかどうか、想像できないほどたくさんの葛藤があったと思います。

 

そして、こんなに苦しいのなら、もう繰り返させずにこのまま旅立たせてあげたいというお母さんの覚悟を受け、抜去を中止としました。

 

せめて最後に安定剤だけでも打ってあげようと準備し打とうとした瞬間、その時がやってきました。

 

死戦期呼吸です。

 

結果何もせず、全ての手をとめ、今まさに旅立とうとしていることをお伝えし、反応の全てが停止するまで抱きしめていただきました。

 

死戦期呼吸が始まって5分ほどで、体の全ての反応が停止しました。

 

最後は本当に眠るように、ただゆっくりとした時間の流れる、そんな時間でした。

 

GENちゃんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

江本宏平、スタッフ一同

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家でペットを看取るということは、決して楽なことではないです。

 

刻一刻と変化するペットの症状を把握し、どう解釈し、何をすべきなのか。

 

日中ならまだしも、この変化は24時間起こります。

 

もし発作が始まったらどうしよう。

 

急に呼吸が苦しそうになったらどうしよう。

 

吐いてしまったら、吐血してしまったら、下血してしまったら。

 

そんな不安を抱えながら、1分1秒を共に過ごさなければいけません。

 

もしそれが日中で、かかりつけの動物病院が診療時間内であれば、電話して相談するkとができるでしょう。

 

ただ、この変化は24時間起こります。

 

そうなった時、あなたは何ができますか?

 

そうなる前に、あなたは何を準備しておきたいですか?

 

今回お話しする猫ちゃんは、念入りな事前準備を行い、酸素環境をバッチリ整え、在宅終末期ケア(ターミナルケア)を走り抜きました。

 

今回と次回の2つで、そのターミナルケアを事細かに描かせていただきます。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

【2日目(ペット在宅終末期ケア)】

診療の時に皮下点滴を実施したところ、その後は雰囲気的に楽そうにしていたとのことでした。抗不安薬を少し使用してあげることにしたのが、功を奏したのかもしれませんね。

 

少し軟便気味になったこともあり、お薬の種類を変更させてもらい、各種頓服を準備していきました。

 

内服が難しい犬猫、特に猫ちゃんでは、終末期ケア(ターミナルケア)のステージで内服で頑張るという選択肢はないと思ったほうがいいです。

 

この場合、内服ができないからと諦めるのではなく、在宅での皮下点滴をできるようになることが求められます。

 

点滴と言っても何十分も時間がかかるようなものではなく、おおよそ5分未満、早ければものの数秒ほどということもあります。

 

脱水補正を目的に皮下点滴をする場合はある程度の時間がかかりますが、投薬だけを目的とした場合には、ほんの数秒〜30秒以内くらいですので、是非挑戦してあげてください。

 

お母さんの日誌には、ももたろうちゃんのほぼほぼ24時間の動きが全て記載されていました。

 

その日誌の内容からも、ももたろうちゃんが頑張っている姿が手に取るようにわかりました。

 

そして何より、お母さんが最後まで体力も精神力も保てるのかが心配になるほどでしたが、お母さんは最後までやり抜きました。

 

続きます。

 

 

【5日目(ペット在宅終末期ケア)】

嘔吐が見られたこともあり、嘔吐を止める薬の量を増やすことで調整しました。

 

嘔吐を止める薬は、大きく分けて気持ち悪さを緩和させるものと、吐くこと自体を抑制するものに分かれます。

 

状況次第ではありますが、どちらか一方だけでなく、併用することで相乗効果を図ることが、犬猫の在宅終末期ケア(ターミナルケア)では多々あります。

 

下痢が止まったので、下痢止めは以後頓服薬として準備しておき、軟便傾向になった時に、次の皮下点滴のタイミングで一緒に使用してもらうようにお伝えさせていただきました。

 

また、ご飯も食べたそうにするするけど、口に入れるとひどい咳をしてしまう状況なため、食欲は尊重しつつも、無理に食欲を出させることはしない方針としました。

 

食欲を出させるために使用される医薬品は、錠剤タイプもあれば、軟膏タイプもあります。

 

軟膏タイプのものであれば、個人輸入することができるため、診察しないで飼い主様個人の判断で購入し、使用してしまっている事例を多く見受けます。

 

ただ、本当にそれをすべきかどうかは、ペットの状態で大きく違いが生じます。

 

無闇に使用することで、かえって苦しめてしまうことが十分起こり得ますので、個人輸入するとしても、必ず獣医師の判断を仰ぐようにしてください。

 

当院では、他院処方や個人輸入医薬品医対する説明は、あまりしないようにしています。

 

他院の場合、処方決定した獣医師がなぜそれをその用法用量で処方したのかがわからないため、無責任なことを言えないという背景があります。

 

また、個人輸入のものに関しては、その医薬品が正規品なのかの保証を誰もしてくれないので、求めたい投与量にズレが出てしまうことを懸念します。そのため、購入した場合には、全部自己責任になることをご理解ください。

 

当院の在宅終末期ケア(ターミナルケア)では、できる限りご家族様に寄り添った診療プランをご提案させていただきます。

 

上記の医薬品処方に関する注意事項はお伝えした上で、ただもしそれがこう言った用途であれば、これが正規品であれば、今のこの子に対してはこのように使用するのを推奨します、と言ったことはアドバイスさせていただいています。

 

最良の診療プランはご家族様ごとで異なるため、都度じっくりとヒヤリングさせていただきながら、方針を柔軟に決めています。

 

【9日目(ペット在宅終末期ケア)】

皮下点滴の時、いつもより痛そうにしていたとのことでした。

 

もしかすると、やや便に血が混じるというお話があったことから、止血剤を処方していました。

 

これは経験的な話ですが、色のついた医薬品はしみる傾向にあると思います。

 

また、pHが高いものはしみるようです。

 

とはいえ、必要であればどうにか痛みを紛らわせるような手法を相談しながら頑張っていただくこともあれば、その反応にペットがひどく反応してしまう場合には、削除することもあります。

 

ペットによっては、特別反応せずに受け入れてくれる場合も多々あるため、その反応すら個性として考えることが、緩和ケア、特に終末期ケアでは必要となってきます。

 

問診の時に、事細かに全部お伺いさせてくださいね^^

 

全身状態から判断し、この日から止血剤をカットすることとしました。

 

また、初診から1週間ほど経過したので、再度血液検査と超音波検査を実施することとしました。

 

平常時から呼吸状態が悪い子に対し検査を入れる場合には、何よりも呼吸管理が重要です。

 

酸素コントロールには、当院では酸素ボンベを常備しておりますので、ボンベを解放することで酸素濃度をあげて呼吸悪化を防いでいます。

 

なお、ここで重要なもう一つのことが、保定です。

 

保定って簡単に見えるかもしれませんが、かなり高度な技術であることを知ってください。

 

保定の仕方一つで、その場で呼吸を止めてしまうこともあれば、医療事故を引き起こしてしまうこともあります。

 

よくご家族様に保定をお願いする獣医師がいるかと思いますが、状態が悪い時のペットの保定をお願いされた場合には、かなり慎重に対応することを忘れないでください。

 

「どこをどのくらいの力で抑えればいいのか」

「どこは押さえちゃいけないのか」

 

この2つだけは明確にしておきましょう。

 

なぜここで保定を取り上げたかというと、ももたろうちゃんは保定されるのが大嫌いで、その都度容易にチアノーゼを発症してしまうんです。

 

そのため、保定には常時2人を揃え、酸素ボンベの管理はお母さんにお願いすることも想定しておかなければいけませんでした。

 

この日は愛玩動物看護師が2人、動物看護スタッフが1人を揃えて往診に向かったので、全ての検査を安心して実施することができました。

 

在宅医療を求める状況にあるペットの多くが、すでに終末期ケア(ターミナルケア)のステージにいることが多いです。

 

往診専門動物病院のほとんどが、残念なことに獣医師一人で運営されていることがほとんどなため、必ず保定してくれる看護スタッフの動向が可能かを聞いてください。

 

もしかすると、知り合いの動物病院から看護スタッフを派遣してもらえるかもしれないので、諦める前に、同行してもらうことが可能かどうかを相談することをお勧めします。

 

検査の時は、状態や性格に応じてネッカー(カラー)を装着するのですが、ももたろうちゃんの首の状態(下顎リンパ節腫瘍)もあり、首のところは広がりが持てるように遊びを持たせた作りがベストだと話し、次回再度調整することとしました。

 

【15日目(ペット在宅終末期ケア)】

今日はネッカー(エリザベスカラー)の再調整を予定していたのですが、なんとお母さんがももたろうちゃん専用のカラーを作ってくれました!

 

 

ももたろう①③s.jpg

 

 

すごいですね!愛のパワーですね^^

 

設計はバッチリなので、あとは装着するだけ...なのに...

 

前肢を器用に使って、カラーを外してしまいました。。。

 

この仕様でもダメならもう仕方ないので、カラーなしで検査に臨むことで検査指針立てていきました。

 

長くなりすぎたので、続きは次回です^^

 

猫ちゃんの終末期ケアは、投薬とご飯選びの勝負です。

 

1つがダメでも次の手を考えておくことが大切です。

 

これって決めてずっとそのまま進んでくれるなんてことはあり得ません。

 

状態に応じ、都度相談しながら一緒にプランを考えていきましょう。

 

次回は状態低下に伴う処方プラン変更のお話です^^

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終末期を迎えた犬猫に対して、「(治療に関しては)何もできないので、そのまま看取ってください」と言ってしまう獣医師がいます。

 

この言葉には、「治療の手段がない」という思いが強く隠れていますが、言葉足らずで伝わってしまった結果、とても冷たく伝わってしまった典型的なケースであると考えています。

 

かかりつけの獣医師からの心無い言葉で傷つく飼い主様はたくさんいます。

 

ただ、もし今受け入れられる心の余裕がございましたら、その背景には、全ての命を平等に助けたいと考え、毎日死に物狂いで働いている先生の言葉足らずを許してあげてください。

 

今回ご紹介するのは、通院から往診に切り替え、しかしその往診が動物病院のオプションだったことから、在宅医療に特化した当院に転院された、頸部腫瘍を抱える猫のももたろうちゃんのお話です。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

 

【初診時のももたろうちゃん】

食欲はまだあったのですが、飲み込むのが難しい病態なため、食皿の前でじーっと見つめて考える仕草が胸に刺さるとのことでした。

 

しばらく考えて一口食べては、ゼェゼェしてやめて、また考えては一口食べて、を繰り返しているとのことでした。

 

ご飯はドライフードをすり潰し、a/d缶などのウェットフードと混ぜているとのことでした。お皿が汚れないよう、頻繁に交換してあげているとのことでした。

 

ウェットはいろんな種類のものを準備し、騙し騙しローテーションしているとのことでした。(猫ちゃんあるあるですね^^)

 

あまり動けなくなってきたが、もともと体も大きくあまり動かないタイプとのことで、運動量の変化は大きく感じていないとのことでした。

 

それでも知らない私たちが触ると怒る仕草を見せて抵抗しましたが、頑張って血液検査、超音波検査をさせてくれました。

ももたろう①.jpeg

 

 

常備薬としてセレニアとプリンペラン、レメロンが準備されていましたが、これらも全て別の医薬品、剤形変更にて対応し、ももたろうちゃんにあった常備薬として準備させていただきました。

 

飲み込むのが辛い猫ちゃんに、食欲増進剤を出し続けるのはかわいそうかなと思い、一応別の薬で代用できるように準備はするが、使用するかどうかはお任せですとお伝えしました。

 

皮下点滴はビタミン入りのソルラクト輸液を2023年5月から1日1回180mlで投与していたので、1日2回90mlずつと分けることで、本人の負担だけでなく、実施するご家族様の負担を軽減することができました。

 

ご家族様ごとで何が負担なのかは異なります。

 

その負担な箇所を把握し改善案を提示すること、そしてそれを実施できるようにお手伝いすることが、ペットの在宅終末期ケアでは必須となってきます。

 

腫瘍に対してステロイドを使用しない理由を伺ったところ、以前に医原性糖尿病を発症したことがあったことから、かかりつけ獣医師から、ももたろうちゃんにはステロイドを使用しないと言われてしまったため、今回も出してもらえなかったとのことでした。

 

インスリン療法によって糖尿病を克服できたものの、その後も再発を繰り返していたとのことでした。

 

初診時に行った検査結果と日を追うごとに変化するももたろうちゃんの病状に合わせた処方を都度変更しながら調整していきます。

 

この日から、ももたろうちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。

 

次回はももたろうちゃんの終末期ケア(ターミナルケア)の様子をなるべく鮮明にお伝えしていこうと思います。

 

もしお近くで、通院が難しいとされる犬猫と暮らすご家族様がいらっしゃいましたら、往診専門動物病院があることを教えてあげてください。

 

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